
3月18日、私が関わるアステラス製薬のアドボカシー活動について、次のようなプレスリリースが発表されました。
アステラス製薬と明治安田 最先端の医療が必要な人に届く持続可能な社会の実現を目指した協業に関する基本合意書を締結
基本合意の概要は以下の3点です。
・健康増進や疾患予防に関する啓発活動
・最先端の医療の普及やアクセス向上への貢献
・その他の健康や医療・ヘルスケアに関する課題解決の取り組み
プレスリリースを見て、「なぜこの2社が?」と感じた方もいたかもしれません。しかし、私にとっては意外な組み合わせでもなく、これまで私たちが積み重ねてきたアドボカシー活動の延長線上にあるものだと捉えています。
アドボカシー活動については、特にここ2年ほど、このコラムで何度か取り上げてきました。活動の意味やゴール、1企業が取り組む意義、市民との実践――。いろいろなことを書いてきましたが、通底するのは、アドボカシーは単なる発信や要望ではなく、社会課題の解決をともに目指す「仲間づくり」だという考え方です。政治・行政、医療関係者、患者さん、市民、産業界など、多様なステークホルダーと対話し、目指したい社会像を共有しながら、現実の課題に向き合っていく。その土台になるのは、一方的な主張ではなく、直接会い、丁寧に関わり、信頼と相互理解を積み重ねることだと思っています。
それぞれの強みを持ち寄る
患者さんに医療を持続的に届けていく。言葉にするとシンプルですが、これは製薬企業だけで実現できることではありません。健康増進、予防、疾患理解の促進、最先端医療へのアクセス向上、地域での対話の場づくり。やるべきことは山ほどあり、それらを前に進めていくには、業界の中だけではなく、異なる業種の企業や地域のさまざまな担い手が、それぞれの強みを持ち寄って連携していくことが欠かせません。
その意味で、明治安田生命との連携には大きな意味があります。両社はこれまでも、地域でのイベントなどを通じて協働を重ねてきました。そうした地道な実践の中で、お互いが何を大切にし、どのような社会を目指しているのかを確認し合い、少しずつ信頼を深めてきた経緯があります。そうした積み重ねが、今回の協業につながったと考えています。
そしてもう1つ重要だったのは、こうした取り組みの意義を企業トップが理解し、後押ししたことです。現場で育まれた信頼と、経営の理解。その両方がそろって初めて、連携はまた一歩、新たな段階へと進みます。
私は以前、このコラムで「誠実さを基軸に、一貫した言葉と行動を通じて得た信頼は、思いもよらないイノベーティブな反応を生み、そこから社会に対するインパクトを出していける」と書いたことがあります。今回の協業は、まさにその実例だと感じています。1社だけでできることには限りがあります。しかし、あるべき社会像を共有できる仲間が増えれば、取り組みは点では終わらず、線になり、やがて社会的な流れへと育っていきます。
今後も、実際にアドボカシー活動に触れ、体験していただける機会を広げていきたいと考えています。この取り組みに少しでも関心を持ってくださる方、何か一緒にできるのではないかと感じてくださる方がいれば、とても嬉しいです。仲間が増えること自体が、社会を変える力になります。
最後に、これまで私が書いてきたアドボカシー活動に関するコラムをまとめています。ご覧いただき、興味を持っていただけたら、ぜひお気軽にご連絡いただければ幸いです。
これまでのアドボカシーに関係したコラム
・1年間「アドボカシー活動」をやってきて今思うこと(2024年6月)
・学会へのブース出展で再認識したアドボカシー活動の意義(2024年8月)
・「アドボカシー」と「ロビイング」は何が違う?(2025年6月)
・市民と取り組む「医療のエコ活動」私たちが行っているアドボカシー活動の実例(2025年7月)
・アドボカシー活動、個社が取り組むメリットとは?(2025年8月)
※コラムの内容は個人の見解であり、所属企業を代表するものではありません。
| 黒坂宗久(くろさか・むねひさ)Ph.D.。アステラス製薬アドボカシー部所属。免疫学の分野で博士号を取得後、約10年間研究に従事(米国立がん研究所、産業技術総合研究所、国内製薬企業)した後、 Clarivate AnalyticsとEvaluateで約10年間、主に製薬企業に対して戦略策定や事業性評価に必要なビジネス分析(マーケット情報、売上予測、NPV、成功確率、開発コストなど)を提供。2023年6月から現職でアドボカシー活動に携わる。SNSなどでも積極的に発信を行っている。
X:@munehisa_k |




