
2027年度の薬価の中間年改定に向けた議論が本格的に始まりました。改定対象範囲や適用する算定ルールのほか、物価高騰や米国のMFN(最恵国待遇)価格政策への対応が焦点となります。
改定対象範囲、前回はカテゴリ別に設定
2021年度に始まった薬価の中間年改定は27年度で4回目。前回の25年度改定に向けた議論の過程では一時、廃止論も高まりましたが、昨年12月の厚生労働・財務両大臣の合意では「27年度の薬価改定を着実に実施する」とされ、今回は実施が既定路線です。
25年度改定では、過去2回の中間年改定と異なり、▽新薬創出加算(現・革新的新薬薬価維持制度)対象の新薬▽新薬創出加算対象外の新薬▽長期収載品▽後発医薬品▽その他――の5つのカテゴリに分けて改定の対象範囲が設定されました。新薬と後発品は過去2回の中間年改定から範囲を狭めた一方、長期収載品は拡大。対象品目は23年度の1万3400品目(全体の69%)から9320品目(53%)へと減少しました。

25年度改定では、▽基礎的医薬品▽最低薬価▽不採算品再算定▽新薬創出加算▽後発品の価格帯集約▽既収載品の外国平均価格調整▽既収載品の改定時加算――の各ルールを適用。中間年改定として初めて、新薬創出加算の累積額の控除が行われました。
最低薬価は、物価高騰を考慮して一律約3%引き上げた上で適用。不採算品再算定も、物価高騰や安定供給問題への対応として23年度中間年改定に続いて「臨時・特例的な対応」として行われました。

厚労省は、27年度改定に向けた議論のキックオフとなった7月の中央社会保険医療協議会(中医協)薬価専門部会で、「対象品目の範囲や適応される各種ルールのあり方についてどう考えるか」を論点として提示。昨年12月の厚労・財務両相の合意では、対象範囲と適用ルールについて「創薬イノベーションの推進、医薬品の安定供給の確保、現役世代の保険料負担を含む国民負担の軽減といった要請にバランス良く対応するとの基本的な考え方を踏まえて検討する」とされています。

日薬連・安川会長「ベースアップ必要」
改定対象範囲と適用ルールに加えて焦点となるのが、物価高騰と米国のMFN価格政策への対応です。8月26日の薬価専門部会では業界からのヒアリングが行われ、関係団体がこうした点について意見を述べました。
日本製薬団体連合会(日薬連)の安川健司会長(アステラス製薬会長)は「医薬品は一般的な消費財のような原価高騰への対策が困難で、企業努力のみでコスト上昇を吸収するには限界がある」と指摘。2020年から26年(1~6月)にかけて国内の企業物価指数の総平均が31.8%上昇したのに対し、医薬品は毎年改定などの影響で17.4%下落しているとのデータを示し、「27年度改定は引き下げを前提とするのではなく、まずはすべての医薬品について物価高騰、製造原価上昇などのインフレ分を上乗せするベースアップが必要だ」と訴えました。
日本ジェネリック製薬協会(GE薬協)も物価高騰への対応を要望しました。川俣知己会長(日新製薬社長)は、後発医薬品全体の4割が赤字で、その8割が26年度改定で不採算品再算定の適用を要望したものの、実際に適用されたのは8.4%にとどまったと指摘。さらに、適用された品目の6割はコスト高騰の影響を吸収し切れず、依然として不採算のままだといい、「低薬価品を中心に物価高騰の影響が甚大で、現行の薬価下支え制度では対応しきれていない」と述べました。

新薬メーカー「MFNすでに影響」
日本製薬工業協会(製薬協)、米国研究製薬工業協会(PhRMA)、欧州製薬団体連合会(EFPIA)は、MFN価格政策への対応を要望。製薬協の宮柱明日香会長(武田薬品工業ジャパンファーマビジネスユニットプレジデント)は「新薬収載時のイノベーション評価のあり方、外国平均価格調整ルールの見直し、特許期間中の価値を適切に評価する制度のあり方について検討を進めていただきたい」と求めました。
製薬協が常任理事会社16社を対象に7月に行ったアンケート調査では、37.5%が「MFNの影響がすでに生じている」と回答。具体的には、海外からの製品導入のハードルが上昇したり、開発の縮小・見直しが行われたり、申請・上市時期が見直されたり、といったことが影響として挙げられました。
PhRMAが国内の会員企業15社を対象に行った調査でも、グローバル本社から日本の薬価の見直しを求められた企業が10社、日本での薬価収載・発売の見送りや遅延を示唆された企業も10社ありました。PhRMAの五十嵐啓朗在日執行委員会委員長(ファイザー社長)は「各社とも日本で米国に影響を与えない水準の薬価の確保を求められている」と指摘しました。
こうした主張に対し、薬価専門部会委員からは「MFNが即ドラッグ・ラグ/ドラッグ・ロスに直結するというのはいかがなものか」(江澤和彦・日本医師会常任理事)、「薬価を引き上げる改定だけを行ってほしいという主張と理解しているが、実勢価格の改定の範囲を広くすること、幅広くルールを適用することで、メリハリをつけて対応していく必要がある」(佐竹陽一・健康保険組合連合会理事)といった声が出ました。
業界の主張は理解を得られるか。27年度改定に向けた議論は年末まで続きます。




