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免疫グロブリン製剤、高まる増産機運…国が「自給率100%」目標、メーカーは工場新設や製法改良

更新日

前田雄樹

感染症や免疫疾患の治療に使われる免疫グロブリン製剤の増産機運が高まっています。需要が拡大する一方で生産は伸び悩んでおり、かつて9割以上だった国内自給率は2025年度に6割を切りました。国は自給率100%を目指して増産を後押しする方針で、最大手の日本血液製剤機構が新工場の建設を発表。KMバイオロジクスは製造改良によって収率を改善した新製剤を28年に市場投入します。

 

 

「生産能力は限界」自給率は低下

免疫グロブリン製剤の国内自給率は18年度まで95%前後で推移していましたが、25年度には59.4%まで低下。26年度はさらに下がって54.4%となる見込みです。18年度から25年度にかけて全体の供給量は3割増えましたが、このうち国産は2割減少。輸入はこの間、11倍に増加しました。

 

【免疫グロブリン製剤の供給量と国内自給率】単位:万本、%|〈年度/国内血漿由来/輸入血漿由来/国内自給率(右軸)〉11/157.9/7.8/95.3|12/161.9/7.4/95.7|13/166.7/7.1/95.9|14/175.2/7.7/95.8|15/185.3/8.6/95.6|16/181.9/9.9/94.9|17/200.9/11.0/94.8|18/219.2/11.2/95.1|19/219.0/20.4/91.5|20/202.0/20.6/86.8|21/224.6/36.7/86.0|22/213.0/44.3/82.8|23/213.1/69.8/75.3|24/197.2/92.5/68.1|25/182.8/125.1/59.4|26/180.0/151.0/54.4|※供給量は12.5g換算本数。25年度は速報値、26年度は見込み。厚生労働省の資料をもとに作成

 

免疫グロブリン製剤は近年、適応症の拡大を背景に需要が拡大しています。従来は急性期治療で使われることが多かったものの、対象疾患の広がりとともに定期的に投与されるケースも増加。使われ方の変化も需要増に拍車をかけています。

 

低い利益率、設備投資難しく

国内では一般社団法人の日本血液製剤機構(JB)、武田薬品工業、MeijiSeikaファルマ子会社のKMバイオロジクスの3社が免疫グロブリン製剤を製造していますが、「生産能力は限界で、長年にわたってフル操業を続けている」(JBの中西英夫理事長)。各社の工場は稼働開始から40年以上が経過し、老朽化が進む一方、免疫グロブリン製剤は一般的な医薬品と比べて原価率が高いため利益を出しづらく、採算性の低さが設備投資を難しくしています。

 

25年には武田薬品の成田工場(千葉県成田市)がトラブルで稼働を一時停止。他社製品による代替供給や緊急的な輸入増でしのぎました。同社は「多くの医療機関への供給が継続され、大きな混乱はなかったと認識している」としていますが、MeijiSeikaファルマの永里敏秋社長は「いつ何時、設備にトラブルが起こるか。保証の限りではない」と危機感を強めます。

 

JBが新工場、生産能力倍増

輸入依存には有事に供給が途絶するリスクがあります。国は6月30日にまとめた成長戦略の原案で「国内自給率100%を目指す」と掲げ、原料血漿確保体制の強化や製造設備の整備促進を図ると明記。戦略17分野の官民投資ロードマップでは、ワクチンや抗菌薬などとともに40年度までに官民で7.2兆円の投資を想定しています。

 

JBは7月7日、免疫グロブリン製剤をはじめとする血漿分画製剤を増産するため、北海道千歳市に新工場を建設すると発表しました。既存2工場の増強も含めて40年度までに約2000億円を投じ、原料血漿の処理能力を現在の2倍に引き上げます。

 

「国の支援に大きな期待」

血漿分画製剤の原料は日本赤十字社が献血で集める血漿で、国の需給計画に基づいてメーカー3社に配分されます。JBは原料血漿全体の55%にあたる66万リットルの配分を受けており(25年度)、一連の設備投資によって35年度には130万リットルを受け入れられるようにする計画。免疫グロブリン製剤の国内需要は40年度にかけてさらに3割増えると予測されますが、JBはその半分以上を供給することをめざします。

 

【血漿分画製剤の原料配分(2025年度)】|国内の献血量約220万リットルの用途:輸血用45%(約100万リットル)、原料用55%(約120万リットル)。原料用は免疫グロブリン製剤、アルブミン製剤、血液凝固因子製剤などに使用|〈社名/割合/配分量/製造拠点〉日本血液製剤機構/55%/66万リットル/北海道・千歳、京都・福知山、北海道・千歳(計画)|武田薬品工業/25%/30万リットル/千葉・成田、大阪(計画)|KMバイオロジクス/20%/24万リットル/熊本|※地名は製造拠点。点線は計画。厚生労働省の資料などをもとに作成

 

JBの中西理事長は、工場新設によって「免疫グロブリン製剤の安定供給と国内自給率100%の達成に大きな貢献ができる」と強調。「官民投資ロードマップに自給率100%の目標が盛り込まれ、国の支援に大きな期待が持てる」と話します。

 

JBの中西英夫理事長の写真JBの中西英夫理事長

 

武田薬品は大阪工場(大阪市)内に血漿分画製剤の生産設備を新設する計画を23年に公表しましたが、建設コストの高騰により計画を再検討すると25年9月に発表。当初1000億円規模としていた投資予定額は24年度末時点で1530億円に膨らみ、その後の見直しでコストがさらに増加する見込みとなりました。24年度末時点では25年度の着工、29年度の完成を予定していましたが、現在スケジュールは宙に浮いています。

 

同社のジュリー・キム社長CEO(最高経営責任者)は6月の就任会見で「われわれは血漿分画製剤の国内製造継続に100%コミットしている。官民投資ロードマップの計画への影響は分析中で、新拠点への投資や既存拠点への投資を検討している」と話しました。

 

KMバイオ、収率20%向上の新製剤

KMバイオロジクスは、製造の改良によって収率を20%改善した新たな免疫グロブリン製剤の開発を進めています。現在、臨床第3相(P3)試験を行っており、26年度中の申請、28年度の発売を計画。「供給量の増加に貢献できる」としています。

 

同社の既存の免疫グロブリン製剤は有効成分濃度が5%の凍結乾燥製剤ですが、新製剤は10%に高濃度化した液状製剤。投与量・投与時間が少なくて済むとともに、投与時の溶解の手間が省け、患者や医療従事者の負担軽減につながります。

 

武田薬品も今月、10%の液状製剤を発売。医療現場のニーズは10%製剤のほうが圧倒的に大きく、今後は製造を10%製剤に集約して製造の効率を高めます。従来品の5%製剤は薬価削除する予定です。JBも収率を向上させる新たな製法を新工場に導入します。

 

原料血漿の確保も課題に

免疫グロブリン製剤の国内自給率向上に向けては、原料血漿の確保も課題です。国内の献血者数はここ数年、年間500万人程度で安定していますが、少子高齢化が進むなかで減少が懸念されています。

 

MeijiSeikaファルマの永里社長は「国内自給率向上は、製造設備があれば済むという問題ではない。献血量をどう増やしていくかは大きな課題で、国としても相当、力を入れていかないといけない」と指摘。JBの中西理事長も「原料血漿の確保と製造は車の両輪。国も官民投資ロードマップで原料血漿確保体制の強化をうたっている」とし、国の取り組みに期待を示しました。

 

AnswersNews編集部が製薬企業をレポート

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