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ニュース解説

田辺ファーマ、競争激しいgMGに新薬投入…免疫領域、牽引役として成長期待

更新日

穴迫励二

田辺ファーマが抗CD19抗体「ユプリズナ」の新たな適応として、全身型重症筋無力症(gMG)の承認を取得しました。国内事業に特化する同社は事業構造の転換期にあり、新薬中心の収益構造を目指すなかで柱の1つに育てたい考えです。

 

 

既存薬と異なる作用機序

ユプリズナは米アムジェンからの導入品。国内開発を手掛け、2021年3月に「視神経脊髄炎スペクトラム障害(視神経脊髄炎を含む)の再発予防」の適応で発売しました。25年11月には「IgG4関連疾患の再燃抑制」でも承認を取得しています。

 

3つ目の適応となるgMGは、神経と筋肉のつなぎ目(神経筋接合部)でアセチルコリンによる神経伝達が障害され、筋力が低下する自己免疫疾患。主にアセチルコリン受容体や筋特異的チロシンキナーゼに対する自己抗体によって引き起こされます。筋力低下、呼吸困難、嚥下障害、発話障害、複視や眼瞼下垂といった症状を呈し、全身型のほか眼だけに症状が現れる眼筋型があります。重症筋無力症は国の指定難病で、国内患者数は約2.9万人と推定されます。

 

治療薬としては、ステロイドやそれ以外の免疫抑制剤に加え、近年は分子標的薬が相次いで承認されています。その作用機序は、免疫機能を構成する補体の過剰な働きを抑え、神経筋接合部の組織が破壊されるのを防ぐ「補体阻害薬」、抗体が再利用される仕組みに関わるFcRnの働きを阻害して自己抗体を減少させる「FcRn阻害薬」に分かれます。

 

病態の上流に介入

ユプリズナはこれらとは異なる「B細胞枯渇療法」。既存薬より病態の上流に介入し、自己抗体を産生するCD19陽性B細胞を持続的に減少させます。投与方法は、初回の点滴静注から2週間後に2回目を投与し、3回目は初回から6カ月後に投与。以降は6カ月に1回の投与で、他剤より長い間隔となっています。

 

10月6日に田辺ファーマが開いたセミナーで、千葉大医学部附属病院脳神経内科の鵜沢顕之診療講師は、「ユプリズナはこれまでの薬剤とは全く異なる作用機序」とし、B細胞標的薬として初めて承認された意義を強調しました。どういった病態・症状の患者に有効かについては、「アセチルコリン受容体陽性の患者には比較的効果が高いと想定される」と説明。病態の根元をたたくという作用から、「長期的に使用することで、よりよくコントロールできる可能性はある」とも話しました。ただ、まだ不明な部分もあるため、実臨床のなかで事例収集していく必要があるとしています。

 

分子標的薬が相次ぎ発売

gMG治療薬は市場での競合が激しくなっています。アレクシオンの補体阻害薬「ソリリス」と投与間隔を広げた同「ユルトミリス」を追う形で、アルジェニクスのFcRn阻害薬「ウィフガード」(同)とその配合剤「ヒフデュラ」、ユーシービーのFcRn阻害薬「リスティーゴ」と補体阻害薬「ジルビクス」が発売。25年11月にはヤンセンファーマが、12歳以上の小児にも使える世界初のFcRn阻害薬「アイマービー」で参入しています。

 

さらに今年8月、アレクシオンが補体阻害薬「クライジェファ」の承認を取得。適応拡大で参入したユプリズナも含め、作用機序の違いや投与の利便性、治療の持続性などそれぞれの特徴によって新たな患者獲得競争が始まります。

 

【各社が製造販売する全身型重症筋無力症治療薬】社名/製品名/一般名/標的/投与経路|アレクシオン/ソリリス/エクリズマブ/補体/点滴|アレクシオン/ユルトミリス/ラブリズマブ/補体/点滴|アレクシオン/クライジェファ/ゲフルリマブ/補体/皮下注|アルジェニクス/ウィフガード/エフガルチギモド/FcRn/点滴|アルジェニクス/ヒフデュラ/エフガルチギモド/FcRn/皮下注|ユーシービー/リスティーゴ/ロザノリキシズマブ/FcRn/皮下注|ユーシービー/ジルビクス/ジルコプラン/補体/皮下注|ヤンセン/アイマービー/ニポカリマブ/FcRn/点滴|田辺ファーマ/ユプリズナ/イネビリズマブ/B細胞/点滴|各製品の添付文書などをもとに作成

 

「イムノロジー営業本部」新設

田辺ファーマはベインキャピタル傘下となって以降、海外展開をやめて国内事業に集中投資する方針を示しています。現在は、日本イーライリリーと共同販促するGLP-1受容体作動薬「マンジャロ」の売り上げが急増する一方、筋萎縮性側索硬化症などの治療薬「ラジカット」は塩野義製薬に売却。乾癬などの治療薬「ステラーラ」にはバイオシミラーが参入し、「ウルソ」「デパス」といった長期収載品は東和薬品に承継するなど、事業構造の転換期にあります。

 

そうしたなかで成長ドライバーとして期待するのが自己免疫疾患領域です。ユプリズナは全身性強皮症でも臨床第3相試験を行っており、複数の適応を積み上げて同領域を牽引することになります。25年3月期の売上高は前期比71.6%増の104億円まで拡大しています(26年3月期は非開示)。

 

同社は10月1日付で「イムノロジー営業本部」を新設、免疫領域は国内事業を牽引するフランチャイズに位置付けます。今後、年2~3品目の新薬候補を導入する考えも示しており、ユプリズナは既存品から新薬中心の収益構造を目指す象徴的な製品となりそうです。

 

【ユプリズナの売上高推移】2021年度/13億円|2022年度/28億円|2023年度/61億円|2024年度/104億円|三菱ケミカルグループの決算発表資料をもとに作成

 

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