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ニュース解説

「高額レセプト」25年度は前年比25%増…「やや高額で継続投与」の医薬品が件数押し上げ

更新日

穴迫励二

1カ月の医療費が1000万円以上の「高額レセプト」が2025年度は2907件に上り、前年度から25%増加したことが健康保険組合連合会(健保連)の集計で明らかになりました。件数を押し上げた最大の要因は、薬価が「やや高額」で継続して投与する医薬品の使用が増加したことです。年間の合計使用金額でもこうした医薬品が上位を占めており、超高額で単回投与の医薬品よりも医療保険財政に与える影響が大きいことがわかりました。

 

 

使用金額「ユルトミリス」「ヘムライブラ」など上位

高額レセプトの件数は過去最高を更新し続けており、25年度は過去5年で最も高い伸びとなりました。上位100件の平均額は4476万円で、前年度の4250万円を226万円上回りました。疾患別では8割が悪性腫瘍ですが、1~5位は脊髄性筋萎縮症で、髙フェニルアラニン血症も上位にあります。最高金額は「ゾルゲンスマ」を使用した治療で約1億6808万円でした。

 

近年は、薬価が「やや高額」で継続投与する新薬が医療費を押し上げる1つの要因となっており、その傾向は年々強まっているようです。遺伝子治療薬やCAR-T細胞療法は、超高額であるものの単回投与で、患者数も少なく、医療費への影響は限定的といえます。

 

年間の合計使用金額を見ると、ある程度高額な継続投与型の医薬品が上位5品目を占めています。最大は発作性夜間ヘモグロビン尿症などの治療薬「ユルトミリス」の194億円で、前年度から16.6%増加。レセプト件数も23.6%増えました。同薬は、初回投与後2週間で増量し、以降は8週ごとに同じ量を継続します。薬価は約66万円~約242万円です。

 

【使用合計額の高い医薬品上位5品目】|単位:億円、件|〈品名/標準的な年間投与回数(目安)/25年度金額/25年度件数/24年度金額/24年度件数〉ユルトミリスHI点滴静注/約6~7回(8週間に1回)/194.1/2803/166.5/2268|ヘムライブラ皮下注/約52回(週1回投与の場合)/148.2/2383/129.4/2284|イデルビオン静注/約52回(週1回投与の場合)/40.9/591/33.5/548|ストレンジック皮下注/約156~312回(週3~6回)/36.0/370/23.9/321|エンスプリング皮下注/約12~13回(4週間に1回)/30.8/1302/31.4/1815|※健保連「令和7年度高額医療費交付金事業における高額レセプト上位の概要」をもとに作成

 

これに次ぐのが血友病A治療薬「ヘムライブラ」の148億円(前年度比14.5%増)。薬価は約13万円~約122万円で、1週間間隔、2週間間隔、4週間間隔のいずれかで投与します(投与間隔が長いほど1回あたりの投与量は増加)。血友病B治療薬「イデルビオン」も41億円で21.8%増となりました。上位5品目には入っていないものので、発作性夜間ヘモグロビン尿症治療薬「ピアスカイ」は前年度23件から158件に、視神経脊髄炎スペクトラム障害などの治療薬「ユプリズナ」も150件から248件に急増。高額レセプトの件数が増加した要因に挙げられています。

 

上位5品目の年間使用金額の合計は約450億円。高額レセプトの総額約4425億円に対する割合は10.2%で、23年度の8.6%、24年度の9.7%からさらに上昇しました。健保連は、1回の投与で数千万円かかるような超高額薬剤でなくとも、やや高額な薬剤を継続的に使用することで使用金額は大きく膨らむと指摘。結果として、25年度は1000万円以上1500万円未満のレセプトが大きく増えました。

 

【高額レセプトに占める継続投与薬と単回投与薬の割合】|〈項目/内訳/25年度/24年度/増減〉1000万円以上の高額レセプト/件数/2907件/2328件/24.9%|1000万円以上の高額レセプト/総額①/約4425億円/約3977億円/11.3%|使用額上位5品目(すべて継続投与)/金額/約450億円/約385億円/16.9%|使用額上位5品目(すべて継続投与)/①に占める割合/10.2%/9.7%/0.5pt|単回投与医薬品9品目/金額/約69億円/約66億円/4.5%|単回投与医薬品9品目/①に占める割合/1.60%/1.70%/▲0.1pt|※健保連「令和7年度高額医療費交付金事業における高額レセプト上位の概要」をもとに作成

 

超高額薬、影響は限定的

一方で超高額な単回投与医薬品は、集計対象9品目の高額レセプト総額に対する割合が1.6%(前年度比0.1ポイント減)にとどまっています。薬価が3000万円を超えるCAR-T細胞療法のうち、「ブレヤンジ」「イエスカルタ」は伸びましたが、「アベクマ」「キムリア」は減少しました。超高額な薬剤が登場しても、それだけで医療費が大きく増えるわけではありません。集計時点で最も薬価が高かったゾルゲンスマ(約1億6708万円)を使ったレセプトは25年度に5件ありましたが、金額は8億円にとどまります。

 

高額医薬品全体として見ると、薬価が50万円を超える保険収載品目数は、高額レセプト

の件数にほぼ比例して増加傾向にあります。過去10年を5年ごとに分けると、前半は20品目でしたが後半は57品目に増えています。

 

【薬価50万円超の医薬品の保険収載品目数】|〈年度/品目数〉16/4|17/1|18/5|19/7|20/3|21/12|22/8|23/7|24/15|25/15|※健保連「令和7年度高額医療費交付金事業における高額レセプト上位の概要」をもとに作成

 

健保連は高額薬の使用について、治療効果の向上や患者の負担軽減に寄与するものの「保険財政への影響が非常に大きい」と警戒。「超高額で単回投与の医薬品は特に小規模保険者の財政状況に一時的に強い影響を与え、やや高額で継続投与の医薬品は医療費全体に大きな影響を及ぼす」と指摘しています。

 

今後、遺伝子治療や細胞治療などの超高額薬のさらなる登場が予想される一方、希少疾患・難病領域では年間数百万円から1000万円ほどかかる継続投与の薬剤が増える可能性があります。高額薬剤と医療保険財政の関係は、単価だけはなく投与する期間や頻度、患者数を複合的に見ていく必要がありそうです。

 

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