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製薬業界・激動の10年、働く人は何を思う【創刊10周年座談会・前編】

更新日

亀田真由

AnswersNewsは4月に創刊から丸10年を迎えました。10周年にちなんで、AnswersNewsが創刊した2016年に製薬業界でのキャリアをスタートした方を中心に、この10年間を業界で過ごしてきた方々に集まっていただき、座談会を開催。これまでとこれからを語り合っていただきました(2回に分けて実施した座談会を1記事に再構成)。

 

後編:製薬業界「次の10年」をどう生き抜くか【創刊10周年座談会・後編】

 

参加者プロフィール

Aさん:内資系大手製薬企業の事業開発部門で外部連携を担当。研究開発の経験が長い。

Bさん:内資系製薬企業メディカルアフェアーズ職。研究出身。

Cさん:外資系製薬企業マーケティング職。MRも経験。

Dさん:内資系大手製薬企業でCMC研究を担当。米国に駐在した経験も。

Eさん:体外診断薬の薬事を担当。キャリアのスタートは外資系製薬企業のCMC研究職。

Fさん:外資系バイオベンチャーのMR。希少疾患を担当。

Gさん:外資系バイオベンチャーで事業開発を担当。MRの経験も。

Hさん:内資系製薬企業の生産技術職。医療機器メーカー出身。

Iさん:内資系製薬企業の研究所でマネジメントを担当。

 

モダリティ多様化「夢のような薬」が世に

――皆さんは製薬業界のこの10年の変化についてどう感じていますか。

 

Aさん(事業開発):やはり大きいのは、モダリティの多様化です。遺伝子、細胞、核酸など、治療選択肢がここまで広がるとは思ってもみませんでした。

 

Bさん(MA):本当にそうですね。mRNAもそうですが、先端的なモダリティが実際に承認され、患者さんに投与される世界がやって来ました。承認のニュースを見るたび、「本当に薬になるんだ!」とワクワクしました。

 

Cさん(マーケ):私は今、がん領域で新規モダリティの製品を担当しています。つい最近、お会いした医師から「患者さんに『昔は夢のようだった薬が使えるようになったんだよ』と薬の作用機序を説明している」と聞きました。そんな薬に携われていることは本当に誇らしいです。

 

Dさん(CMC研究):私も最初に浮かんだのはモダリティの変化です。この10年でグローバル化が進むなか、開発難度の高い新規モダリティの開発も大きく進みました。

 

 

Eさん(薬事):私にとって印象深いのはM&Aです。武田薬品工業のシャイアー買収をはじめ、国内外で大きなディールが相次ぎました。

 

Fさん(MR):どの会社にも買収の可能性があるというのを感じさせられました。私は過去、所属していた会社が買収される経験をしているんですが、本当に驚いたのを覚えています。

 

Eさん(薬事):規模は違いますが、私も1社目で研究所の閉鎖を経験しています。M&Aはもちろん、集約・統合・再編も含めると本当に多くの会社で変化がありました。選択と集中が進んだ10年だったと思っています。

 

Gさん(事業開発):田辺ファーマの件も象徴的ですよね。米国のプライベートエクイティファンドに買収され、資産の売却が進められています。海外ファンドの動きは活発化していますし、ファンドに買収されて事業が切り売りされる可能性については、現役世代として念頭に置いておく必要があると感じています。

 

日本の自動車産業と製薬産業は似ていると言われますが、自動車メーカーと比べると医薬品メーカーはまだまだ数が多い。これからも買収や合併は起こると考えています。

 

 

厳しさ増した事業環境

――皆さんおっしゃる通り、たくさんの大きな変化があった10年でした。国内の事業環境やビジネスのあり方についてはどんな変化を感じていますか。

 

Bさん(MA):毎年の薬価改定もあり、国内事業はどんどんシビアになってきていると思います。私の会社でも人員削減がありました。優秀な方ほど希望退職で辞めていくので、現場としてはそのカバーも大変です。

 

医薬品業界で働きたいと思って業界に飛び込み、今の仕事にやりがいを感じていますが、そういった暗いニュースに不安を感じるのも事実ですね。

 

Hさん(生産技術):私の会社は、入社したころは作れば作るほど売れるというありがたい状況でしたが、今では利益を確保するのが本当に難しくなっています。資材や原料の価格が上がる一方で、薬価は下がり続けており、現場に対する生産性向上や効率化のプレッシャーが大きくなってきています。

 

Cさん(マーケ):オンコロジーや希少疾患といった領域へのシフトは日本企業でも進みました。私が以前いた内資系製薬企業も、10年前はプライマリーの主力薬がまだたくさんありましたが、それらが次々と特許切れを迎え、その後はがんや希少疾患ばかりになっていました。

 

Iさん(研究):トレンドとして希少疾患は外せないですよね。かつてはどこの製薬企業も「ビジネスにならない」と考えていたのが信じられないほどです。がんや希少疾患はハイリスクな領域ですが、リターンが大きいからこそ多くの企業が取り組んでいるんでしょうね。

 

 

Fさん(MR):ターゲットとする疾患領域の変化に加え、新型コロナウイルスの流行もあってMRはどんどん削られています。この10年で日本のMR数は6万人超から4万人台へと激減しました。

 

Cさん(マーケ):そうなると、すごく広いエリアを一人でカバーすることになるんですよね。

 

Fさん(MR):ええ。単純計算で1人当たりの業務量は1.5倍です。もちろん、労働時間がそうなっているわけではありませんが。今はオンライン面談などさまざまなチャネルを活用できますし、データも参考にしながら効率的な営業活動が可能になっています。いまやアポイントを取って訪問するのが当たり前ですし、タイムパフォーマンス重視の時代ということもあり、働き方は大きく変わったと思います。

 

とはいえ、医師と専門的な話ができないといけませんから、日々の勉強は必要です。科学の進歩に焦りも抱えつつ仕事をしています。

 

Gさん(事業開発):私がMRをしていたころは、領域をまたいで会社が扱うすべての製品を担当していましたし、朝から医局の前に立ち、教授の講演会に同行することも当たり前。いわゆるシェア・オブ・ボイスの時代でした。今は、Fさんがおっしゃった通り、MRにも高い専門性が求められる時代です。コンプライアンス強化やコロナ禍を経て、ようやく「薬の営業」らしくなってきたんじゃないか、なんてことも思います。

 

主体性求められる時代に

――そうした激動の10年を業界で過ごしてきたなかで、仕事やキャリアに対する考え方は変わりましたか。

 

Eさん(薬事):最初にお話したように、私は1社目で研究所の閉鎖を経験し、その後は転職しながらCMC研究、生産戦略立案、薬事といった職種を経験してきました。おかげで、どんな変化も武器に変えられるという強さは身についたと思います。

 

Fさん(MR):私もこれまでに複数の会社を経験しており、会社を変えながらポジションを上げる機会もありました。会社が用意してくれる機会は限られていますし、社外に目を向け、自分でキャリアをコントロールするやり方もいいのではないかと思っています。いざ飛び込んでみると社風が合わない、なんてこともありましたけれど。

 

Bさん(MA):一方で、社内で手を挙げてキャリアチェンジできるような機会は増えましたね。私も手挙げ制度を使って研究からメディカルに移りました。会社からは常々「どこに行っても生きていけるよう準備しておけ」と言われていたのもあり、後期開発に携わることで自分の仕事の幅を広げようと思ったんです。

 

Hさん(生産技術):常に自らを高め続ける姿勢は求められるようになりましたよね。

 

 

Dさん(CMC研究):私は今、そこで悩んでいます。年次が上がるにつれて責任範囲は広がってきているものの、ずっと同じ部署でやってきていることにどこか不安も感じます。MBAも取りましたが、活かしきれているとはいえません。まさに今、キャリア開発の難しさに直面しているところです。

 

Iさん(研究):キャリア開発に主体性が求められるようになったのが、この10年の大きな変化だったと感じます。昔は内資大手を5年以内に辞めるなんて考えもしませんでしたが、内資外資問わず自分自身でキャリア開発をしていくという考え方が当たり前になりました。それだけ、一人ひとりに変化への強さが問われる時代になったと思います。

 

後編に続く

 

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