
2025年に薬価収載された新薬55成分のうち、ピーク時売上高予想が100億円を超えるのは25成分だったことがAnswers Newsの集計でわかりました。前年から8成分増え、収載新薬全体のピーク時予想の合計額も約2000億円増加。最高はMSDの肺動脈性肺高血圧症治療薬「エアウィン皮下注用」で、544億円を見込んでいます。
売り上げ予想の合計額、前年から2000億円増
新薬の薬価収載はこれまで年4回でしたが、25年度から年7回に増え、3、4、5、7、8、10、11の各月に行われました。55成分のピーク時売上高予想は計6743億円となり、24年の4705億円(57成分)から大きく増加。100億円超は25成分で、500億円を超えたのはエアウィンのみ。前年の最高はアルツハイマー病治療薬「ケサンラ」の794億円でした。
エアウィンは新規の作用機序を持ち、既存薬に上乗せして使用される薬剤。原価計算方式で算定された薬価は45mg1瓶108万2630円、60mg1瓶144万1677円で、ピーク時の投与患者数は年間2800人と見ています。10年半ぶりの新規作用機序の薬剤であることや、既存治療で効果不十分な患者でも有効性が認められたことなどが評価され、有用性加算I(45%)がついたものの、原価の開示度によって加算係数はゼロとなり、市場性加算I(15%)とともに価格の上乗せは行われませんでした。
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ピーク時予想が400億円台となったのは3成分。421億円を見込む前立腺がん治療薬「プルヴィクト静注」(ノバルティスファーマ)は、標的タンパク質に特異的に結合するリガンドと放射性同位体を組み合わせた放射性リガンド療法。がん細胞に放射線を直接照射できるため、周辺の正常細胞に与えるダメージが小さいのが特徴です。
薬価は原価計算方式で算定され、7.4GBq1瓶(1回分)で338万9878円と高額になりましたが、5%の有用性加算IIは原価の開示度によってゼロとなりました。ノバルティスは放射性リガンド療法を注力分野の1つに位置付けており、2030年までに世界で100万人のがん患者を治療することを目標に掲げています。
ピーク時予測300億円台で注目の新薬は、肥満症治療薬「ゼップバウンド皮下注」。同一成分に糖尿病治療薬「マンジャロ」があるため、薬価算定ではいわゆるリポジショニング特例(組成・投与形態が同一で効能・効果が異なる既収載品がある新薬の特例)が適用され、原価計算方式で算定された薬価が採用されました。200億円台は8成分。ヤンセンファーマの「タービー皮下注」などがあり、同社は発売済みの「ダラキューロ」「テクベイリ」に同薬を加えることで、多発性骨髄腫治療薬のラインアップを強化しました。
100億円台では、アステラス製薬の「アイザベイ硝子体内注射液」が153億円を予想。地図状萎縮を伴う萎縮型加齢黄斑変性に対する初の治療薬で、有用性加算II(5%)が認められましたが、加算係数はゼロでした。アステラスは同薬を23年8月に米国で発売しており、25年度の売上収益は800億円と予想。グローバルではピーク時に2000~4000億円を想定しています。

原価計算方式の補正加算、12成分中10成分が上乗せゼロ
55成分のうち原価計算方式で算定されたのは15成分。このうち12成分に補正加算が認められましたが、実際に付与されたのは2成分にとどまり(1成分はリポジショニング特例)、75%の画期性加算を取得したMSDの「ウェリレグ」など多くが原価の開示度によって価格への上乗せが行われませんでした。制度の在り方があらためて問われる事態となっており、ウェリレグとエアウィンの薬価収載を審議した8月の中央社会保険医療協議会(中医協)総会では、委員から「これだけ革新的なものが評価できないのは非常に残念」との声が上がりました。
補正加算を満額受けたのは新投与経路の催眠鎮静剤「ドルミカムシロップ」(丸石製薬)だけで、有用性加算II(5%)と特定用途加算(10%)が適用されました。アナフィラキシー反応に対する補助治療として使う「ネフィー点鼻液」(アルフレッサファーマ)は加算係数0.6となり、有用性加算II(5%)と小児加算(10%)の一部が上乗せされました。
55成分を内資と外資で分けると、内資の18成分に対して外資は37成分と大きく上回りました。特に、予測売上高上位10成分は中外製薬を含めてすべて外資の製品で、上位20成分でも18成分が外資です。企業別でみるとヤンセンファーマが8成分と突出しており、ピーク時予測売上高の合計は961億円に達します。
新興バイオ企業も台頭しており、ビーワン・メディシンズの抗PD-1抗体「テビムブラ点滴静注」(406億円)やクリスタル・バイオテックの栄養障害型表皮水疱症治療薬「ハイジュベックゲル」(181億円)などが収載されました。
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対象疾患はでがんが15成分で最も多く、潰瘍性大腸炎も5成分ありました。ピーク時投与患者数は不眠症治療薬「ボルズィ錠」(大正製薬)が70万8000人を見込むほか、高コレステロール血症治療薬「ネクセトール錠」(大塚製薬、19万人)やゼップバウンド(13万人)などが多くなっています。希少疾患では、アラジール症候群治療薬「リブマーリ内用液」(ピーク時売上高予想73億円)が91人、遺伝性血管性浮腫治療薬「アナエブリ皮下注」(84億円)が266人、バイジュベックゲル(181億円)が306人などとなっています。

投与経路別では注射と内用がそれぞれ23成分ですが、ピーク時売上高予想上位10成分のうち9成分は注射となりました。





