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中外製薬「新人事制度」上々の滑り出し…社員の2割が異動に手挙げ、奥田社長「想定以上」と手応え

更新日

前田雄樹

中外製薬が今年1月に導入した新人事制度が上々のスタートを切りました。目玉の1つである手挙げによる人事異動(ジョブポスティング)では、今年上半期に711のポジションで募集が行われ、社員の2割が応募。奥田修社長CEO(最高経営責任者)は「(手挙げした社員は)われわれが想定していたより多かった」と手応えを示しています。

 

 

全異動の7割近くが手挙げに

新人事制度は、▽一般社員へのジョブ型雇用の導入▽プロフェッショナルポジションの拡充▽手挙げによる人事異動(ジョブポスティング)の導入▽挑戦による価値創出に重点を置いた加点主義の評価制度の導入――が柱。2026年にはシニア社員制度を廃止するとともに雇用上限年齢を撤廃し、実質的に定年を廃止します。

 

ジョブポスティングの導入により、社内異動は原則手挙げ制へと舵を切りました。導入初年となった今年の上半期は、2回の定期人事異動で計711のポジションを公募し、全社員の約2割にあたる延べ1662人が応募。このうち687人が選考に合格し、自身が希望したポジションに異動しました。

 

【中外製薬 ジョブポスティングの実施状況(2025年上半期)】募集ポジション数/711件|延べ応募人数/1662人|合格者数/687人|※中外製薬社長懇談会資料(2025年7月28日)をもとに作成

 

 

同社によると、応募者は30~40代が多いものの、手挙げして合格する社員は年代に関わらず見られました。一般社員からマネージャー職などの重要ポストへと「飛び級」で昇格するケースも複数あり、最大で4段階の昇格を果たした人もいたといいます。一方、本部をまたぐなど全く新しい仕事にチャレンジするため、自らグレード(給与レンジ)を下げて応募する社員も数十人いました。

 

奥田社長CEOは、ジョブポスティングの効果について「手挙げで異動した社員はモチベーションが上がり、周囲に刺激を与えるということがそこここで起きている。マネージャーにも自ら選んだメンバーをしっかり育成しようというマインドが生まれている」と話します。今年上半期のすべての社内異動に占めるジョブポスティングの割合は約68%で、社内目標の50%を上回っており、奥田氏は「順調にいいスタートが切れた」と手応えを示しています。

 

不合格者のモチベーション維持など課題

ジョブポスティングの導入をはじめとする新人事制度は、キャリア形成における社員の主体性を高め、挑戦と成長を促すのが狙い。奥田氏は「これまでも『自分のキャリアを自分で考えてください』ということは上司と部下の対話の中で話をしてきてもらっていたし、新人事制度導入の前段階にはかなり積極的に発信を行った。そういったことも背景に、自分のキャリアをどうするか考え始めた社員も多くいるのではないか」と言います。

 

一方、半年間の運用で課題もいくつか見えてきました。

 

1つは手挙げしたものの不合格となった社員への対応です。「モチベーションを維持して再挑戦を促すには非常に丁寧なフィードバックを行うスキルが必要」(奥田氏)で、フィードバックスキル向上の研修などを実施。フィードバックを含め、ジョブポスティングの運用にはマネージャーへの負荷が大きく、プロセスの簡素化や効率化を検討しているといいます。

 

上司側からすると、自分の部下がジョブポスティングに応募して他部署に異動してしまうことも起こりえます。そうした場合には、キーポジション補充のために定期の募集で2巡目の募集を行ったり、随時募集をしたり、異動時期をずらしたりして対応。自身でキャリアを描けない社員に対しては、上司との対話の活性化などを通じてキャリア自律支援を継続的に行っていく考えです。

 

奥田氏は「(ジョブポスティングに応募した社員が)2割というのが良い数字なのかどうかは、今後運用していく中で確認していく必要がある。逆に言うと8割は手挙げしていない。自身のキャリアについて深く考え始めた人もいるだろうし、今のポジションや役割で十分満足しているという仕事観の人もいるだろう。そうした人たちからも、上司との対話を通じて考えを引き出していけると良い」と話しています。

 

AnswersNews編集部が製薬企業をレポート

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