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アドボカシーを仕事にして丸3年、節目に考えた「製薬企業1社だけで解決できない課題にどう向き合うか」【コラム】

更新日

黒坂宗久

アステラス製薬でアドボカシーの仕事を始めて、この6月で4年目に入りました。振り返るとこの3年間は私にとって、アドボカシーをいかに自分の仕事にしていくかという作業の連続だったように思います。

 

会社でアドボカシーの仕事をしながら、このコラムでも何度かアドボカシー活動について書いてきました。アドボカシーとは何なのか、世の中に十分知られているとはまだ思っていません。だからこそ私は、この仕事を、何かを一方的に訴えることではなく、関係者と課題を共有し、議論し、一緒に課題に向き合う仲間を増やしていく営みとして捉えています。

 

患者さんに必要な医療を持続的に届けていくには、制度、医療現場、企業の活動、社会の受け止めなど、さまざまな要素がかみ合う必要があります。そのために各要素の接点を広げていくことがアドボカシーの役割だと思っています。

 

アドボカシー活動を紹介する資料ができました

アステラス製薬のアドボカシー部では最近、その活動を対外的に紹介する資料を初めて作成しました。「医療のエコ活動」「大学との連携」「Innovation for NEW HOPEプロジェクト」「政産官学による研究会」など、私たちが携わっている活動をまとめています。私たちが何を考え、どんなことに取り組んでいるのか、資料を使って伝えられるようになったことは、私にとって小さくない出来事でした。

 

アドボカシーの仕事は、外から見るとその輪郭が見えにくい面があります。何を目指しているのか、なぜこのような活動が必要なのか、どんな相手とどんな対話をしているのか――。そうしたことを、資料として手渡せるようになった、体系的に言葉で説明できるようになったということ自体がこの3年間の積み重ねを表しているように感じます。

 

医療をとりまく課題は複雑さを増しています。とりわけ、先端医療、再生医療、革新的医薬品などの分野では、技術、制度、社会の理解などの要素が密接に関わっており、製薬企業だけで前に進められることには限界があります。患者さんに医療を持続的に届けていくには、企業だけなく、行政、政治、医療関係者、アカデミア、患者さんや市民の皆さんなど、異なる立場の人たちが課題を共有し、一緒になって考えていくことが欠かせません。立場が違えば見える景色も違います。それでも、対話を続けることで相互理解が進み、少しずつ同じものが見えてくるはずです。逆に言えば、異なる立場の人が互いを理解し、認識を同じくするには、対話を重ねるしかないと思っています。

 

私自身、アドボカシー活動に関わる中で、課題について一緒に議論し、行動しようとする人が少しずつ増えていくことの意味を実感する場面に立ち会ってきました。すぐに大きな変化を起こすことはできません。しかし、立場を超えた対話によって問題意識を共有し、それが次の一歩につながっていくことの積み重ねが、より良い社会への道になるのだろうと確かに思えるようになりました。

 

昨年8月のコラムで「誠実さを基軸に、一貫した言葉と行動を通じて得た信頼が、思いもよらない反応を生み、やがて社会へのインパクトにつながっていくのではないか」と書きました。対話や信頼の蓄積は、すぐに目に見える成果にならなくても、次の協働や行動の土台になっていくのだと思います。成果が目に見える形になる前の、まだ小さな変化の段階にこそ、アドボカシーの仕事の本質があるのではないかと感じています。

 

アドボカシーの仕事は派手ではありませんし、すべてがわかりやすく外から見えるものでもありません。だからこそ、丁寧に言葉にし、対話を重ね、関わる人を少しずつ増やしていく必要があります。そうした対話は、社外のみならず社内においても欠かせません。

 

4年目も、答えを急ぐのではなく、課題に向き合い、ともに考え、必要な行動につなげていく人たちとの関係を育てていきたいと考えています。そうした営みの先にこそ、患者さんに必要な医療が持続的に届く社会があるのではないかと思います。こうしたテーマに関心をお持ちの方がいれば、ぜひ対話できると嬉しいです。

 

※コラムの内容は個人の見解であり、所属企業を代表するものではありません。

 

黒坂宗久(くろさか・むねひさ)Ph.D.。アステラス製薬アドボカシー部所属。免疫学の分野で博士号を取得後、約10年間研究に従事(米国立がん研究所、産業技術総合研究所、国内製薬企業)した後、 Clarivate AnalyticsとEvaluateで約10年間、主に製薬企業に対して戦略策定や事業性評価に必要なビジネス分析(マーケット情報、売上予測、NPV、成功確率、開発コストなど)を提供。2023年6月から現職でアドボカシー活動に携わる。SNSなどでも積極的に発信を行っている。
X(Twitter):@munehisa_k
note:https://note.com/kurosakalibrary
LinkedIn:https://www.linkedin.com/in/mkurosaka/

 

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