
分断は「人」と「頭脳」にまでおよびます。これまで国境を越えて協力してきた研究者たちの間にも、国の線引きが意識され始めています。「研究安全保障」と呼ばれる比較的新しい論点です。
開けば発展、開けば流出リスク
研究は本来、国境を越えた連携でこそ発展します。優れた人材と知恵が自由に行き交うことで、科学は前に進んできました。ところが、バイオやAIといった国の産業競争力に直結する分野では、その成果や人材が国外に流出することへの警戒が強まっています。開けば発展するものの、開けば流出するリスクがある。ここに根本的な緊張関係があります。

実際に、研究者のビザや共同研究に制限がかかったり、逆に各国が優秀な研究者の呼び戻しを競ったりする動きが起きています。頭脳の流出をどう防ぎ、同時にどう惹きつけるか。人材もまた、製造拠点やデータと同じく国際的な獲得競争にさらされています。
二者択一ではなく「開きながら守る」
大切なのは、「開くか、守るか」の二者択一ではないということです。閉じてしまえば研究は痩せ、開きっぱなしでは流出のリスクがある。両立の鍵は、透明性の確保と信頼性のある制度設計にあります。誰と、何を、どこまで共有するのかのルールを整えたうえで、開くべきところは大胆に開く。研究基盤そのものへの投資拡大が前提であることは言うまでもありません。
日本にとって、ここは守りではなく攻めどころです。守るために閉じるのではなく、魅力ある研究環境に投資し、世界から人と知恵を呼び込むことが、日本の創薬の活性化にとって極めて重要になります。
| 増井慶太(ますい・けいた)ロンジェビティ特化型VC(ベンチャーキャピタル)ASAGI Labs Ventures合同会社Managing Partner、BAIOX株式会社CEO、インダストリアルドライブ合同会社CEO。ヘルスケアやライフサイエンス領域の投資運営、M&A仲介、カンパニー・クリエーション、事業運営に従事。東京大教養学部卒業後、米系経営戦略コンサルティング企業、欧州製薬企業などを経て現職。 X:@keita_masui LinkedIn:https://www.linkedin.com/in/keita-masui/ ウェブサイト:https://alv.vc/ |







