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アドボカシー活動、個社が取り組むメリットとは?|コラム:現場的にどうでしょう

更新日

黒坂宗久

先月、先々月と、このコラムで私が仕事にしているアドボカシー活動について書きました。

 

「アドボカシー」と「ロビイング」は何が違う?(6月)

市民と取り組む「医療のエコ活動」私たちが行っているアドボカシー活動の実例(7月)

 

2本とも多くの方に読んでいただき、日々この活動に取り組んでいる私としては非常に嬉しかったのですが、一方でこんな疑問を持った方もいるかもしれません。

 

「アドボカシー活動に一企業が取り組むメリットって何?」

 

実際、これまでも何度かこうしたした質問をいただくことがありました。私個人としては、これはとても大切な問いだと感じています。

 

とはいえ、「これがメリットです」と端的に答えるのは難しく、その時々の会社や業界、社会の状況によってさまざまな捉え方があるだろうと思います。それでもあえて挙げるなら、私は2つあると考えています。

 

1つは、前回のコラムに書いた通り、必要な医薬品が持続的に患者さんに届く社会、その重要性を政産官学民の幅広いステークホルダーに伝えることで、医療をめぐる社会課題の解決が大切だと考える仲間が増えてきていること。もう1つは、活動を通じて築いた信頼関係が、薬をつくり、届けるという営みのさまざまな局面に良い影響を及ぼし始めていることです。

 

信頼の複利効果

これも前回、前々回と書いてきたことですが、私たちは「革新的新薬を持続的に日本の患者さんに届けられる医療環境の実現」を目標に、多様なステークホルダーとの対話を通じて社会の理解を得ながら、医薬品産業をめぐる課題の解決を目指す活動を地道に進めています。これは、数カ月などといった短い時間軸で成し得るものではありません。

 

「経済的な信頼」ではなく「心理的な信頼」を軸にした活動なので、どうしても時間がかかります。ただ、信頼が信頼を生む「信頼の複利効果」によって中長期で見た場合の影響は大きく、いろんな意味で得るものは多くなるであろうことは体感としてあります。

 

たとえば、対外的な(もちろん社内的にも)評判や評価が高まったり、困ったときにこちらが頼まなくても手を差し伸べてもらえたり、大切な知人を紹介してもらえたり、など目に見えやすいものもありますし、関係した方々の先にある広大な人的ネットワークに可視化できない資産が蓄積されてきているとも感じます。

 

誠実さを基軸に、一貫した言葉と行動を通じて得た信頼は、思いもよらないイノベーティブな反応を生み、そこから社会に対するインパクトを出していけると思っています。

 

こうした活動は、薬をつくっている会社だからこそ成り立つものなのかもしれないと思ったりもします。医薬品が世に出るには10年単位の時間がかかります。だからこそ、今から10年先の世界を想像し、その時に必要な医薬品を患者さんに届けられる環境の整備に取り組む必然性が私たちにはあり、そのための時間もあります。

 

医薬品産業は人々の健康を支える社会インフラの1つであり、個々の製薬企業が行うビジネスそのものが社会貢献志向の高い仕事です。未来の人々の健康を支えるために今を生きる私たちが行うアドボカシー活動は、製薬企業にこそ必要なのではないかと私は考えています。

 

※コラムの内容は個人の見解であり、所属企業を代表するものではありません。

 

黒坂宗久(くろさか・むねひさ)Ph.D.。アステラス製薬アドボカシー部所属。免疫学の分野で博士号を取得後、約10年間研究に従事(米国立がん研究所、産業技術総合研究所、国内製薬企業)した後、 Clarivate AnalyticsとEvaluateで約10年間、主に製薬企業に対して戦略策定や事業性評価に必要なビジネス分析(マーケット情報、売上予測、NPV、成功確率、開発コストなど)を提供。2023年6月から現職でアドボカシー活動に携わる。SNSなどでも積極的に発信を行っている。
X(Twitter):@munehisa_k
note:https://note.com/kurosakalibrary
LinkedIn:https://www.linkedin.com/in/mkurosaka/

 

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