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塩野義製薬、国内事業の再構築加速…鳥居薬品買収で非感染症領域を拡大、売上収益2000億円視野

更新日

穴迫励二

塩野義製薬が不安定だった国内事業の再構築を加速しています。昨年9月の買収で鳥居薬品を傘下に収めて基盤を強化。従来の感染症中心から「QOL疾患」を第2のフランチャイズに位置付け、売上収益2000億円を視野に再スタートを切ります。

 

 

営業の連携強化「すでにシナジー」

塩野義の国内事業はこれまで、感染症を軸に展開してきました。ただ、業績はインフルエンザの流行に左右されるなどで見通しが立てにくく、年度ごとの振れ幅も大きかったのが実情です。鳥居の製品が加わる前の2024年度は、国内売上収益988億円のうち感染症領域が74%(614億円)を占めていました。

 

鳥居に加え、田辺ファーマから筋萎縮性側索硬化症(ALS)治療薬「ラジカット」の事業を買収したことで、製品構成は様変わりしています。QOL疾患である「アレルギー・皮膚」「中枢神経系(CNS)」「希少疾患」の各領域が拡大し、26年度の国内売上収益は1786億円を予想。感染症領域は流行予測が難しいものの、構成比は23%まで低下する見込みです。手代木功会長兼社長CEO(最高経営責任者)は、同領域への依存度を将来的に2割以下に抑えたい考えを示しており、その姿に近付きつつあります。

 

【塩野義製薬 国内売上収益の推移】〈年度/感染症薬/その他(億円)〉20/101/849|21/121/770|22/1123/678|23/832/681|24/615/375|25/342/892|26/421/1369|※26年度は予想。塩野義製薬の決算発表資料をもとに作成

 

26年4~6月期の国内売上収益は335億円となり、前年同期の約2.4倍に膨れました。うち鳥居関連製品は188億円で、13.2%と2桁増を達成しています。塩野義でマーケティングを統括する吉本悟ヘルスケア戦略本部長は「皮膚科やCNS領域では営業の活動(ディテール)量が10%程度上がっている」とし、シナジーがすでに出ていると見ています。

 

現在、両社の営業組織はそれぞれ独立して活動しており、担当施設を分担しながら特定の製品に絞ってコ・プロモーションを展開しています。4月からは月1回の合同販売戦略会議を開催し、月ごとに活動に優先順位をつけて製品知識や情報提供に関するトレーニングを実施。双方のMRが、自社だけでなく互いの製品を組み合わせて提案できる体制を構築します。

 

【鳥居薬品の製品別売上高】〈製品名/対象疾患/24年実績(百万円)/前年比(%)〉シダキュア/スギ花粉症アレルゲン免疫療法/12812/12.8|ミティキュア/ダニアレルゲンアレルゲン免疫療法/11241/10.8|コレクチム/アトピー性皮膚炎/8846/18.7|リオナ/高リン血症・鉄欠乏性貧血/8151/8.5|アンテベート/湿疹・皮膚炎など/5381/18.7|計/60144/10.7|※鳥居薬品の決算発表資料をもとに作成

 

4製品中心にコプロ

コ・プロモーションは現時点で、▽不眠症治療薬「クービビック」(塩野義)▽急性呼吸器感染症薬「ゾコーバ」「ゾフルーザ」(同)▽アトピー性皮膚炎治療薬「コレクチム」(鳥居)――など4製品を中心に実施。注力するQOL疾患では、不眠症について薬剤を提供するだけでなく日常生活の質向上につなげるプロモーションを展開。クービビックは、特に高齢者に対する総睡眠時間の維持や日中機能の改善などを訴求します。

 

同じCNS領域では今年3月、新たな抗うつ剤「ザズベイ」を発売。臨床試験では3日目から効果を発揮する可能性が示唆されており、差別化ポイントになります。さらに6月には小児期の注意欠如多動症(ADHD)を対象にしたデジタル治療補助アプリ「エンデバーライド」の販売も開始。この1~2年で製品群が揃い、「(26年度は)本格的にCNS領域を推進する1年になる」(吉本氏)といいます。

 

希少疾患についてはこれまで営業経験がなく、ラジカットでは患者団体への対応など田辺ファーマのノウハウを取り込むとともに、自社のマーケティング戦略を付加して再構築。エビデンス作りや医師への情報提供素材、疾患啓発などに新たな投資を行う考えです。

 

ゾコーバ・ゾフルーザは26年度からコプロの体制を強化し、鳥居が得意とする診療科への展開や施設ネットワークを活用しています。

 

MRの活動量・生産性向上にAI活用

マーケティングへのAI導入が製薬各社で活発化するなか、塩野義もMRの活動量を上げて生産性を高めることを狙い活用を推進。製品・施設の優先順位付けや提供する情報の決定などをAIがサポートしており、今月からは地図上で訪問先をマッピングし、最適な訪問ルートを提案する機能も開始します。

 

医師自身もAIを使って情報を収集する時代になると、従来型の情報提供だけでは価値が相対的に下がる可能性も出てきます。吉本氏は「MRにはAIで十分に伝えられない‟情報の行間“を説明する能力が問われる」とし、単なる製品説明にとどまらず、医師の潜在的なニーズを見いだす役割が求められると指摘します。

 

塩野義製薬の吉本悟ヘルスケア戦略本部長

塩野義製薬の吉本悟ヘルスケア戦略本部長

 

AIの機能を拡充するにあたっては、MR側の意識やマインドに差があることが課題となっています。使用頻度の濃淡と営業成績との直接的な相関を測るにはまだ十分なデーがありませんが、活動量そのものには差が出ているようです。今後は使わない、あるいは使いにくい理由を分析し、利用率を高めていく考えです。

 

一般にサイロ化が指摘される社内データの統合については、大きな問題にはなっていないようです。むしろ、情報の正確な入力に注意を払っており、過去から蓄積してきたテキストデータも重要な資産になっているといいます。

 

鳥居統合後もMR数は維持

27年4月には鳥居を吸収合併し、両社は完全に統合される予定。その後も、営業・MR体制は基本的に現状の両社合わせて800人規模を維持します。今後、希少疾患領域で新たな製品が加わっても、既存の人員を活用しながら生産性を引き上げます。

 

65カ所ある営業所については、重複する拠点の調整は必要となるものの、全体として大幅な削減は考えていません。外資を中心に営業所を廃止して直行直帰スタイルをとる企業もありますが、プライマリー製品を多く扱うため、医師のもとへ直ちに訪問できる体制をとる必要があるからです。

 

塩野義は今後も低分子医薬品を重視する考えです。抗体医薬や遺伝子治療など新たなモダリティは高薬価となるためで、吉本氏は「多くの患者さんに合理的な価格で医薬品を届けることは、製薬企業として重要な価値観」と話します。目標とする国内売上収益2000億円を達成すれば7~8番手に食い込むことになり、停滞気味の国内市場で存在感を高めます。

 

AnswersNews編集部が製薬企業をレポート

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