
大塚製薬との医薬品製造での提携について記者会見で説明した東和薬品の吉田逸郎社長
東和薬品が、医薬品の安定供給に向けて新たなビジネスモデルの構築に乗り出しました。大塚製薬と合意した長期収載品の受託製造を皮切りに、協業先を増やしながら長期収載品と後発医薬品を「特許満了医薬品」としてエコシステムを回す体制をつくりたい考え。後発品業界で品目統合の動きが活発化する中、独自のアプローチで業界再編を主導したい狙いもありそうです。
長期収載品を承継前提に製造受託
大塚とは、まず長期品の中でも基礎的医薬品を優先し、承認の承継を前提に製造を受託。具体的な品目は両社で協議しながら順次拡大していきます。新たに特許切れとなる製品も含まれますが、オーソライズド・ジェネリック(AG)を意図したものではないといいます。
これよって東和は先発品企業の製造技術やノウハウを受け継ぐことができ、自社の後発品開発に役立てます。東和の中村豪之経営戦略本部長は1月29日に開いた記者会見で、1つの例として製造に関わる特許上の課題に言及。物質特許が満了しても製法特許が残っていれば生産の効率化や品質確保に手間取ることを挙げ、協業によってこうした課題をクリアしていきたい考えを示しました。開発コストの削減も大きなメリットといえそうです。
大塚側にもメリット
一方、大塚は長期品の製造を東和に任せることで、余裕が出る人材や生産ラインを収益性の高い新製品にシフト。自社の生産体制の最適化を図ることができます。近年は製薬大手が長期品を売却する動きが見られますが、大塚は安定供給への責任から承認の承継を見据えた製造委託を選択したとしています。
同社の長期品が売上収益に占める割合は約25%。最大は利尿薬「サムスカ」で、2025年12月期の売上収益予想は190億円です。ほかにも、胃炎・胃潰瘍治療薬「ムコスタ」(30億円)や抗精神病薬「エビリファイ」(20億円)などがあります。このうちサムスカとムコスタには、大塚製薬工場が承認を取得したAGがありますが、協業の対象にするかは今後の話し合いで決めていくとしています。

特許満了医薬品の「バックアップ体制」構築
後発品産業の構造改革をめぐっては、厚生労働省の検討会が24年5月にまとめた報告書で、5年程度の集中改革期間を設定して迅速に進めるよう求めています。報告書では具体例の1つとして、長期品も含む他社工場への製造委託が示されており、東和は先発・後発の枠を超えた協業が将来的な医薬品の安定供給につながると判断しました。
現在の少量多品種生産の構造では、需要の急増や他社都合による緊急の増産が難しく、今は医薬品の在庫状況を流通関係者で共有できる仕組みもありません。東和は、そうした状況の中で何ができるか考えた結果、特許満了医薬品というカテゴリでの協業に行きついたとしています。昨今の供給不足は後発品が中心ですが、今回のスキームは後発品のみならず、災害時などを含めて医療上必要な医薬品の供給を両社で確保し合うことを可能にする仕組みです。
長期品の採算は悪化
東和の吉田逸郎社長は、後発品企業同士の連携も視野にあったとしながらも、「特許満了品をすべて一緒にした製造・品質管理の確かな医薬品」を供給する‘’バックアップ体制‘’構築の重要性を指摘しました。薬価引き下げや選定療養の導入で長期品の採算性は悪化しており、先発品メーカーにとってその扱いは経営課題の1つ。協業の意義はそこにもあると考えます。
過去には、T’sファーマの前身である武田テバファーマが長期品と後発品を「オフ・パテント・ドラッグ」として展開することを打ち出したことがありました。ただ、これはあくまで販売戦略であり、製造面で後発品企業と先発品企業が連携するのは初めてのケースとみられます。

「コンソーシアム」「ファンド主導」に続くアプローチ
一方、今回のスキームには不透明な部分もあります。製造受託は承継を前提としていますが、同一成分の長期品と後発品の両方の承認を1社で保有することは認められていません。たとえば、東和はエビリファイの後発品を製造販売しており、同薬を承継することはできません。今後も、提携関係を広げる中でこうしたケースが出てくるとみられます。
その場合、対応策としては▽承継を前提とせず受託製造のみとする▽後発品の製造販売をやめて長期品を承継する▽長期品の製造販売をやめ、そのノウハウを活用した後発品に一本化する――の3パターンが考えられます。どれを選択するかは、当該品目の市場環境によります。
協業先拡大へ
東和は、こうした協業をほかの先発品メーカーにも持ち掛ける考えです。同社の生産能力は年間175億錠ですが、これを50億錠増やして225億錠に拡大する計画があります。生産能力の拡大に向けては、既存の大阪、岡山、山形の3工場の体制再構築とともに、ほかの製薬企業やCMO・CDMOの製造所を活用することも視野に入れています。吉田社長は、老朽化により25年度末で生産活動を終了するアステラス製薬の高岡工場をひきあいに出し、ノウハウや技術が継承されないことは業界全体とっての損失だと訴えます。
少量多品目生産の解消に向けた製造所集約・品目統合では、日医工が同じ投資ファンド傘下の共和薬品工業に加え、沢井製薬やニプロとも連携。Meiji Seikaファルマとダイトが主導するコンソーシアム構想には現在までに8社が参加し、「自由参加型アライアンス」として集約化が進んでいます。東和が先発品企業との提携を拡大できれば、安定供給に向けた新たなアプローチとして注目されることになりそうです。




