
後発医薬品と長期収載品をめぐる製薬各社の展開が一段と慌ただしくなってきました。後発品を中心に生産や販売を集約する動きが加速しており、長期収載品の売却も活発。事業としての収益性をにらみつつ、安定供給体制の強化や他事業への経営資源集中など、それぞれの思惑が事業再編に拍車をかけています。
杏林の後発品事業はダイトなどの新会社に
後発品業界の再編は、厚生労働省の検討会が2024年5月にまとめた報告書を契機に本格化しました。「5年程度の集中改革期間」で成果を出すことが求められており、Meiji Seikaファルマを中心とする「コンソーシアム構想」や投資ファンドも絡んだ品目統合などが進展。今年に入ってからは、東和薬品が後発品と新薬の垣根を越えて大塚製薬と生産の協業に乗り出しました。
関連記事:東和薬品、大塚製薬との「異色の協業」で目指すもの―長期収載品と後発品「特許満了医薬品」として安定供給
国の政策の主眼が使用促進から安定供給と移るなか、企業側の取り組みも、少量多品目の非効率な生産の改善と、薬価引き下げやコスト増による採算悪化への解消へと向かっています。5月の決算発表では、新薬系後発品メーカーや兼業製薬企業を中心に、複数の企業が特許切れ医薬品事業の見直しを明らかにしました。
ムコダインは「再注力」
杏林製薬は決算発表に先立って後発品事業の売却を発表しました。売却先はダイトなどが設立する新会社「医薬品共創機構」で、子会社キョーリンリメディオとグループの2工場(高岡、井波)を27年4月1日付で承継します。杏林の後発品事業は近年、売上高がほぼ横ばいで推移していますが、リメディオ単体では2期連続で最終赤字。新薬事業への経営資源集中による持続的成長と、後発品の安定供給の両立を模索してきましたが、最終的に他社への承継が最善との判断に至ったと説明しています。
ただし、気管支喘息・アレルギー性鼻炎治療薬「キプレス」とアレルギー性鼻炎治療薬「ナゾネックス」のオーソライズド・ジェネリック(AG)は自社に残します。長期収載品の去痰薬「ムコダイン」は、後発品の供給不安のなかで増産体制を構築したことや、選定療養の対象品目から除外されたことを踏まえて再注力する方針。製品ごとに最適解を探っています。
一方のダイトは生産の集約化をさらに進めます。11月には小野薬品工業からプロスタグランジン製剤「オパルモン」「プロスタンディン」を承継する予定で、新薬メーカーの長期収載品に関わる資産売却の受け皿としての機能も果たします。杏林から承継する高岡工場は24年7月に稼働したばかりで、30年までに年間20億錠を生産する計画を立てていました。

帝人「希少疾患・難病への絞り込み加速」
帝人は決算とあわせて発表した新たな中期経営計画で、武田薬品工業から譲り受けた「ネシーナ」など糖尿病治療薬4剤や、かつて主力だった痛風・高尿酸血症治療薬「フェブリク」といった長期品を売却する方針を示しました。糖尿病治療薬は売り上げが振るわず、多額の減損損失計上を余儀なくされました。21年4月から販売してきた4剤合計の売上高は、初年度の276億円から25年度は179億円まで減少。譲受の対価は1330億円でした。
中計では、医薬事業は在宅医療との親和性が高い希少疾患や難病領域への絞り込みを加速し、それ以外の製品は「ベストオーナーを探索」と明記。過去の戦略にとらわれず、組織体制も含めて抜本的に再構築する考えです。

数量・シェア拡大から効率化と利益確保へ
中堅製薬企業や兼業の新薬系後発品メーカーのなかには、後発品や長期品を本体から切り離すだけでなく、新たな投資に踏み切る構えを見せる企業もあります。
日本化薬は28~31年度に製造受託事業を本格展開する意向を表明。兼業企業として医薬品事業を継続するには、スペシャリティ化など事業構造の大転換が必要だと強調しました。同社の医薬事業は売り上げこそ漸増していますが、利益は年々低下する傾向にあるといいます。同社は富士薬品から富山の工場を譲受する予定で、これを機にバイオを含む製造受託事業を立ち上げます。
杏林のムコダインのように、長期収載品を育成の対象と捉える動きもあります。科研製薬はダイトが承継するプロスタグランジン製剤について、その販売を担う契約を締結。整形外科や皮膚科など科研が得意とする診療科でシナジーが見込めるとして、ダイトからの打診に応じることにしました。オパルモンとプロスタンディンはいずれも選定療養の対象外です。
科研の26年3月期の後発品事業売上高(AG除く)は74億円で前期比13%減。近年は自社の新製品がなく売り上げは減少傾向で、今期も4%減を予想しています。利益的にも厳しい状況が続いており、今後は提携を含めた効率化策を探っていきます。同社の医療用医薬品は主力の関節機能改善薬「アルツ」や爪白癬治療薬「クレナフィン」など長期収載品が主体。プロスタグランジン製剤だけでなくほかの製品も取り込めば、その傾向はさらに強まることになります。

エスファ、AG薬価見直しで長期収載品に照準
クオールホールディングス傘下の第一三共エスファは、新たに長期収載品を事業領域に加えることにしました。同社はAGを主体に事業展開してきましたが、今年10月以降に収載されるAGは先発品と同薬価とするルールの導入により新規のAGの発売は困難と判断。「長期収載品・バイオ医薬品へのチャレンジ」を打ち出しました。既存AGのシェア拡大に注力し、その収益を長期品の承継などに投資する考えです。薬価制度の変更によって先発品企業の戦略がAGの許諾から長期収載品の承継へと変化する可能性があるため、事業ターゲットに据えました。
関連記事:【よくわかる2026年度薬価制度改革】再算定「共連れ」は廃止…AGは先発と同一価格に、長期収載品の引き下げ強化
後発品と長期収載品は事業として一体的な性格を強めてきました。各社が構造改革を迫られるのは「薬価改定が毎年行われた結果、収益性が大きく損なわれてきた結果」(日本化薬の島田博史専務)と言えます。これら特許満了医薬品の競争軸は、単なる数量やシェアの拡大から、再編を通じた効率化と利益確保へと移ってきています。
AnswersNews編集部が製薬企業をレポート
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