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田辺ファーマ、ファンド傘下で再生着々…成熟製品や工場を売却、パイプラインに集中

更新日

穴迫励二

田辺ファーマが、2工場を持つ製造子会社を東和薬品に売却するとともに、長期収載品17成分35品目の製造販売承認も同社に承継・譲渡することを決めました。ALS(筋萎縮性側索硬化症)治療薬エダラボン事業の売却や、ワクチン製造会社BIKENの合弁解消に続く資産の整理です。米投資ファンド・ベインキャピタルの傘下で再生シナリオが着々と進んでいます。

 

 

事業構造、根本から見直し

小野田(山口県山陽小野田市)、吉富(福岡県吉富町)の2工場を持つ製造子会社・田辺ファーマファクトリーの売却は、東和薬品からのアプローチがきっかけでした。東和は、厚生労働省の「後発医薬品の安定供給等の実現に向けた産業構造のあり方に関する検討会」が2024年5月に報告書をまとめて以降、国内に製造拠点を持つ複数の製薬企業に協業や工場の譲渡を打診してきました。

 

田辺はそのうちの1社でしたが、当初は必ずしも協業に前向きではありませんでした。同社の姿勢が変わったのはベインの傘下に入ったころ。「そのタイミングで先方からも話をいただいた」(東和の中村豪之取締役)ことで、協業から買収へと話が発展しました。

 

ベインは田辺の事業構造を根本から見直しています。25年7月に約5100億円を投じて三菱ケミカルグループからの買収を完了し、9月には前ファイザー日本法人社長の原田明久氏をCEO(最高経営責任者)に、前武田薬品工業CFO(最高財務責任者)のコスタ・サルウコス氏を会長に招へい。12月にはエダラボン事業の塩野義製薬への売却を発表しました。

 

米国シフトから方向転換

同薬はALS治療薬として米国(製品名・ラジカヴァ)で1000億円を売り上げていた収益の柱。米国の事業拠点は海外展開の基盤でもありました。売却額は約3900億円で、投下資本の大半を回収したようにも見えます。しかし、売却は単なる資産の切り売りではなく、田辺ファーマは「日本市場への再投資を促し、導入や研究開発を通じたパイプライン拡充をもって、日本の事業基盤を強化する」と狙いを説明しています。

 

こうした方向性は、三菱ケミカルグループの子会社だった時代とは真逆です。同社は、薬価の毎年改定がある国内市場の比重を下げて「医薬品の価値を認めてもらえる米国のような市場にシフトせざるを得ない」との考えを強調していました。

 

阪大微生物研究会との合弁で行っていたワクチン製造からも手を引きました。合弁会社BIKENの保有株式(33.4%)を阪大微研に売却。ポートフォリオを再編して本業に経営資源を集中させています。合弁解消は「当初の目的だった生産基盤の強化に一定の成果を得た」ためですが、一方で阪大微研とは「製造販売元、販売元として今後も強固な協力関係を継続する」としています。これは、東和薬品に工場を売却したあとも製造を委託するように、資産を持たず外部のリソースや提携関係を活用する「アセットライト型」の経営手法といえそうです。

 

【田辺ファーマ ベイン傘下入り後の主な動き】|〈年/月/主な動き〉2025年/7月/ベインが三菱ケミカルグループから5100億円で買収|2025年/9月/CEOに原田明久氏、会長にコスタ・サルウコス氏が就任|2025年/12月/社名を田辺三菱製薬から田辺ファーマに変更|2025年/12月/東京本社を千代田区から文京区に移転|2026年/4月/エダラボン事業を塩野義製薬に25億ドルで売却|2026年/4月/阪大微研とのワクチン製造の合弁を解消|2026年/7月/参天製薬とのアレジオン眼瞼クリームの共同販促終了|2026年/11月/製造子会社を東和薬品に売却(予定)|2027年/4月以降/長期収載品17成分35品目を東和薬品に承継(予定)|※田辺ファーマのプレスリリースなどをもとに作成

 

高収益企業に再生、企業価値高め出口へ

成熟資産のエダラボン、製造子会社、少数のBIKENの持分を相次いで整理する一方、販売と研究開発の機能は維持しています。原田氏とサルウコス氏はロイター通信のインタビューに対し、日本市場に注力していく方針を強調。同業他社が国内投資を抑制する現状を「革新的な新しいアセットを獲得し、研究開発に投資する絶好の機会」(サルウコス氏)と見て、導入可能な新薬を毎年2~3品目リストアップする考えも示しています。

 

導入を含むパイプラインの拡充によって目指すのはコア営業利益率20~30%で、サルウコス氏は「達成には3~5年かかる」との見通しを示しています。ある業界関係者は、ベインは「5年程度をめどに売却する前提で投資している」と見ています。エダラボン事業や工場を売却して得た資金で収益性の高い企業に再生し、企業価値を高めたうえで出口に向かうストーリーが浮かび上がります。

 

関連記事:ベイン傘下入りの田辺ファーマ「日本市場に注力、毎年最大3つの新薬投入」

 

将来ビジョン公表へ

田辺の売上高は、最後の決算発表となった25年3月期で4604億円でした。このうち、国内医療用医薬品の売上高は3106億円。最主力品は当時567億円を売り上げた乾癬などの治療薬「ステラーラ」ですが、バイオシミラー(BS)が参入しており減収傾向です。414億円の売り上げがあった関節リウマチ治療薬「シンポニー」もBS参入を控えます。

 

【田辺ファーマ(旧田辺三菱製薬) 業績の推移】単位:億円、%|〈年度/売上高/営業利益率(右軸)〉20/3778/5.6|21/3859/0|22/5354/26.9|23/4374/12.8|24/4604/14.2|※21年度は研究開発費の一時的増加により30億円の営業赤字。22年度はジレニアのロイヤリティを一括認識したことで大幅増収。三菱ケミカルグループの決算発表資料をもとに作成

 

成長が期待できるのは、視神経脊髄炎スペクトラム障害の再発予防などを適応とする「ユプリズナ」で、25年3月期の売上高は前期比71.6%増の104億円。同年11月にはIgG4関連疾患への適応拡大が承認され、全身型重症筋無力症でも申請中です。急拡大する糖尿病治療薬「マンジャロ」は25年度に薬価ベースで1310億円まで伸びました。26年度に入ってもその勢いは衰えていませんが、日本イーライリリーとの共同販促品であり、収益性を高めるには自社開発品の投入が不可欠といえそうです。

 

田辺は今後、将来ビジョンを公表するとしています。資産の売却とパイプラインへの戦略的投資により、会社の中身の入れ替えを進める同社。エダラボン事業に続く2工場の売却は「衝撃をもって受け止めた従業員が多かった」(同社社員)というほど、大胆かつ足早に構造改革が進んでいます。ビジョンでは、日本市場に特化したスペシャリティファーマへの転換を打ち出すことになるのでしょうか。

 

AnswersNews編集部が製薬企業をレポート

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