
(写真:ロイター)
[シカゴ ロイター]米国のドナルド・トランプ大統領によるDEI(多様性、公平性。包摂性)政策撤廃を受け、FDA(食品医薬品局)は、臨床試験の多様性に関するガイダンス案をWebサイトから削除した。
企業に行動計画義務付け
この動きは、米医療系ニュースサイト「STAT」が最初に報じた。トランプ氏は大統領就任2日目の今月21日、政府機関の長にDEIプログラムの解体を指示する大統領令を出した。
FDAのウェブサイトから削除されたのは「Diversity Action Plan draft guidance(多様性行動計画ガイダンス案)」。臨床試験のスポンサーとなる製薬企業や医療機器企業に多様性行動計画の提出を義務付けるもので、2022年の「Food and Drug Omnibus Reform Act(食品医薬品包括改革法)」に基づく。
現在、利用可能な医薬品・医療機器のエビデンスは、多くが白人患者を中心に行われた臨床試験のデータに基づいている。ガイダンス案は、集団間での作用や副作用の違いが考慮されていない可能性があるとの認識の下、黒人やヒスパニック系米国人など現状では過小評価されている集団の臨床試験の参加を大幅に増やすことを目的としている。
ガイダンス案は、米国の規制当局による審査が予定されているすべての臨床試験で、多様な集団から被験者を登録するための目標を設定し、それに向けた詳細な戦略を策定することを製薬企業や医療機器メーカーに求めるものだ。ガイダンスは今年6月までに最終決定される予定だった。
多様性・公平性に関するページ削除
Patient 3i LLCのヘルスエクイティライフサイエンスコンサルタント、Jeanne Regnane氏は「被験者の代表性の低さは、あらゆる集団に対する薬剤の反応と安全性に関する理解を損なう」と指摘する。
ロイターが25日にFDAのウェブサイトを調べたところ、昨年6月26日に公表されたガイダンス案にアクセスできなかった。25日時点では、米政府の「regulation.gov」のサイトでは閲覧することができた。
トランプ政権は政府の保健機関に対して、2月1日まで緊急でない外部への情報発信を停止するよう指示しており、FDAはこれを理由にコメントを拒否している。
削除されたガイダンス案は、より多様な集団を臨床研究や医療に参加させるための米国政府の取り組みの1つに過ぎず、そもそも一般向けに公開されていたものではない。FDAのウェブサイトからは、健康の公平性の関するポッドキャストや、医療機器の試験における健康の公平性に関するディスカッションペーパーなどへのリンクも削除されたとみられる。
STATは、インターネットアーカイブを使い、FDAやその他の保健機関のウェブサイトから削除された多様性・公平性に関するページを10件特定した。
「臨床研究を妨げ、科学的誠実性損なう」
消費者団体Public Citizenでヘルスリサーチグループのディレクターを務めるRobert Steinbrook博士は「このようなことが起こっているという事実は非常に憂慮すべきことだ」と指摘。トランプ氏のDEIに反する取り組みは「臨床研究を妨げ、FDAの科学的誠実性を損ない、すべての患者に対するケアの質を脅かす」と述べた。Public CitizenはFDAの次のリーダーに対し、臨床試験と患者のケアの改善に全力を尽くすよう求めている。
米連邦議会では29日にロバート・F・ケネディ・ジュニア氏の保健福祉省長官(HHS)指名に関する上院公聴会が行われる。ケネディ氏のHHS長官指名にはPublic Citizenを含む80以上の団体が反対を表明している。
(取材:Julie Steenhuysen/Manas Mishra、編集:Bill Berkrot、翻訳:AnswersNews)
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