
主要製薬企業10社の直近の決算を集計したところ、今期の足元の国内売上収益は前年を2%程度上回って推移していることが分かりました。3月期決算7社(4~6月期)と12月期決算3社(1~6月期)の国内業績は増収が6社、減収が4社。新製品の成長や主力製品の特許切れ、販売提携終了に伴う売り上げ減少が明暗を分ける要因となりました。
INDEX
アステラスやエーザイなど増収
3月期決算7社の国内売上収益は計4610億円で、前年同期比0.5%減と振るいませんでした。このうち増収は4社。伸び率が最も高かったのは塩野義製薬で、鳥居薬品を買収したことで前年同期の約2.4倍に膨れました。売上収益335億円のうち188億円が鳥居製品で、田辺ファーマから獲得した筋萎縮性側索硬化症治療薬「ラジカット」も18億円の貢献。呼吸器感染症関連薬の減少を補いました。事業の構造は様変わりし、岩崎利信医薬事業本部長は「安定した成長を実現している」と言います。
アステラス製薬は、既存品の骨粗鬆症治療薬「イベニティ」や抗がん剤「イクスタンジ」が増収分107億円のうち97億円を占めました。グローバル展開する5つの重点戦略製品のうち、国内で販売する4製品は金額的には大きく伸びていません。製品ごとの通期予想は非開示ですが、4.1%減となった抗がん剤「パドセブ」は市場拡大再算定で薬価が11.8%引き下げられたことが要因で、「実需は想定通り」(同社)としています。世界市場との比較では、為替の影響もあります。
エーザイも関節リウマチなどの治療薬「ジセレカ」や不眠症治療剤「デエビゴ」といった既存主力品が堅調。アルツハイマー病治療薬「レケンビ」は通期予想に対する進捗率が18.4%にとどまりますが、同社は「ほぼ計画通り」としており、第2四半期以降の成長を期待します。
住友ファーマは糖尿病治療薬「エクア/エクメット」の販売移管で42億円の売り上げを失った一方、共同販促品が収益を支え始めています。ヤンセンファーマと提携する統合失調症治療薬「ゼプリオン/ゼプリオンTRI」は今年から売り上げの自社計上がスタート。ノボノルディスクファーマと共同販促する肥満症治療薬「ウゴービ」は、6月に国内初となる「肝硬変を伴わない代謝機能障害関連脂肪肝炎(MASH)」の適応を取得しました。MASHの国内患者数は約370万人とされています。
小野薬品「フォシーガ」提携終了で大幅減
減収となった3社では、小野薬品工業が34.8%減。SGLT2阻害薬「フォシーガ」の販売契約終了で前年同期に251億円あった同薬の売り上げを失ったことが響きました。回復の兆しを見せていた武田薬品工業は3.9%減と勢いがつきません。消化器領域で「エンタイビオ」や「タケキャブ」が伸びていますが、がん領域が11.2%減と低迷しています。
第一三共は、抗凝固薬「リクシアナ」が4月の薬価改定で持続可能性特例価格調整の適用を受け、薬価が19.7%引き下げられました。後発医薬品の参入もあって国内全体では通期で554億円(11.4%)の売り上げ減少を見込みますが、主力品の多くは進捗率が高めで、第1四半期時点で期初予想から55億円上方修正しています。

中外や大塚も好調
12月期決算3社の国内売上収益は4.0%増で、進捗率は48.3%。6.5%増となった中外製薬は、スペシャリティ領域(1205億円)がオンコロジー領域(1174億円)を逆転しました。新型コロナウイルス治療薬「ロナプリーブ」の政府買い上げを除くと、1~6月期としては初めてとみられます。通期予想ではオンコロジー領域が上回るものの、進捗率は45.3%で、スペシャリティ領域の50.5%とは差があります。

大塚ホールディングス(HD)の医療関連事業は国内で4.1%の増収を確保しました。抗精神病薬「レキサルティ」は市場拡大再算定で15%の薬価引き下げを受けましたが、それを跳ね返して20.6%の増収。通期予想を5億円ほど上乗せしました。後発品参入による薬価の累積控除があった利尿薬「サムスカ」も、通期予想を70億円から130億円に大きく上方修正しています。後発品が4月に適応追加した常染色体優性多発性嚢胞腎での使用が浸透していないためで、4~6月期の実績を踏まえて判断しました。
協和キリン、国内低迷に歯止めかからず
協和キリンは薬価改定の影響を受けて6%の減収となりました。長期的な低迷に歯止めがかかっておらず、国内売上収益比率は22%まで低下しています。くる病などの治療薬「クリースビータ」や腎性貧血治療薬「ダーブロック」は売り上げを伸ばしており、クリースビータは専任MRによるプロモーション強化や疾患啓発活動が奏功して15%増。ダーブロックは圧倒的な領域内シェアを維持しつつ19%増の82億円まで伸び、同社の国内トップ製品に成長しました。
一方でG-CSF製剤「ジーラスタ」は、薬価改定やバイオシミラーの浸透で22%減となり、進捗率も44%と振るいません。市場拡大再算定で約40%の薬価引き下げとなった血小板造血刺激因子製剤「ロミプレート」も13%減に沈んでいます。同社は昨年、2年連続となる希望退職者を募り、432人が応募しました。
IQVIAによると、26年1~3月期の国内市場は5.2%増で、1~3月期としては過去5年で最も高い伸びとなりました。4~6月期は3.7%増とやや鈍化しましたが、1~6月期では4.5%増で維持しています。主要10社の足元の国内業績は市場全体の成長率を下回っており、外資の勢いが勝っていると言えそうです。
AnswersNews編集部が製薬企業をレポート
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