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中堅製薬、海外展開を強化…科研が欧州で初の製品展開、持田はバイオマテリアルで米国進出

更新日

前田雄樹

国内の中堅製薬企業が海外展開を強化しています。科研製薬は5月、導出先を通じて自社創製の医薬品を初めて欧州で発売。持田製薬は2月に米国法人を設立し、神経再生誘導材の販売に力を入れています。長期収載品の薬価引き下げが加速するなど国内の収益環境が厳しくなるなか、これまで大手中心だった海外に事業機会を求める動きが中堅にも広がってきています。

 

 

科研、米国自販へ体制構築

東証プライム市場に上場する製薬企業(海外売上高を開示している20社)の直近の海外売上高比率は全体で74.3%。売上高4000億円以上の企業では77.8%に達しますが、それ以下の企業では29.6%にとどまっており、中堅の事業展開はまだまだ国内が中心です。

 

【国内製薬企業の海外売上高比率】〈企業規模/海外売上高比率(%)〉 |全体/74.3 |売上高4,000億円以上/77.8 |売上高3,999億円以下/29.6 |※東証プライム上場企業のうち、海外売上高を開示している20社を集計 |※各社の決算発表資料をもとに作成

 

一方、国内市場では後発医薬品の使用割合が9割近くまで上昇し、長期収載品の薬価引き下げが加速しています。持続的な成長には、継続的な新薬投入に加え、収益機会を拡大する必要があり、こうした事情が中堅に海外展開を促しています。

 

科研製薬は5月、自社創製の爪白癬治療薬「Jublia」(日本製品名・クレナフィン)を、導出先のアルミラル(スペイン)を通じてドイツで発売しました。米国では2014年から導出先によって販売されていますが、欧州での製品展開は今回が初めて。中国でも導出先が臨床第3相(P3)試験を進めています。

 

科研は22年に策定した31年度までの長期経営計画で、3つの戦略の柱の1つに海外展開を掲げています。現在、米国で自社創製の難治性脈管奇形治療薬「KP-001」(一般名・serabelisib)のP3試験を行っており、承認後は自社販売に乗り出す計画。25年には自社販売体制の構築を目的に米国のバイオベンチャー、アーディ・サブシディアリーを1億ドルで買収しました。25年度の海外売上高比率は16.7%でしたが、31年度にはこれを30%以上に引き上げることを目指しています。

 

【中堅製薬企業の海外売上高(26年3月期)】 〈社名/売上高/海外売上高/海外売上高(前期比)/海外売上高(売上高比)〉※単位:億円、%|日本新薬/1708/771/1.8/45.1 |ゼリア新薬工業/892/528/6.3/59.3 |ツムラ/1926/314/52.4/16.3 |生化学工業/366/226/▲ 10.3/61.7 |科研製薬/769/128/▲ 51.7/16.7 |キッセイ薬品工業/974/67/▲ 13.9/6.9 |あすか製薬HD/711/46/―/6.5 |富士製薬工業/517/42/▲ 0.6/8.1 |杏林製薬/1263/7/▲ 92.1/0.6 |※各社の決算発表資料をもとに作成

 

持田、米国に事業拠点設立

持田製薬は、次世代の柱として育成するバイオマテリアル事業でグローバル展開を進めています。24年に損傷した末梢神経の修復・再生に使う神経再生誘導材「ReFeel」を米国で発売し、25年には同事業の米国拠点として現地法人「Mochida Medical USA」を設立。EPA製剤「エパデール」や子宮内膜症などの治療薬「ディナゲスト」についてもアジアを中心に海外展開を進めていて、今年3月にはディナゲストの韓国とタイでの販売について韓国企業と提携しました。

 

ツムラは26年3月期、海外売上高が前期から52.4%増加。25年に中国の生薬販売企業を連結子会社化したのが要因です。26年3月期の中国事業の売上高は314億円でしたが、今期は21.5%増の460億円を計画。27年度までの3カ年の中計では、最終年度に中国事業の売上高を500億円まで拡大させることを目指しています。

 

あすか製薬ホールディングス(HD)も25年にベトナムの製薬企業を連結子会社化。26年3月期から、海外事業を1つのセグメントとして業績の開示を始めました。3月に発表した28年度までの中計では、東南アジアを重点エリアとして海外事業を展開する方針を示しており、25年度は46億円だった海外の売上高を28年度に80億円に増やす計画です。

 

キッセイ薬品工業は、自社創製のGnRHアンタゴニスト、リンザゴリクス(国内製品名・イセルティ)を導出先を通じて欧州で展開。海外事業は、自社創製品のライセンスアウトと導入品のアジア向けサブライセンスを中心に展開していく方針で、29年度には海外ライセンス収入(契約金、マイルストン、ロイヤリティ、輸出の合計)を100億円以上に拡大させるのを目標にしています。25年度の実績は67億円でした。

 

【中堅製薬 海外展開の最近の主な動き】〈社名/主な動き〉 |科研製薬 /自社創製の爪白癬治療薬「Jublia」をドイツで発売。欧州で初めての製品展開(2026年5月) /米バイオベンチャーのアーディ・サブシディアリーを買収。難治性脈管奇形治療薬「KP-001」の発売をにらみ販売拠点を獲得(2025年3月) |持田製薬 /子宮内膜症などの治療薬「ディナゲスト」の韓国・タイでの販売について韓国企業と提携(2026年3月) /バイオマテリアル事業の開発・販売拠点として米国法人を設立(2025年7月) /米国で神経再生誘導材「ReFeel」の販売許可取得(2024年7月) |あすか製薬HD /ベトナムの製薬企業を連結子会社化(2025年2月) |ツムラ /中国の生薬販売企業を連結子会社化(2025年11月) |日本新薬 /ムコ多糖症II型向け遺伝子治療薬の米国とアジアでの販売権を取得(2025年1月) /デュシェンヌ型筋ジストロフィー心筋症向け細胞治療の米国販売権を取得(2022年1月) |※各社のパイプラインやプレスリリースをもとに作成

 

ゼリア新薬、海外売上高比率59%まで上昇

日本新薬、ゼリア新薬工業、生化学工業の3社は、中堅としては海外売上高比率が高い水準にあります。

 

ゼリア新薬は2009年にスイスのティロッツ・ファーマを買収して海外市場に本格進出しました。それ以降、海外売上高は右肩上がりで拡大し、24年3月期には国内を逆転。26年3月期の海外売上高比率は59.3%に達しました。潰瘍性大腸炎治療薬「アサコール」やクロストリジウム・ディフィシル感染症治療薬「ディフィクリア」などが欧州で販売を増やしており、5月に発表した26~28年度の中計では欧州での製品導入とアジアでの事業強化によってグローバル展開をさらに拡大させていく方針を掲げています。

 

海外売上高比率が6割を超える生化学工業は、米国と中国で関節機能改善剤を販売。試薬や診断薬を扱う「LAL事業」も海外で展開しており、20年にはカナダのダルトン・ケミカル・ラボラトリーズを買収してCDMO事業にも参入しています。米国では、一度承認見送りとなった腰椎椎間板ヘルニア治療薬「SI-6603」(開発コード)を今年3月に再申請。27年3月期中の承認取得と出荷開始を見込んでいます。

 

日本新薬の26年3月期の海外売上高比率は45.1%。肺動脈性肺高血圧症などの治療薬「ウプトラビ」の海外販売拡大に伴いロイヤリティ収入が増加しています。米国ではデュシェンヌ型筋ジストロフィー治療薬「ビルテプソ」を自社販売しており、同「NS-089/NCNP-02」や好酸球性多発血管炎性肉芽腫症治療薬「NS-229」などの新薬も開発中。希少疾患の分野で製品導入も積極的に行っています。

 

海外展開、特に海外市場への直接進出にはリスクもあり、これまでも撤退を余儀なくされたケースがあります。投資に見合った成果が得られるか、各社の手腕が問われます。

 

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