
(大鵬薬品工業提供)
大塚ホールディングス(HD)傘下で、主にがん領域に注力する大鵬薬品工業。北島工場は、徳島阿波おどり空港(徳島空港)から車で20分ほどの場所にある同社のグローバル生産拠点です。約27万2000平方メートル(東京ドーム約5.8個分)という広大な敷地で、世界に向けて主力の抗がん剤を生産しています。
年間7000~8000万錠を生産
北島工場は、大鵬薬品の4つの工場のなかで最も新しい工場です。世界初の抗がん剤OD錠をはじめ、グループの業績を支える主力品をグローバルに安定供給することを目的に2014年に稼働を開始しました。
日米欧3極のGMPに対応し、世界各国に製品を供給しています。同社の海外売上比率は国内より高く、北島工場で生産している製品のなかには8割が海外へ輸出されているものもあります。

【上段】北島工場管理棟の外観【左下】同棟の内観【右下】敷地内の遊歩道から見た工場建屋。手前は厚生棟
北島工場は年間1億錠(日勤)の生産能力を持ち、現在は年間7000~8000万錠を生産。固形剤棟には有核型口腔内崩壊錠(有核錠)を製造する打錠機と、マルチに活用できる打錠機があり、2製品を製剤化から手がけているほか、1製品の検査・包装を行っています。
有核錠は、高活性成分である有効成分を内部に封じ込めた抗曝露型のOD錠。外力に耐えうる強度と崩壊性を兼ね備えた外殻で覆うことで、有効成分の飛散防止と速やかな崩壊性を両立しています。専用の打錠機は内核と外殻をワンサイクルで作ることができるよう設計されています。

【左上】固形剤棟。従業員は手前の管理棟と固形剤棟をつなぐ渡り廊下を通って持ち場に向かう【右上】治験薬製造棟(CTM棟)。固形製剤の製造設備を備え、注射剤の包装にも対応【下段】厚生棟には食堂も(提供写真)
固形剤棟の施設中央には中間製品倉庫を整備し、自動搬送で人とモノの動線を分離。日々の生産活動は固形剤棟の東側で行っており、西側は今後の拡張に備えているといいます。
敷地西側には2016年に建てられた治験薬製造棟(CTM棟)があります。CTM棟も固形剤棟と同様に高度な封じ込めを行っており、多品目にグローバルで対応できる環境を構築。臨床試験の進捗や計画に応じて複数の品目を製造しています。
グリーンファクトリーがコンセプト
グリーンファクトリーをコンセプトとする北島工場。▽Global▽Relax▽Ecology▽Economy▽Neighbor――の頭文字を組み合わせた「GREEN」を意識して運営しているといいます。「Ecology」の一環として、太陽光発電や、工場の北側を流れる旧吉野川からくみ上げた水を浄水する水処理施設も整備しています。
物流の自動搬送をはじめとする機械化・自動化は「Economy」の取り組みの1つ。2014年の稼働当初から北島工場で勤務する吉田隆マネージャーは、「もともと少人数で稼働できる工場を意図し、設備レイアウトなどを最適化しました。それが結果として、従業員にとっても無理のない環境につながっています」と話します。製造部門では、包装を除く各工程に2人配置する体制を敷いており、日勤のみで生産活動を実施。品質部門や間接部門も含め、工場では約100人が働いています。
DX化も進めており、製造課の藤田宏一郎さんは「施設の予知保全を一番に取り上げています。モーターなどに振動センサーを取り付け、故障前の小さな兆候をAIで解析するテストを進めています」。故障の未然防止によって「止まらない工場」を実現するとともに、設備資源を最大限に活用することを目指しています。日常点検の効率化に向けては、精製水のモニタリング計器のデジタル化も進めているといいます。
同工場で製造に関わる約40人のうち、半数は新卒で入社した20代の社員。日々のOJTやスキル管理に加え、他部署を見学したり、設備メーカーを招いて機器の構造やトラブル対応を学んだりといった実践的な取り組みを活発に行っています。
職責や年次に応じて本社や大塚HDが提供する研修も数多くあり、英語やグローバルリーダーシップを育むプログラムも用意されています。「e-learningも含め、学ぶ機会はたくさんあります」と話すのは工場長の尾形哲夫さん。「受けてみてはと背中を押すこともありますが、やるやらないを決めるのは本人」と話します。

【左上】水処理施設【右上】工場長の尾形さん。製造課全メンバーとのキャリア面談も行うという【左下】吉田さん。稼働当初の製造課メンバー7人のうち1人【右下】藤田さん。一般用医薬品の工場、生産技術部門を経て北島工場へ異動した。後ろの絵画は陶板
「親しみやすい存在」として
広大な敷地には、隣接する今切川に沿って遊歩道を整備。約560本の桜の木が植えられ、春には美しい桜並木が見られます。遊歩道は、平日の就業時間帯は地域の人に向けて常時開放されていますが、桜が咲く時期には夜間も開放され、散歩や花見などで多くの人が訪れるそうです。
尾形さんは「工場って一般的に近寄りにくいですが、広く開放することで地域にとって親しみやすい存在になれればと考えています」と話します。
固形剤棟内の見学通路もコーポレートカラーを基調にした落ち着いたデザインで、美術館と見まがうような空間です。こちらも地域住民から学会まで、幅広い層に開放しているといいます。大鵬薬品のなかでも最も開かれた工場であり、地域の祭りにも積極的に参加しています。

【上段】桜が咲く遊歩道。地域住民が歩く姿も見られた【下段】近隣の小学生や保育園児が訪れた際の写真(提供写真)





