
(写真:ロイター)
[ロンドン ロイター]ノボノルディスクとイーライリリーによる肥満症治療薬をめぐる市場競争が法廷闘争に発展した。
ノボは7月21日、リリーが全米で展開している肥満症治療薬「ゼップバウンド」と糖尿病治療薬「マンジャロ」の広告キャンペーンが虚偽広告にあたるとして、同社を米ニュージャージー州の連邦地裁に提訴した。リリーの広告が同社製品の承認済の最高用量とノボの「ウゴービ」「オゼンピック」の低用量を比較していると主張。ノボがより高い減量効果を得られるとする高用量を意図的に除外したと訴えている。
製薬企業が特許侵害をめぐって法廷で争うことは多いが、虚偽広告による訴訟は珍しい。
「悪質かつ不当」「正当性を確信」
ノボは訴状で「リリーは、同社製品の最高用量とノボ製品の低用量を比較した過去の臨床試験のデータを意図的に引用しており、その広告は悪質かつ不当であり虚偽だ」と主張している。
一方、リリーは、広告は両社の製品を直接比較した「SURMOUNT-5試験」の結果に基づいており、その正当性を確信していると反論している。2024年に完了した同試験では、ゼップバウンドの10mgまたは15mgを投与した患者と、ウゴービの1.7mgまたは2.4mgを投与した患者を比較している。高用量のウゴービ(7.2mg)は今年3月に米国で承認された。
リリーの広報担当者は声明で「ノボは自社製品の真の価値で競うのではなく、裁判所に対して試験結果の周知を差し止めるよう求めている」とノボを批判。「われわれは今後も科学に焦点を当て、訴訟に断固として対応していく」と述べた。
ノボとリリーは、米国の肥満症治療薬市場での覇権をめぐって激しい争いを繰り広げている。アナリストは、米国の肥満症治療薬市場が30年までに1000億ドル以上の規模になると予測している。
米国は、製薬企業が消費者に直接、処方薬の宣伝を行うことを認めている数少ない国の1つだ。製薬企業はテレビなどの広告に年間数十億ドルを費やしている。
ノボはウゴービで肥満症治療薬市場に先陣を切って参入したが、後発のゼップバウンドにリードを奪われている。昨年、CEO(最高経営責任者)を交代し、業績の下方修正を複数回発表したあと、ウゴービの経口薬を投入して反撃を開始。リリーも経口薬を発売したが、ウゴービの経口薬は強い需要を維持している。
撤回と訂正広告求める
ノボは裁判所に対し、広告の撤回と訂正広告の実施を命じるよう求めている。リリーが自主的に広告を取り下げない場合は、仮差し止め命令を求める方針だ。
ノボは、広告によってリリーが得た利益を含む損害賠償も求めている。ノースイースタン大ロースクールのアレクサンドラ・ロバーツ教授は「ノボが不当だとする広告キャンペーンによるリリーの追加利益、あるいは自社の逸失利益を証明できれば、市場規模から考えると損害賠償は相当な額になる可能性がある」と指摘。「ただ、今年3月のウゴービ高用量の承認からそれほど期間がたっていないことを考えると、損害額が制限される可能性もある」との見方を示す。
ノボの株価は提訴した21日午後の取引で2%下落した一方、リリーの株価はわずかに上昇して0.5%高となった。
ノボは、ウゴービ高用量の米国承認後、4月にリリーに対して広告の停止を求める警告書を送付している。ノボの法務顧問を務めるジョン・クックルマン氏によると、リリーは警告書に返答せず、広告に免責事項を追記したが、ノボはこれを不十分だとしている。リリーの広告キャンペーンは大規模で、警告書を受けて広告が修正された4月下旬以降に限っても、7億回以上表示されている。
クックルマン氏は、リリーの広告では、両剤の減量効果はゼップバウンドが約50ポンド、ウゴービが約33ポンドとされているが、両剤の承認された最高用量を直接比較した臨床試験は行われていないと指摘。同氏によると、最高用量を用いた後期臨床試験の平均減量効果は、ゼップバウンドが約48ポンド、ウゴービが約47ポンドだったという。
(取材:Maggie Fick/Michael Erman/Blake Brittain/Jonathan Stempel/Christy Santhosh、編集:Caroline Humer/Nia Williams/Susan Fenton/Mark Porter、翻訳:AnswersNews)





