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中国製薬、グローバル人材の不足が海外進出の足かせに

更新日

ロイター通信

中国・上海にある江蘇恒瑞医薬のオフィス(ロイター)

 

[上海/ロンドン ロイター]中国の大手製薬企業が、海外進出に必要な国際経験を持つ人材の確保に苦戦している。中国は革新的新薬の創出拠点として急速に台頭しているが、そうした製品のグローバル展開に必要な人材の育成が追い付いていない。

 

中国企業の臨床試験、88%が国内のみ

IQVIAによると、中国に本社を置く製薬企業が2025年に実施した臨床試験のうち、88%が中国国内だけで行われた。一方、中国企業が米国で行った試験は全体のわずか5%にとどまっており、課題の大きさを浮き彫りにしている。特に、米国側が中国国内だけで試験が行われた医薬品の一部について承認を見送り、国際共同治験の実施を求めて以降、その傾向はさらに強まっている。

 

がんや代謝性疾患に対する新薬を開発している江蘇恒瑞医薬の董事長・孫飄陽氏は、国際共同治験の実施、海外での承認申請、商業化の取り組みには高度な専門性を持つ人材が必要だが、グローバル開発、国際的な規制、異文化マネジメントの専門知識を持つ人材が業界全体で不足していると指摘。「われわれが直面している課題は、中国バイオ医薬品業界に共通した課題だ」と話す。

 

ワクチンメーカー康希諾生物(カンシノ・バイオロジクス)の宇学峰CEO(最高経営責任者)も、海外での臨床試験実施、複数の国・地域での承認申請、国際マーケティングといった分野で専門家が不足していると言う。宇氏は「中国ではこれまで、国際共同治験を含む海外進出に向けた取り組みがあまり行われてこなかった」と振り返る。

 

採用コストは高騰

シニアクラスの開発人材に対する需要は世界的に高まっているが、業界の専門家によると、特に中国ではその不足が深刻だという。

 

ICONの最近の調査によると、「人材不足が事業に影響を与えている」と答えたアジア太平洋地域のバイオテック専門家の割合は、その他の世界各国の同業者と比べて約3倍高かった。同社の中国事業マネージャー鍾耀氏は「インドはアウトソーシング産業の恩恵を受けており、日本には成熟した業界がある。しかし、中国は急速な発展を遂げたがゆえに、人材確保のプレッシャーがより強くなっている」と指摘する。

 

IQVIAによると、中国企業による新薬開発は過去20年で著しく成長している。中国企業が行う臨床試験は、09年は世界全体のわずか2%だったが、25年には32%を占めた。

 

欧米を中心とする中国国外の製薬企業では、主力製品の特許切れに伴って新製品への需要が高まっており、中華圏の企業とのライセンス契約が急増している。Pharmcubeによると、その額は16年の3億1800万ドルから25年には約1380億ドルに増加すると予測されている。

 

研究開発向けソフトウェア企業フローレンス・ヘルスケアの最高臨床試験責任者キャサリン・グレガー氏は「国際的な訓練を受けたシニアレベルの人材を確保できなければ、中国企業はグローバルな商業化においてボトルネックに直面することになる」と話す。

 

江蘇恒瑞医薬の孫氏は、社内研修の強化やグローバル人材の採用を強化していくとしているが、「国際的な視野と実務経験を持つ専門家は世界中で引っ張りだことなっており、採用コストは高騰している」と言う。カンシノの宇氏は、自社の薬事や臨床開発のチームが国際的なアドバイザーからノウハウを学んできたと話す。

 

がんや自己免疫疾患にフォーカスする上海復宏漢霖生物技術は最新の年次報告書で、自社で独自に臨床試験を運営できるよう、米国、欧州、日本、オーストラリアに臨床開発・薬事のチームを設置したと明らかにした。

 

海外展開はパートナー依存

世界各国の規制当局は、より多様な患者集団の臨床データを求めている。

 

元FDA(米国食品医薬品局)医薬品評価責任者のリチャード・パズドゥーロ氏は、複数の国・地域で臨床試験を行うことで、当局は各国・地域の結果を比べることができ、有効性や安全性の違いがデータの質によるものなのか、民族的な違いや医療行為の違いによるものなのかを判断しやすくなると指摘。「中国のデータしかない場合、それを他地域にどこまで適用できるのか疑問を持つ人もいるだろう」と話す。

 

日本のPMDA(医薬品医療機器総合機構)は、日本で承認される新薬のほとんどは、中国だけでなく日本人のデータを必要とすると説明している。

 

人材紹介会社によると、人材の不足により、中国企業は国際共同治験を行うにあたって海外のパートナーに頼らざるを得なくなる可能性がある。ただ、それは海外進出そのものを頓挫させるというよりは、実行を遅らせる可能性のほうが高いという。米国の人材紹介会社スミス・ハンリー・アソシエイツの製薬エグゼクティブ担当リクルーター、ニハール・パリーク氏は「中国企業の人材不足はこれまでのところ、海外での臨床試験の明確な失敗ではなく、摩擦、つまり実行の遅延やパートナーへの依存という形で表れている」と言う。

 

パリーク氏によると、求職者の間には中国企業の海外戦略や持続可能性にやや慎重な見方があるうえ、提示される報酬が欧米のグローバル企業に及ばない場合もある。

 

英国の人材紹介会社ヘイズのライフサイエンス部門グローバル責任者、ジェームズ・ニッセン氏は、中国企業がシニアレベルのグローバル人材を採用するには、自社の科学的野心、意思決定プロセス、長期的な国際戦略を明確に示す必要があると指摘する。

 

ニッセン氏は「ビジョンを明確に提示できれば、中国のバイオ医薬品企業は非常に高い競争力を持つ。しかし、それがまだ発展途上の場合、採用には時間がかかる。候補者がないわけではない。彼らは企業を厳選している」と話した。

 

(取材:Andrew Silver/Bhanvi Satija、編集:Miyoung Kim/Jamie Freed/Chizu Nomiyama、翻訳:AnswersNews)

 

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