
免疫領域を中心に製品の適応拡大で業績を伸ばすアッヴィ。抗TNFα抗体「ヒュミラ」の特許切れを、同じ免疫領域で適応を広げる製品群がカバーします。2029年までの5カ年計画で掲げる「売り上げ倍増」「国内トップ10」に向け、ポートフォリオを加速させるとともに既存製品の価値最大化を図ります。
適応拡大進む「リンヴォック」「スキリージ」
グローバルメガファーマが多様なモダリティで手広く新薬開発を進めるのに対し、アッヴィはライフサイクルマネジメントによって成長してきました。かつて主力品だったヒュミラも幅広い疾患に適応を広げたことで大型化。21年にバイオシミラーが参入しましたが、その減収分をほかの主力品でカバーし、業績は回復基調にあります。
ディアゴ・カンポス・ロドリゲス社長は6月2日に開いた事業説明会で、25年1月~26年5月の直近約1年半で11の申請を行い、6つの承認を取得したことを明らかにしました。免疫領域の「リンヴォック」「スキリージ」、血液がん治療薬「ベネクレクスタ」などの適応拡大によって継続的な成長を見込みます。28年までの今後3年間でさらに22の申請を計画しており、承認後もエビデンス創出への投資を継続します。

JAK阻害薬のリンヴォックは関節リウマチなど8つの適応症を持ち、若年性特発性関節炎、円形脱毛症、尋常性白斑への適応拡大を申請中。高安動脈炎などでも開発が進んでいます。同疾患は、大動脈やその主要分枝に炎症が生じる原因不明の血管炎で、国内患者数は5000人程度。欧米には患者が少なく、日本主導で開発を進め、新型コロナによる試験の遅れを経て年内申請に向けて準備段階にあります。
片頭痛薬「アクイプタ」発売
25年は新薬の発売はありませんでしたが、今年4月に片頭痛発作の発症抑制を適応とする「アクイプタ」を発売。ピーク時に245億円の売り上げを予想します。急性期治療の適応でも申請中で、月経時片頭痛への適応拡大に向けた臨床第3相(P3)試験も進行中。ニーズに応じた使い分けを可能にします。
グローバルでは大型のM&Aも行っており、外部のイノベーションも取り込んでパイプラインを強化。買収やライセンス契約、提携は24年以降だけで20件を超えます。このうち、25年の米キャプスタン・セラピューティクス買収では、In vivo CAR-T細胞療法「ABBV-619」を獲得。自己免疫疾患の治癒を目指す治療法として注目されています。
ABBV-619は「免疫リセット」という新たなアプローチで、自己免疫疾患の原因となる自己反応性B細胞をCAR-T細胞によって除去し、その後、正常なB細胞によって免疫系を構築し直します。「コンピューターに例えると、一度システムを初期化して正常な状態に再構築するようなもの」(藤野忠広開発本部長)です。
従来のCAR-T療法は患者から細胞を採取して工場で加工し、再び患者の体内に戻しますが、ABBV-619はCARをコードするmRNAを投与することで体内でCAR-T細胞を生成。mRNAを使うため作用は一過性で、がん化のリスクも減らせるといいます。まだ海外PIの段階で国内開発のスケジュールは見通せませんが、完治に至らないことが多い自己免疫疾患の克服に向けて実用化を目指します。

5カ年計画の目標達成に向け順調な進捗をアピールしたアッヴィ日本法人のロドリゲス社長(6月2日の事業説明会で)
25年売上高は1910億円
アッヴィの25年の日本の売上高は前年比13.5%増の12億7400万ドルでした。日本円では約1910億円(1ドル=149.71円換算)となります。これには米国本社が提携先を通じて日本で販売する製品も含まれます。より経営実態に近い決算公告では24年が1297億円でしたが、25年は開示されていません。

ヒュミラ特許切れからの堅調な業績回復を踏まえ、同社は24年に「今後5年以内に売上高2000億円(決算公告ベース)を目指す」(ジェームス・フェリシアーノ前社長)と表明。ロドリゲス氏就任後の25年には5カ年計画を策定し、「29年までに売上高倍増」の目標を打ち出しました。さらに今年は、29年の目標売上高を米本社による提携先への販売分も含めて3000億円と具体化するとともに、国内トップ10入りを目指すと宣言しました。
25年のグローバル売上高は612億ドルで5位でした。日本の12億7400万ドルは世界の2%で、世界市場全体における日本のシェアに届いていません。ロドリゲス氏はその理由について▽米国などの主要市場と比べると製品数が少ない▽薬価の水準が低い―と説明し、展開する領域で日本のシェアが劣ることはないと強調しました。
片頭痛薬市場の拡大にも期待
29年に向けた最大の成長ドライバーは免疫領域で、主力のリンヴォックとスキリージがシェアを高めると見通しています。25年の免疫領域は、2剤の合計売上高が前年から32.4%増加。血液がんは、ベネクレクスタと「エプキンリ」(ジェンマブが販売し、アッヴィはコプロ)の合計で34.7%増でした。
重点領域すべてでトップ3入りも掲げていますが、ロドリゲス氏は「多くの領域でその目標に近付いている」と強調。診断や治療に浸透の余地が大きく残る片頭痛の市場成長にも期待しました。




