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外資製薬日本法人12社、25年は売上高2.2%増…ノバルティスやリリーなど2桁増、ベーリンガーは6年連続増収

更新日

穴迫励二

外資系製薬企業の日本法人が官報などに掲載した2025年の決算公告を集計したところ、主要12社の売上高は2兆9053億円で前年比2.2%増となったことが分かりました。IQVIAが集計した国内市場全体の成長率1.7%(薬価ベース)をわずかに上回っています。連続増収で過去最高を更新した企業が多かった一方、主力製品の特許切れなどで大幅な減収となったケースもありました。

 

 

12社中9社が増収

集計対象12社のうち増収は9社、減収は3社。トップは4198億円のアストラゼネカで、以下、MSD(3595億円)、ノバルティス(3232億円)と続きます。前年から1位と2位が入れ替わり、ノバルティスは1つ順位を上げました。ファイザーは決算公告を行っていませんが、IQVIAの統計では販促レベルで6位、販売レベルでは4位に位置しています。

 

【外資製薬企業日本法人12社の2025年業績】単位:億円、%|〈会社名/売上高24年/売上高25年/伸び率〉アストラゼネカ/4,173/4,198/0.6|MSD/4,433/3,595/▲18.9|ノバルティスファーマ/2,888/3,232/11.9|ヤンセンファーマ/3,032/2,953/▲2.6|日本イーライリリー/2,282/2,780/21.8|グラクソ・スミスクライン/2,192/2,586/18.0|サノフィ/2,300/2,403/4.5|日本ベーリンガーインゲルハイム/2,121/2,283/7.6|バイエル薬品/2,160/1,640/▲24.1|アムジェン/1,099/1,453/32.2|ノボノルディスクファーマ/1,345/1,418/5.4|ユーシービージャパン/389/512/31.6|合計/28,414/29,053/2.2|※各社の決算公告をもとに作成

 

日本イーライリリーは売上高が過去最高となり、日本ベーリンガーインゲルハイムは6年連続の増収。集計対象には含まれていませんが、アッヴィとブリストル・マイヤーズスクイブもそれぞれ3年、4年連続で売り上げを伸ばしています。各社とも新製品群が成長を牽引しています。

 

それでも全体で2.2%増と小幅な伸びにとどまったのは、MSDとバイエル薬品の減収が影響しています。MSDは、24年に前年比3倍の売り上げを記録したHPVワクチン「シルガード9」が、キャッチアップ接種の終了に伴って大幅な売り上げ減。新型コロナウイルス感染症治療薬「ラゲブリオ」も投与患者数が減少し、糖尿病治療薬「ジャヌビア」の新薬創出加算累積額控除も響きました。バイエルは抗凝固薬「イグザレルト」に後発品が参入しました。

 

ノボやサノフィ、売り上げ着実に拡大

過去5年の推移がたどれる10社を見ると、ノボノルディスクファーマ、サノフィ、ベーリンガーが着実に売り上げを拡大。リリーとノバルティスはV字回復の様相です。MSDなど新型コロナ関連薬で年ごとの振れ幅が大きい企業もありますが、10社の売上高は5年で22%増加しており、年平均成長率は4.0%となっています。

 

【外資製薬日本法人10社 売上高の推移】〈年/売上高(兆円)〉20/2.2283|21/2.285376|22/2.630949|23/2.576178|24/2.692554|25/2.708762|※各社の決算公告をもとに作成

 

これら10社には含まれませんが、勢いが目立つのはアムジェンです。20年4月にアステラス製薬との合弁を解消して独自展開を開始。業績の開示を始めた21年の売上高は563億円でしたが、25年は前年比32.2%増の1453億円と4年間で2.6倍に拡大しました。骨粗鬆症治療薬「イベニティ」や抗がん剤「イムデトラ」のほか、24年に発売した活動性甲状腺眼症治療薬「テッペーザ」が寄与しています。

 

各社の主力品を見ると、MSDは抗がん剤「キイトルーダ」が19.2%増の2207億円(薬価ベース、以下同)と超大型品に成長。サノフィのアトピー性皮膚炎などの治療薬「デュピクセント」は1446億円で、国内製品別売上高ランキング3位まで浮上しました。ノバルティスは心不全治療薬「エンレスト」が45.3%増の1161億円と好調。リリーの糖尿病治療薬「マンジャロ」は適正使用が求められる中、前年比3.8倍となる1049億円に到達しました。

 

【外資系製薬企業日本法人 各社の売上高の推移】(単位:億円)〈年/MSD/ノバルティス/サノフィ/GSK/AZ/バイエル/日本BI/日本リリー/ヤンセン/ノボ〉19/3,475/2,646/1,818/2,235/2,796/2,525/1,532/2,532/2,124/885|20/3,220/2,574/1,757/2,070/2,814/2,320/1,630/2,513/2,407/978|21/2686.91/2483.72/1807/2157.6/3483.43/2292.95/1763.95/2308.66/2777.52/1092.02|22/4235.86/2451.31/1837/3026.93/4434.91/2296.48/1868/1845.65/3117.42/1195.93|23/3952.77/2695.04/2058/2140.3/4215/2238.77/2001.59/1954.27/3208.4/1297.64|24/4432.92/2888.34/2300/2192.18/4172.5/2159.96/2120.88/2281.87/3031.9/1344.99|25/3595.26/3232.4/2403/2585.52/4197.82/1,640/2282.37/2780.46/2952.87/1417.92|※各社の決算公告をもとに作成

 

豊富なパイプライン、工場への投資も活発化

開発パイプラインは、各社ともその豊富さをアピール。ノバルティスは48件の開発プロジェクトのうち28件が希少疾患。昨年11月には放射性リガンド療法薬「プルヴィクト」を前立腺がんの適応で発売し、ピーク時に421億円の売り上げを見込みます。アストラゼネカは、30年までに発売を計画する新薬のうち複数がブロックバスターになる可能性があると強調。ブリストルは27年以降に新薬ラッシュを迎えるといいます。

 

多くの企業が開発を競う肥満症領域では、リリーが経口GLP-1受容体作動薬オルフォルグリプロン(一般名、米国製品名ファウンダヨ)を申請済み。ベーリンガーも臨床第3相(P3)試験の段階にあるGLP-1/グルカゴン受容体作動薬スルポデュチドで参入をうかがいます。ノボはGLP-1受容体作動薬とアミリンアナログの配合剤カグリセマがP3試験、GLP-1/GIP/アミリンのトリプルアゴニストもP2試験が進行中です。

 

生産設備への投資も活発化しています。ノバルティスは放射性リガンド療法の生産力強化に向け、1億ドル(約160億円)を投じて篠山工場(兵庫県丹波篠山市)の製造施設を拡張。地域経済への波及効果は投資額の2倍以上となる300億円に上るとしています。ベーリンガーは28年までに山形工場(山形県東根市)に3億ユーロ(約550億円)を投資することを発表済み。過去2年で国内工場の増強に70億円を費やしたリリーは、さらに200億円を追加投資します。

 

意欲的な成長目標相次ぐ

30年ごろに向けた中期の見通しについては、各社とも引き続き意欲的な姿勢を示しています。アストラゼネカは「ナンバー1のポジションを維持できる可能性は十分ある」(アンドリュー・バーネット社長)とし、リリーは複数のカテゴリで業界を主導する「製薬業界のリーディングカンパニー」(シモーネ・トムセン社長)の実現を掲げました。サノフィは「30年までにトップ3入り」(岩屋孝彦社長)を目指します。

 

成熟化する日本の医薬品市場で、外資はおおむね順調な成長を遂げています。がん、免疫、糖尿病・肥満症といった領域の製品で業績を伸ばし、将来を支える開発パイプラインも潤沢です。生産設備などへの投資意欲も継続しており、今後も高付加価値の新薬上市で市場をリードすることになりそうです。

 

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