
mRNAワクチン・医薬品に特化したCDMOとして2021年に誕生したARCALIS(アルカリス)。製造拠点は福島県南相馬市の南相馬事業所です。
同社は、創薬支援サービスを手掛けるアクセリードと、mRNAワクチン・医薬品を開発する米アークトゥルス・セラピューティクスの合弁会社として設立。現在は、アークトゥルスが開発し、日本ではMeijiSeikaファルマが製造販売承認を持つ次世代型mRNAワクチン(レプリコンワクチン)「コスタイベ」の製造を手掛けています。
抗体と同じ轍は踏まない
「日本が抗体医薬で世界に遅れをとったのは、ベンチャーや中堅企業を支えるCDMOがなかったから。mRNA医薬では、私たちがその役割を担います」
アルカリスの髙松聡社長CEOは、複数のCDMOで働いてきた自身の経験ももとに、mRNA医薬品では抗体医薬と同じ轍は踏まないと力を込めます。同社は南相馬に製造拠点、千葉県・柏の葉に研究開発拠点を設け、南相馬では23年に原薬製造棟が、今年2月には製剤製造棟が完成。創薬支援からCMC開発、原薬製造、製剤化まで一気通貫でサービスを提供できる設備と体制を整えました。
髙松社長は「mRNA医薬は力のあるモダリティです。抗体医薬がそうだったように、十数年経てば世界の売り上げトップ10にmRNA医薬品が入ってくるのではないか」と期待。「新型コロナの流行もだいぶ落ち着き、コロナワクチンの需要はかなり減ってきた」ものの、「ほかの感染症ワクチンや、希少疾患、がんといった領域で開発は活発だ」と強調します。mRNA CDMO市場は今後も成長が見込まれています。

3月に開いた製剤製造棟のメディア向け見学会で話す髙松聡社長CEO
ほかに類を見ない一気通貫の研究開発・製造支援サービスを活用し、「国内外のベンチャーや医薬品企業と連携して治療薬を待っている患者さんに早く製品を届ける」(髙松社長)ことが、同社の掲げる目標です。
23年に原薬棟、26年に製剤棟が完成
こうしたビジョンを実現する舞台となるのが、南相馬事業所の製造現場です。
mRNA医薬品は、人工的に作ったmRNAを体内に投与して、細胞内で特定のタンパク質を発現させることで効果を発揮します。
従来のモダリティと比べて短時間で設計できることや、体内で一定期間働いたあと自然に分解されるため安全性が高いことが強みです。髙松社長は「バイオ医薬品よりも化学合成に近く、製造設備の構成もそこまで複雑ではない」と話し、設計から製造までが非常に速く、安価に大量生産することが可能な点がメリットだと強調します。

【左上】南相馬事業所外観【右上】原薬製造棟のmRNA合成装置。数時間で数百万回分を作ることができる【左下】mRNAの精製はクロマトグラフィーなどを使う。原薬ができるまでは約1週間【右下】原薬棟4階は事務フロア(同社提供)
23年7月に完成した原薬棟では、翌年からコスタイベのmRNA原薬・LNPバルクの商用生産を開始。21年の設立から短期間で商用生産開始を実現できた背景について、髙松社長は「厚生労働省やPMDA(医薬品医療機器総合機構)の強力な後押しと、アークトゥルスとの連携があり、それに工場メンバーが応えたからこそ」と話します。アークトゥルスからの技術移転では、アルカリスの技術メンバーが米国に数カ月滞在して技術を習得。原薬棟完成後は、そうしたメンバーが中心となって製造体制の構築を進めてきました。
今年2月に製剤棟が完成したことで、現在Meijiの工場で行っている製剤化もアルカリスで担えるようになりました。製剤棟では年内にテスト充填を行い、28年には実生産を始める予定です。

【左上】無菌充填を行うエリア。充填後は必要に応じて凍結乾燥を行う【右上】凍結乾燥後のバイアル(写真は2doseサンプル)【左下】ラベリングを行う装置。カルテに貼るための剥離可能なシールも作る【右下】包装されたサンプル品を持つ製造部ヘッドの茨木淳巳さん。検査を含めて充填から包装までは2週間弱
製薬企業・バイオベンチャーからは治験薬製造に対する引き合いが強く、計画を大きく前倒しして今夏には治験薬の製造も開始する方針。そのため、急ピッチで原薬製造棟に治験薬製造設備を導入しました。
2つの製造棟は、パンデミック時に国の要請を受けてmRNAワクチンを製造するデュアルユース製造拠点として、国の補助金を活用して建設されました。事業所全体で、原薬は年間最大10億回接種分、LNPバルクは最大7200万回分、製剤は3200万回分の生産能力を備えます。
「南相馬のシンボル」地元から見学やインターンシップ受け入れ
そんな南相馬事業所では約100人が働いています。ワンフロアの居室は通路スペースを広めにとり、コミュニケーションが生まれやすい開放的な作りとしました。製造時以外はフレックスタイム制度を採用しており、体調不良のときなどに使える「ヘルスケアサポート休暇」も導入しています。
南相馬事業所は、東日本大震災の復興事業として整備された下太田工業団地の一画にあります。市からは「南相馬のシンボル」として期待されており、アルカリスも地域からの工場見学を積極的に受け入れているほか、高校生を対象としたインターンシップも行っています。
地元採用も進みます。立ち上げ当初は経験者が中心でしたが、現在は約半分が地元出身者。「医薬品業界のバックグラウンドを持たない社員向けに、GMP教育をはじめとする研修プログラムも充実させています」(生産本部ジェネラルマネージャーの村井真さん)。
昨年からは新卒採用もスタート。節目ごとに開かれる「振り返りプレゼン」では、新入社員がそれまでの学びを披露し、それに先輩社員や役員がコメントします。新入社員を対象に、AIアバターとの会話を通じて業務を振り返り、知識の定着を図る仕組みのトライアルも今年から始めており、さまざまなアプローチで人材の成長を支援しています。

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