
中外製薬の奥田修社長CEO
中外製薬が、2030年までの10年間の成長戦略の折り返し地点を過ぎました。「R&Dアウトプット倍増」「自社グローバル品毎年上市」の目標に向けて取り組みを進めるなか、進捗への手応えと後半5年間の課題について奥田修社長CEO(最高経営責任者)が語りました。
「順調に来ている」オープンイノベーション前進
10年間の成長戦略「TOP I 2030」は2021年にスタート。取り組みの柱は「世界最高水準の創薬の実現」と「先進的事業モデルの構築」で、「DX(デジタルトランスフォーメーション)」「RED(研究・早期開発)シフト」「オープンイノベーション」をキードライバーに「R&Dアウトプット倍増」と「自社グローバル品毎年上市」の実現を目指しています。
02年のスイス・ロシュとの戦略的提携以降、中外の業績は大きく向上しており、01年から25年にかけて売上収益は8倍、営業利益は23倍に拡大。現在の成長戦略開始前の20年と比較しても、売上収益は7869億円から1兆2579億円へと1.6倍に、営業利益は3012億円から5988億円へと2倍になりました。25年の営業利益率は47.6%と、収益力は国内製薬企業のなかで突出しています。
10年成長戦略の前半5年の進捗について奥田社長は「順調に来ているというのが私の感触」と手応えを語ります。

戦略投資機能を強化
大きく進んだのがオープンイノベーションの取り組みです。従来の「自前オンリー主義」を転換し、23年7月に早期段階の外部技術に投資するコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)を米ボストンに設立。25年12月にはパートナリングオフィスを米サウスサンフランシスコに開設しました。バイオ医薬品の経口化技術を持つ米ラニ・セラピューティクスや、抗体薬物複合体(ADC)技術を有するスイスのアラリス・バイオテックと提携を開始し、25年11月にはIgA腎症治療薬を開発していたレナリスファーマを買収。活発な活動を展開しています。
7月には、戦略投資に関する方針策定と実行の体制を強化するため、戦略投資部を新設。奥田氏は「中外はこれまで、M&Aや出資といった戦略投資をあまり行ってこなかった。業績拡大に伴って積みあがったキャッシュを、次の成長のためにどう活用するかということの重要性も増している。自社創薬を軸に、オープンイノベーションと戦略投資を一体で推進していく」と話します。
業界でいち早く取り組みを始めたDXでは、複数の生成AIを用途に応じて選んで使えるプラットフォームを構築。「AI Everyday」「AI Everywhere」「AI Transformation」を合言葉に全社で活用を推進しており、グループ約7800人のうち約5000人が日常的に利用しているといいます。

中分子が臨床入り、課題は「早期開発のケイパビリティ」
本丸の創薬では、低分子と抗体に続く第3のモダリティとして育成する中分子が臨床試験に進みました。第1弾として21年に臨床第1相(P1)試験が始まったpan-RAS阻害薬「LUNA18」は25年に開発中止となったものの、現在、pan-KRAS阻害薬「AUBE00」がP1試験を実施中で、アロステリックALK阻害薬「AQUA07」も近く臨床試験が始まります。
奥田氏は「SnipeTide(中外の中分子創薬プラットフォーム技術)がかなり進化した。(抗体や低分子を含む)臨床段階のプロジェクトはかなり増えたし、創薬段階のプロジェクトも大きく増えてきた」と強調。成長戦略がスタートした21年以降、すでに4つの自社創製品が承認を取得しており、今年4月には米イーライリリーに導出した経口GLP-1阻害薬「Foundayo」(一般名・オルホルグリプロン)が米国で承認されました。

選択と集中を強化
一方で、ポートフォリオが充実してきたがゆえに「開発にやや時間がかかりすぎる」(奥田氏)ことが課題として表出。25年には自社創製の5つのプロジェクトを一括して中止する判断を下し、Go/No-Goの判断基準を設定するなど、選択と集中を強化しました。
成長戦略の後半5年間の最優先事項となるのが早期開発力の強化です。中外創製品の海外での開発・販売は、提携先のロシュがアーリーPoCの段階で導入に関する第一選択権を持っており、「そこまでにいかに開発品の価値を証明していくかが非常に重要」(奥田氏)。社内人材の育成や外部人材の獲得などを通じて早期開発のケイパビリティを向上させ、迅速で高品質な開発を目指します。
29年以降には肥満症治療薬や高血圧症治療薬の投入も控えており、これに向けた体制の構築なども後半5年間の重要テーマとなります。パートナリング機能の強化や全社的なAI活用にも引き続き力を入れます。
中外は成長戦略の前半5年間で研究開発に計約8000億円、設備投資とオープンイノベーションに約3500億円を投じました。後半5年間は、引き続き売り上げの一定比率で研究開発費を確保するとともに、オープンイノベーションについてはさらに投資を増やしていく方針です。
AnswersNews編集部が製薬企業をレポート
あわせて読みたい
オススメの記事
-
「デュピクセント」に特例価格調整、薬価3.7%引き下げへ/トロデルビとダトロウェイ、費用対効果評価で11%薬価下げ など|製薬業界きょうのニュースまとめ読み(2026年8月5日)
-
【2026年版】製薬会社年収ランキング 2022万円のサンバイオが1位…新薬大手トップは1350万円の中外製薬
-
【2026年版】国内製薬会社ランキング―売り上げトップ武田は4.5兆円…2位は大塚HD、アステラスと第一三共は初の2兆円突破
-
MRで新たな大型募集、領域未経験で応募できる求人も増加…製造やMSLも堅調|製薬業界 今月の転職求人動向レポート(2026年7月)
-
日本創業から31年。パレクセルが顧客に選ばれ続け、働く人を惹き付ける理由【AD】




