
(写真:ロイター)
2026年8月に米FDA(食品医薬品局)が承認した主な新薬と適応拡大を、領域別にまとめました。
【新薬】ブリストルの標的タンパク質分解誘導薬「Zenbexus」など

がん
Zenbexus|米ブリストル・マイヤーズスクイブ
「Zenbexus」(一般名・iberdomide)は、標的タンパク質分解誘導薬の経口セレブロンE3リガーゼ調節薬(CELMoD)。適応は多発性骨髄腫で、プロテアソーム阻害薬と免疫調節薬を含む少なくとも1つ以上の前治療を受けた成人患者が対象です。daratumumab/hyaluronidase、dexamethasoneと併用します。daratumumab、bortezomib、dexamethasoneの3剤併用療法と比較した臨床第3相(P3)試験では微小残存病変(MRD)陰性の完全奏効率を有意に改善し、この結果をもとに迅速承認を取得しました。日本ではP3試験が進行中です。
Rasonque|米レボリューション・メディシンズ
経口Pan-RAS阻害薬「Rasonque」(daraxonrasib)は、転移性膵管腺がん治療薬。少なくとも1つ以上の全身療法を受けたことがある患者、または多剤併用全身療法が適応とならない患者が対象です。P3試験では、化学療法と比べて死亡リスクを60%低減させました。欧州でも申請中で、日本ではP3試験が行われています。
Tudriqev|米レプリミューン
腫瘍溶解性ウイルス「Tudriqev」(vusolimogene oderparepvec)は、切除不能・進行性の悪性黒色腫の適応で迅速承認を取得。抗PD-1療法を受けたあとに進行した患者が対象で、抗PD-1抗体nivolumabと併用します。P1/2試験の客観的奏効率は24.2%で、奏効期間の中央値は14.1カ月でした。
精神
Orzeyful|武田薬品工業
「Orzeyful」(oveporexton)は、ナルコレプシータイプ1の治療薬。武田薬品が創製したオレキシン2受容体(OX2R)選択的作動薬で、OX2Rを活性化することで覚醒を促し、情動脱力発作(カタプレキシー)を含む異常なレム睡眠に関連する現象を軽減します。P3試験では、ナルコレプシータイプ1の各症状を有意に改善しました。日本と中国でも承認済みです。
筋
Lisraya|米プリオバント・セラピューティクス
1日1回経口投与のTYK2/JAK1阻害薬「Lisraya」(brepocitinib)は、皮膚筋炎治療薬として承認されました。承認の根拠となったプラセボ対照のP3試験では、症状を改善し、ステロイドの使用量を減少させました。
代謝
Genglycos|米ウルトラジェニクス
「Genglycos」(pariglasgene brecaparvovec)は、糖原病Ia型に対する遺伝子治療薬として迅速承認を取得しました。糖原病Ia型はG6PC遺伝子変異によってG6Pase酵素の不足を起こす先天性糖代謝異常。G6Pase酵素の不足は重度の低血糖を招き、患者はブドウ糖補充療法としてコーンスターチによる厳格な血糖管理を求められます。Genglycosは肝臓で機能的なG6Paseを発現させる作用を持ち、P3試験ではプラセボと比べてコーンスターチの必要量を減らしました。日本でも申請中です。
血液
Mimrylo|武田薬品工業
「Mimrylo」(rusfertide)は、真性多血症(PV)に伴う赤血球増加症の治療薬。天然型ヘプシジンの作用を模倣したファースト・イン・クラスの薬剤で、体内の鉄分布と赤血球の過剰産生を調節し、PVの主要な治療目標であるヘマトクリット値(血液中の赤血球の割合)のコントロールを維持します。従来の標準治療である瀉血や細胞減少療法では、患者の約78%でヘマトクリット値のコントロールが不十分だとされます。同薬は米プロタゴニスト・セラピューティクスが創製。武田薬品は同社から全世界での開発・販売権を取得しています。
骨
Pasatru|米リジェネロン・ファーマシューティカルズ
「Pasatru」(garetosmab)は、「進行性骨化性線維異形成症(FOP)に伴う異所性骨化病変と臨床医評価の再燃の減少」の適応で承認されました。同薬は、FOP患者の異所性骨化病変を引き起こすアクチビンAを阻害する抗体医薬。国際共同P3試験では、プラセボと比べて新たな異所性骨化病変を大幅に減少させました。日本も同試験に参加しており、今後、申請を行う見通しです。
感染症
Bixlenvo|米ギリアド・サイエンシズ
インテグラーゼ阻害薬bictegravirとHIVカプシド阻害薬lenacapavirの固定用量配合剤の「Bixlenvo」は、HIV感染症治療薬。ウイルス学的抑制が得られている成人患者に使用できる1日1回経口投与の薬剤です。日本ではP3試験が行われています。
mFLUSIVA|米モデルナ
「mFLUSIVA」は、米国初の季節性インフルエンザ向けmRNAワクチン。4万人以上の50~64歳の成人を対象に行ったP3試験と、約3000人の65歳以上の成人を対象に行ったP3試験の結果をもとに承認されました。65歳以上は迅速承認となり、市販後臨床試験で臨床的有用性を確認します。
【適応拡大】ZiiheraのHER2陽性胃食道腺がん向け併用療法など

がん
Ziihera|アイルランド・ジャズファーマシューティカルズ
抗HER2二重特異性抗体「Ziihera」(zanidatamab)は、「切除不能な局所進行性または転移性のHER2陽性胃食道腺がんの1次治療」の適応で、▽抗PD-1抗体「Tevimbra」(tislelizumab)とフルオロピリミジン系・プラチナ含有化学療法との併用療法▽フルオロピリミジン系・プラチナ含有化学療法との併用療法――の2つの併用療法の承認を取得しました。P3試験では無増悪生存期間を大幅に改善し、病勢進行または死亡のリスクを35%減少させました。日本ではP3試験の段階にあります。
血液
Imaavy|米ジョンソン・エンド・ジョンソン
抗FcRn抗体「Imaavy」(nipocalimab)は、温式自己免疫性溶血性貧血に適応拡大しました。対象は、コルチコステロイドで治療中または治療歴のある12歳以上の患者。治療選択肢はこれまで、コルチコステロイドと免疫抑制剤に限られていました。P2/3試験では、プラセボと比べて持続的なヘモグロビン反応が確認されました。日本も同試験に参加しています。
Besremi|台湾ファーマエッセンシア
インターフェロン製剤「Besremi」(ropeginterferon alfa-2b)は、新たに本態性血小板血症の適応で承認を取得。同疾患は骨髄の異常によって血小板が過剰に産生される疾患で、出血や血栓のリスクが高いとされます。P3試験では、anagrelideと比べて高い奏効率を示しました。日本でも8月に適応拡大が承認されています。
循環器・代謝・腎
Mounjaro|米イーライリリー
持続性GLP-1/GIP受容体作動薬「Mounjaro」(tirzepatide)は、2型糖尿病患者の心血管イベントリスクの低減に適応拡大。心血管死、非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中などのリスクの高い患者が対象です。1万3000人以上の患者を対象に行ったP3試験では、dulaglutideに対する非劣性が確認されました。日本も同試験に組み入れられています。
感染症・ワクチン
Tivicay PD|英ヴィーブヘルスケア
HIV治療薬「Tivicay PD」(dolutegravir)は、対象を「生後4週間以上、体重3kg以上」から「体重2kg以上」に変更しました。ほかの抗レトロウイルス薬と併用します。新生児への治療選択肢として期待されています。




