
米イーライリリーの肥満症治療薬「ゼップバウンド」(ロイター)
[ロイター]米イーライリリーの「ゼップバウンド」やデンマーク・ノボノルディスクの「ウゴービ」のヒットを背景に、肥満症治療薬の世界市場は2030年代初頭に1500億ドル(約22兆円)以上に達すると見込まれている。
ゼップバウンドとウゴービはいずれも週1回投与の注射剤だが、これらに続く選択肢として多くの製薬企業が同等の効果を持つ経口薬の開発を進めている。経口薬は注射薬に比べて製造面で有利で、ゼップバウンドやウゴービが当初直面した供給上の制約を回避できる可能性がある。主な経口肥満症治療薬の開発動向をまとめた。
イーライリリー
イーライリリーは1日1回服用の非ペプチド型経口GLP-1受容体作動薬orforglipronの開発を進めている。8月26日には肥満または過体重の2型糖尿病患者を対象に行った臨床第3相(P3)試験の結果が発表され、最高用量群で平均10.5%の体重減少を示した。
糖尿病でない肥満・過体重の成人を対象に行った別のP3試験では、最高用量を72週間投与した患者で12.4%の減量が示された。同社は2025年末までに規制当局への申請を予定しており、各国での申請と製造規模拡大に向けた準備を進めている。
ノボノルディスク
ウゴービと同成分の経口セマグルチドは、P3試験で約15%の体重減少が示された。同薬は現在、規制当局による承認審査を受けており、米FDA(食品医薬品局)は25年後半に承認の可否を判断する見込み。ノボは次世代の経口薬の組み合わせについても研究開発を進めている。
ストラクチャー・セラピューティクス
米ストラクチャー・セラピューティクスは、非ペプチド型経口GLP-1受容体作動薬「GSBR-1290」を開発している。昨年行われたP2試験では、12週で平均6.2%の体重減少が示された。今年第4四半期には別のP2試験の結果が明らかになる予定だ。
メルク
米メルクは、中国のハンソー・ファーマと提携し、「HS-10535」と呼ぶ経口低分子GLP-1受容体作動薬の初期段階の試験の準備を進めている。同薬は現在、ラボ試験で評価されている。
アストラゼネカ
英アストラゼネカは、米エコジーンと1日1回投与のGLP-1受容体作動薬「ECC5004」の開発を進めている。初期段階の臨床試験では有望な減量効果と良好な安全性が示されており、アストラゼネカ主導で中期段階の臨床試験が計画されている。
ロシュ
スイス・ロシュは米カーモット・セラピューティクスを買収し、経口GLP-1受容体作動薬「CT-966」の開発に取り組んでいる。昨年行われた初期段階の臨床試験では、糖尿病でない肥満の患者で4週間以内に平均6.1%(プラセボ調整後)の体重減少をもたらした。
バイキング・セラピューティクス
米バイキング・セラピューティクスは、GLP-1とGIPの両方を標的とする「VK2735」の経口製剤を開発中だ。肥満に関連する1つ以上の合併症を持つ過体重の成人280人を対象に行ったP2試験では、13週間でプラセボ群と比較して最大12.2%の体重減少を達成した。
ファイザー
米ファイザーは、1日2回投与の経口GLP-1受容体作動薬danuglipronを開発していたが、P2試験で忍容性が低いことが判明し、開発を中止した。その後、1日1回投与の製剤について約1400人の患者を対象に試験を行ったが、肝臓での安全性に関する懸念があり、肥満症治療薬市場への参入計画は頓挫した。
(取材:Bhanvi Satija/Mrinalika Roy/Padmanabhan Ananthan/Mariam Sunny、編集:Anil D’Silva、翻訳:AnswersNews)




 
				


 
								 
								
 
											 
											 
											 
											 
											



