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第一三共「オンコロジー世界トップ5」へ新中計…30年度に売上収益3兆円、8割近くをがんで稼ぐ体制に

更新日

穴迫励二

第一三共が2030年度に「売上収益3兆円以上、営業利益6000億円以上」を掲げる新たな中期経営計画を発表しました。ADC(抗体薬物複合体)を軸とするがん領域を大きく成長させる計画で、次世代を見据えた新薬の開発にも投資。35年には「オンコロジーで世界トップ5入り」を目指します。

 

 

がん領域売上収益2.4倍に拡大

新中計では、がん領域のさらなる強化を鮮明に打ち出しています。30年度の売上収益は25年度の1.4倍となる3兆円以上に設定していますが、そのうちがん領域は9540億円から2兆3000億円へと2.4倍に拡大させる計画。がん以外は1兆1690億円から7000億円に縮小します。25年度までに累計約2兆円を売り上げた「エンハーツ」と「ダトロウェイ」のADC2製品の成長に加え、後半には抗B7-H3 ADCイフィナタマブ デルクステカン(一般名、I-DXd)や抗CDH6 ADCラルドタツグ デルクステカン(同、R-DXd)も寄与します。

 

【第一三共 新中計の計数目標(2030年度)】〈項目/計数目標〉売上収益/3兆円以上|がん領域売上収益/2.3兆円以上|営業利益/6000億円以上|EPS/260円以上|配当/累進配当、DOE10%以上|【売上収益の構成】〈期間(年度)/構成〉25年度/がん領域45%|2030年度/がん領域77%

 

利益拡大に向けては、ADCの価値最大化に加え、業務効率化による利益創出力も強化します。AIを活用して生産性を向上させるほか、調達・外注構造の抜本的見直しを実施。5年間累計で2000億円のコスト最適化を図り、収益性を上げて成長投資に振り向けます。

 

研究開発費は段階的に増加させていく方針で、中長期的な成長の源泉として資金を投下します。ADCの既存製品・開発品では中計期間中に20以上の標的適応症について世界でスピーディーな上市を実現していくとし、ピーク時売上高の合計が20~60億ドルに達する臨床試験群のデータが毎年リードアウトされると予測します。現在注力する「5DXd ADC」はライフサイクルマネジメントを通じて価値最大を図りつつ、後続のDXd ADCである「DS-3939」「DS3790」などブロックパスターポテンシャルを有する初期開発品にも積極的に投資します。

 

研究開発に5年で2.9兆円

一方でプロジェクトの優先順位付けとポートフォリオ管理を徹底し、研究開発費の伸びを売り上げの成長率を下回る水準に抑制。30年度の対売上比率は20%を想定しています。

 

資金の配分では成長投資と株主還元へのバランスを重視します。期間中の研究開発費控除前営業キャッシュフローは3兆8500億円を予定。これに資産売却や資金調達を加えて原資を確保し、研究開発費に前中計から1兆円増の2兆9000億円、設備投資には7000億円を配分します。

 

新中計の期間は、その先の「35年ビジョン」を見据えた事業拡大期としても位置付けられます。同ビジョンでは「がん領域でグローバルトップ5」を掲げ、従来から目指してきた「トップ10入り」のさらに上位をうかがう意欲的な目標を設定しました。トップ5に向けては、英アストラゼネカや米メルクとの提携で培った事業ノウハウを生かし、自社で開発・商業化できる体制を構築。乳がんや肺がんの領域でリーダーシップを維持・拡大または構築していく考えです。

 

次世代担う創薬プラットフォームを同定

35年ビジョン達成に向けては、DXd ADCに続く新薬の開発がカギになります。中計期間中には、「BGT」(ブレークスルー・ジェネレーティング・テクノロジー)と呼ぶ独自の創薬技術から、次世代を担う創薬プラットフォームを特定。継続的な新薬創出を目指します。

 

BGTの候補には、ADC創薬のパラダイムシフトを目指すものや、マルチモダリティ研究から生まれた標的タンパク質分解誘導薬などがあります。免疫療法薬をペイロードとして搭載するADCは、STING経路を介して免疫系を活性化し幹細胞を排除。免疫記憶に基づく長期的な治療成績の改善を期待しており、「DC3610」(開発番号)の臨床第1相(P1)試験が進行中です。抗体改変技術を使ったマルチスペシフィック抗体やsiRNAなどの開発も行っています。

 

【第一三共 次世代創薬基盤(BGT)候補】〈BGT候補/開発品/開発段階〉新規の細胞傷害性ペイロード/―/27年度P1試験開始予定|免疫療法(IO)ペイロード/DS3610/P1試験実施中|抗体改変型ADC/―/27年度P1試験開始予定)|マルチスペシフィック抗体/DS2243/P1試験実施中|TPD molecule/DS9051/P1試験実施中|siRNA/―/26年度P1試験開始予定|※第一三共の中計発表資料をもとに作成

 

25年度で終了した前中計は、「売上収益1兆6000億円、うちがん領域60000億円以上」の計数目標をクリアしました一方、研究開発費控除前コア営業利益率(40%)やROE(16%以上)は未達でした。エンハーツやダトロウェイが好調に推移しましたが、26年3月期には開発の遅れなどに伴うADCの供給計画見直しで損失を計上し、営業利益が前期比31.0%減と大きく落ち込みました。

 

ダトロウェイ、肺がん1次治療の臨床試験に注目

昨年5月には3番手のADCとして期待していた抗HER3ADCパトリツマブ デルクステカン(HER-3DXd)について、非小細胞肺がんを対象に行ったグローバルP2試験で全生存期間に有意な改善が見られなかったとして米国承認申請を取り下げました。こうした開発の足踏みについて決算会見では、アナリストから先行きを不安視する声も聞かれました。新中計期間中に高成長を期待するダトロウェイは、今年後半から来年にかけて発表される非小細胞肺がん1次治療を対象とした臨床試験の結果に注目が集まります。

 

新中計では35年度までの持続的成長を実現するにあたり、克服すべき課題も示しています。抗凝固薬「リクシアナ」の特許満了や、アストラゼネカからのエンハーツの販売マイルストン受領終了、米国での鉄剤ビジネスの収益減少といったリスクを列挙。第一三共ヘルスケアをサントリーに譲渡したことも減収要因となります。さらに30~35年度にかけてはエンハーツの特許切れも控えます。ただ、こうした中でも第一三共は一貫した増収基調を見込んでおり、2030年代前半に「営業利益1兆円規模を目指せる位置に立つ」と意気込みます。

 

AnswersNews編集部が製薬企業をレポート

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