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武田薬品、期待の「オーゼイフル」発売…収益構造「成熟品」から「大型グローバル品」への転換点に

更新日

穴迫励二

武田薬品工業が10月15日、ナルコレプシータイプ1治療薬(NT1)「オーゼイフル」(一般名・オベポレクストン)を日本と中国で同時発売しました。今年スタートした成長戦略「Horizon1」で1年以内の上市を予定する3製品の第1弾となります。来月には米国での発売も控えており、収益構造を成熟製品から大型グローバル品に置き換える新たなフェーズに突入します。

 

 

日本のピーク時販売予測は70億円

オーゼイフルは武田薬品の湘南研究所で創製された新薬で、世界初の選択的オレキシン2受容体(OX2R)作動薬。疾患の根本原因であるオレキシンの欠乏にアプローチする作用機序を持ち、個々の症状の管理ではなく疾患そのものを適応症として承認されました。NT1は日中の過度な眠気、情動脱力発作(カタプレキシー)、夜間睡眠の分断などの症状が24時間にわたって現れる疾患です。

 

日本の薬価は原価計算方式で算定されました。約20年間にわたって新規作用機序の薬剤が登場してこなかったナルコレプシーに対して有効性を示したことが評価され有用性加算Ⅰ(60%)がついたほか、先駆け審査指定制度の対象品目として先駆加算(10%)を取得。希少疾病用医薬品に指定されているため市場性加算Ⅰ(10%)もつき、トータルで60%の上乗せが認められました。しかし、原価の開示度が50%未満だったため加算係数はゼロとなり、実際の価格への上乗せは行われませんでした。

 

 

国内のピーク時販売金額は70.4億円と予想しています。投与患者数も年間423人で国内の推計患者数2万4000~3万6000人と比べると極めて少ないですが、「オーゼイフルが処方される割合などを掛け合わせた結果」(武田薬品)だとしています。数字の上からは停滞する国内事業をV字回復に導くような、強いインパクトを与えるものではないように映ります。

 

診断率向上に力入れる

ただ、70.4億円はあくまで薬価算定上の市場規模でもあります。今年6月から医療機関で「睡眠障害」の標榜が可能になったことは追い風です。内科、精神科、小児科などと組み合わせて表示できるようになり、こうした環境要因を潜在患者の掘り起こしにつなげたいところです。ナルコレプシーは発症から診断まで8.7年を要するという調査結果もあり、同社は「診断率向上に向けた取り組みに力を入れていく」としています。

 

海外の患者数は、日本と同時発売した中国がナルコレプシー全体で約70万人、そのうちNT1は約55万人と推計。来月発売予定の米国はNT1で約12万人とされています。海外市場が牽引し、ピーク時に見込む世界売上収益「20~30億ドル」を目指すことに変わりはないとしています。

 

真性多血症薬が米国承認、乾癬薬も申請

一方で、オーゼイフルは同社にとってオレキシンフランチャイズの第1世代という位置付けでもあり、この領域の開拓を先導する戦略的価値も大きい新薬といえます。次世代経口OX2R作動薬「TAK-360」(開発コード)はNT1、NT2、特発性過眠症を対象に臨床第2相(P2)試験を実施中。同「TAK-495」(適応症未定)もP1試験に入っています。

 

6月に就任したジュリー・キム社長CEO(最高経営責任者)が掲げるHorizon1では、この1年の間に3つの新薬を上市する計画です。真性多血症治療薬ルスフェルチド(一般名、製品名・MIMRYLO)は8月に米国で承認を取得。11月から販売する予定で、全世界で10~20憶ドルの売上収益を見込んでいます。

 

炎症性疾患を対象に開発を進めているザソシチニブ(一般名)は、将来的な適応拡大も見越して30~60億ドルの期待をかけます。他の2製品より市場が大きく、経口薬というポジションへの期待もあります。米国で優先審査対象として申請が受理され、FDA(食品医薬品局)による審査終了目標日は27年1~3月に設定されました。

 

 

「エンタイビオ」迫る特許切れ

これら3新薬により、同社の収益構造は転換期に入ります。現在は潰瘍性大腸炎・クローン病治療薬「エンタイビオ」や遺伝性血管性浮腫治療薬「タクザイロ」など既存主力品が全売上収益の6割を占めています。26年3月期に9580億円を売り上げたエンタイビオは、32年に米国で特許が切れる見通しで、その減収分を補うために複数領域の新薬が成長エンジンとなることが求められます。

 

武田薬品は27年3月期の売上収益を前期比3.0%増の4兆6400億円と予想。コア営業利益は1.1%減の1兆1600億円、CER(恒常為替レート)ベースでは5~8%減を見込んでおり、新製品の寄与は次年度以降となりそうです。オーゼイフルの発売を皮切りに3製品の上市を成功させ、その収益を次のパイプラインに再投資するという好循環につなげたい考えです。

 

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