
国内医療用医薬品市場で、外資系製薬企業の総売上高が初めて内資系を逆転しそうです。IQVIAジャパンがまとめた2025年の市場分析によると、外資のシェアは49.3%まで上昇し、内資に肉薄。両者の成長力には明確な差があり、26年にも過半を突破する可能性があります。
シェア接近、外資49.3%・内資50.7%
IQVIAの分析は国内市場の売上高上位100社が対象で、市場全体の95%をカバーしています。25年の総売上高は外資(33社、中外製薬含む)が5兆5435億円、内資(67社)が5兆7969億円で、シェアは49.3%対50.7%と接近しています。20年時点では外資46.6%、内資53.4%と7ポイント近い開きがありましたが、この間の年平均成長率(CAGR)は外資3.8%、内資1.7%で、市場での製品力を反映した結果となっています。

市場を牽引するのはイノベーション製品で、外資の成長の源泉はまさにそこにあります。20~25年の薬価収載品市場は10.1兆円から11.5兆円と1.4兆円の増加にとどまりますが、このうち「既存特許品」と「新薬(21~25年発売)」に限ると3.4兆円増えています。市場全体の成長が抑えられているのは、特許切れによる後発医薬品への置き換えや長期収載品の薬価引き下げなどで2兆円以上のマイナスとなっているためです。
IQVIAの高山莉理子マネージャーは「外資は既存特許品と新薬という『上向きの力』が非常に大きい」とし、特許切れの影響も内資に比べて小さいと指摘。5年間で3.4兆円増という「世界に劣らない成長が隠れている」(高山氏)日本市場で、外資は着実に業績を伸ばしています。
研究開発力に差
背景にあるのが研究開発力の差です。25年に薬価収載された新薬55成分のピーク時予測売上高は計6743億円で、このうち外資の製品は5749億円と85%を占めました。100億超の大型品も外資は20成分あり、5成分の内資を圧倒。有用性系加算がついた製品も外資のほうが多く、市場価値の高い製品を生み出していることが読み取れます。
IQVIAは、今後も既存特許品と新薬が市場を押し上げるものの、その成長が特許切れ品市場の縮小によって相殺される構図が続くと見ています。市場全体では29年度までのCAGRを1.3%程度と予測していますが、既存特許品・新薬の市場はより高い成長を維持することになります。開発パイプランの状況を踏まえると、その恩恵の多くを外資が受けるのは間違いないでしょう。

イノベーション市場ではIQVIAの独自分類である「スペシャリティ医薬品」(専門医の処方を必要とする医薬品)が成長ドライバーとなっています。なかでも顕著な伸びを示すのが抗がん剤で、25年の売上高は2兆1103億円と初めて2兆円を突破。市場全体の18%を占めました。10年前の8203億円からは2.6倍増で、この間のCAGRは9.9%に達します。

抗がん剤の市場全体の成長への寄与度は、直近3年間で発売された新薬が特に高いといいます。23~25年の3年間に薬価収載されたがん領域の新薬は34成分ありますが、これらのピーク時予想売上高上位10成分のうち9成分は外資の製品。「プルヴィクト」(421億円)、「テビムブラ」(406億円)、「フェスゴ」(344億円)などで、これを含む13成分が100億円を超えています。

内資も投資「差が固定化するとは考えていない」
こうした外資の高い成長率は、スペシャリティやバイオといった分野への投資が先行していたことも背景にあります。ただ、将来的には内資もこれら領域への投資を拡大していくことから、高山氏は「現在の差がそのまま固定化するとは考えていない」と話します。とはいえ、パイプラインにおける彼我の差や製品力から見て、内資優位に戻ることは簡単ではなさそうです。
新薬開発力は中期的に企業間格差を広げます。今春、外資が相次いで開いた業績説明会では、各社がそろってパイプラインの豊富さを強調しました。ノバルティスファーマは48件の開発プロジェクトを抱え、その半数以上が希少疾患領域です。アストラゼネカは30年までに複数のブロックバスターの投入を見込んでいます。日本イーライリリーやノボノルディスクファーマは肥満症領域で次世代GLP-1製剤の開発を進め、日本ベーリンガーインゲルハイムも追随します。
生産体制の強化にも積極的で、ノバルティスは兵庫県丹波篠山市の篠山工場に約160億円、ベーリンガーは山形工場に約550億円、リリーも神戸市の西神工場に追加で約200億円を投資。日本での事業展開を強化する姿勢をアピールします。
外資各社は30年前後をターゲットに、売上高やランキングで野心的な成長目標を掲げています。市場全体では低成長が続く一方、イノベーティブな医薬品への需要は拡大するなか、それに対応できる企業とそうでない企業との格差は一段と広がりそうです。
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