
今年もいろいろなことがあった製薬業界。2025年の主な出来事を2回に分けて振り返ります。
コンソーシアム、参画広がる
2025年、国内の製薬業界では、後発医薬品の安定供給確保に向けた企業間連携の動きが加速しました。
すでに日医工と共和薬品工業を傘下に収めていた投資ファンドのジェイ・ウィル・パートナーズは、新たに武田テバ(現・T’sファーマ/T’s製薬)を買収。7月には3社の持株会社としてアンドファーマが発足し、10月には持田製薬と伊藤忠商事がアンドファーマの株式を20%ずつ取得しました。持田は特にバイオシミラーでのシナジーを期待します。
一方、MeijiSeikaファルマとダイトは6月に「新・コンソーシアム構想」を打ち出しました。コンソーシアムには辰巳化学と日本ケミファ、さらに社名非公表の数社が参画しており、10月時点で22成分56品目について製造所の集約に向けた協議が進行中。将来的には屋号の統一と販売品目の集約を目指しており、MeijiSeikaファルマとダイトは「業界再編の核になる」としています。
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GE薬協「不足解消は29年度」も前倒し目指す
個別の協業も進みました。沢井製薬と日医工は9月、15成分30品目の製造所集約・品目統合に向けた協業に合意。日医工は11月、ニプロとも注射用抗菌薬の後発品3成分8品目の製造所集約について協業すると発表しました。

後発品を中心とする医薬品の供給不足は今年も続き、厚生労働省によると10月時点で14%(2208品目)が限定出荷・供給停止となっています。日本ジェネリック製薬協会は6月、後発品の供給が需要に追いつき、不足が解消されるのは29年度になるとの試算を公表した上で、設備投資の前倒しなどを通じて27年度の不足解消を目指す姿勢を示しました。
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ファンドや商社の動き活発に
国内の製薬業界では例年に比べてM&Aが活発でした。
塩野義製薬は5月、鳥居薬品を含むJT(日本たばこ産業)の医薬事業を総額約1600億円で買収すると発表。9月には鳥居を完全子会社化し、12月にはJTの医薬事業を承継しました。感染症とともに注力する「QOL疾患領域」の確立や低分子創薬の強化が狙いで、一方のJTは医薬事業から撤退しました。
24年から三菱ケミカルグループによる売却報道が出ていた田辺三菱製薬(当時)は7月、約5100億円で投資ファンドの米ベインキャピタルに売られました。これに伴い、12月には社名を「田辺ファーマ」に変更。社長に前ファイザー日本法人社長、会長に前武田薬品工業CFOを招くなど、経営体制も刷新しました。
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塩野義は12月にも、田辺ファーマから筋萎縮性側索硬化症(ALS)などの治療薬エダラボンの事業を買収すると発表。買収額は塩野義にとって過去最大となる25億ドル(約3900億円)。QOL疾患のポートフォリオを拡充するとともに、米国の販売基盤を獲得します。田辺ファーマは売却で得た資金をパイプラインの拡充などに充てます。
中外がベンチャー買収
中外製薬は11月にベンチャーのレナリスファーマを買収し、近年進めている「脱自前」をさらに印象付けました。ベインによる田辺三菱買収、伊藤忠のアンドファーマへの出資など、ファンドや商社にも活発な動きが見られ、ほかにも米ブラックストーンは5月にシミックホールディングス(HD)傘下のCROシミックを買収。丸紅は住友ファーマのアジア事業の一部を買収しました。
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肥満症薬、国内でも市場競争
国内では今年も注目の新薬が続々と登場しました。
25年に薬価収載された新薬は55成分で、このうち100億円を超えるピーク時売上高を予測したのは25成分。最高額はMSDが「治療の教科書を書き換える」と期待する新規作用機序の肺動脈性肺高血圧症治療薬「エアウィン」で、544億円を見込みます。
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ノバルティスファーマは11月、前立腺がんに対する放射性リガンド療法「プルヴィクト」を発売。日本イーライリリーは4月に肥満症治療薬「ゼップバウンド」を発売し、国内でも先行する「ウゴービ」との市場競争が始まりました。
ビーワン・メディシンズ(旧BeiGene Japan)は3月にBTK阻害薬「ブルキンザ」を発売して日本市場に本格参入。Krystal Biotech Japanが10月に発売した栄養障害型表皮水疱症治療薬「バイジュベック」は国内初の塗るタイプの遺伝子治療薬として注目を集めました。
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OTC医薬品では、あすか製薬が緊急避妊薬「ノルレボ」のスイッチOTCの承認を取得。第一三共ヘルスケアが来年2月に発売する予定です。「タケプロン」「パリエット」「オメプラール」のPPI3製品のスイッチOTCも発売され、話題となりました。





