
ダラクソンラシブの治験薬が入ったボトル(ロイター)
[シカゴ ロイター]米レボリューション・メディシンズが開発中の膵臓がん治療薬ダラクソンラシブ(一般名)が、化学療法と比較して生存期間を2倍に延長する効果を臨床試験で示した。症状の改善に伴い、一部の患者は病気によってあきらめていた活動を再開することができたという。致死性が高く、選択肢が限られていた膵臓がん治療に新たなベンチマークが打ち立てられた。5月31日、研究チームが米国臨床腫瘍学会(ASCO)で試験結果を発表した。
試験は、化学療法による1次治療で効果が得られなかった患者500人を対象に実施。1日1回ダラクソンラシブを経口投与した群と、標準的な化学療法を行った群を比較したところ、死亡リスクはダラクソンラシブ群が60%低かった。腫瘍の進行停止や縮小がみられた患者の割合は、ダラクソンラシブ群で3分の1近くに上り、化学療法群の10%を大きく上回った。
アリゾナ大がんセンターの医師でASCOの膵臓がん専門医であるラクナ・シュロフ博士は「すべての条件を満たしている」と評価。化学療法後に進行した患者で生存期間を倍増させ、死亡リスクを減少させた薬剤はこれまでなかったと指摘した。
レボリューションは4月13日に試験結果の概要を発表していた。それによると、全生存期間の中央値は化学療法群の6.7カ月に対してダラクソンラシブ群は13.2カ月に達した。これを受けて同社の株価は40%急騰した。
ハーバード大ダナ・ファーバーがん研究所の医師で、この試験の筆頭責任者を務めたブライアン・ウォルピン博士は、「今回の結果は、科学者、臨床医、そして患者の膵臓がん治療への見方を一変させるだろう」と語った。
この薬の主な懸念は発疹で、同薬を服用した群の86.3%に見られた。しかし、ウォルピン博士は、抗生物質や外用ステロイド薬で十分管理可能との見解を示している。
「生存率向上の可能性広げる」
膵臓がんは主要ながん種のなかで最も死亡率が高いがんだ。米国がん協会によると、米国では今年、約6万8000人が膵臓がんと診断され、約5万3000人が死亡すると推定されている。
通常、がんが膵臓から遠隔転移した患者の5年生存率はわずか3%にとどまる。患者の約80%は進行期または転移期に診断される。
レボリューションのマーク・ゴールドスミスCEO(最高経営責任者)は、早期段階での投与やほかの治療法との併用に関する臨床試験を進めているとし、生存率を「大幅に向上させる」可能性を広げることを期待していると語った。
テキサス州ヒューストンに住むメンタ・スティーブ・ウォレスさん(74歳)は、そうした臨床試験に参加する患者の一人だ。彼は1月に腹部の痛みで病院を受診し、膵臓がんと診断された。
彼はテキサス大MDアンダーソンがんセンターを通じて、ダラクソンラシブを1次治療として使用する臨床試験に参加。2月12日に最初の投与を受けた。初期には吐き気や下痢、発疹といった症状が出たが「まったくひどくなかった」といい、現在は体調も良く「とても満足している」と話した。直近の検査では、腫瘍が46%縮小したことが確認された。
旅行好きのウォレスさんは、退職後に妻と海外旅行に行くことを計画していた。病気によって保留されていたが、先週、主治医から許可が出た。6月末からカリブ海にクルーズに出かけるという。
ファーストインクラス
ダラクソンラシブは、がんの増殖を促進するRAS遺伝子の変異を標的とするRAS(ON)阻害薬だ。新しいクラスの最初の薬剤となる。
G12と呼ばれる既知のRAS変異を有する患者での無増悪生存期間は、化学療法群の3.5カ月に対してダラクソンラシブ群では7.3カ月だった。この結果は、すべての患者集団でも同様だった。
G12変異を有する患者では、ダラクソンラシブ群の33.2%でがんが縮小または消失したのに対し、化学療法群では11.8%だった。全集団では、ダラクソンラシブ群で31.6%、化学療法群で11.2%だった。
一般的な副作用は口内炎、吐き気、下痢、発疹。重篤な副作用の発現率はダラクソンラシブ群43.6%、化学療法群57.5%。最も多かった重篤な副作用は発疹(14%)で、次いで多かったのは口内炎や口内の痛み・炎症(12%)だった。
ジェフリーズのアナリスト、ファイサル・クルシード氏は試験結果の発表前、重度の発疹の発現率が10%未満になることを期待していた。副作用により投与中止となった患者の割合は、化学療法群の11.2%に対してダラクソンラシブ群はわずか1.2%だった。
米FDA(食品医薬品局)は5月1日、同薬の拡大アクセスを認めており、承認に向けて迅速審査を検討している。
MDアンダーソンがんセンターの医師で試験の共同責任者を務めたシュバム・パント医師は、自身の患者の一人である熱心なゴルファーが、ダラクソンラシブ投与開始から1カ月で医療用麻薬への依存を減らしてゴルフを再開できたと明かし、「そういう患者はほかにも何人もいる」と話した。
(取材:Julie Steenhuysen、編集:Alistair Bell、翻訳:AnswersNews)





