
スイス・ノバルティスも昨年、中国企業と大型提携を結んだ(ロイター)
[香港/上海 ロイター]世界の大手製薬企業が、中国で開発された新薬候補の探索を加速させている。業界アナリストは、中国企業による新薬のライセンスアウト契約は今年、過去最高を更新すると予測している。
中国の調査会社Pharmcubeのデータによると、香港、マカオ、台湾を含む中華圏の企業が製薬大手と結んだ提携の総額は2025年に1377億ドルに達し、21年から10倍近くに増えた。探索の中心は中国本土であり、25年はスイス・ノバルティス、米メルク、英グラクソ・スミスクラインいった世界的企業が大型提携を結んだ。
今年すでに38件
バンク・オブ・アメリカ・セキュリティーズのアジア・パシフィックM&A責任者トム・バーシャ氏は、「中華圏の企業からメガファーマへのライセンスアウトの総額は、今後18~24カ月でさらに倍増する勢いだ」と指摘。「世界の製薬企業は中国で次世代の革新的な新薬候補を見つけ出すことに強い関心を持っており、さまざまな形態のディールが検討されている」と話す。
マッコーリー・キャピタルのアジアヘルスケアリサーチ責任者トニー・レン氏の見方はやや慎重だが、それでも前年比で40~50%の増加を予測。がん治療の基盤とみなされる特定のクラスの新薬候補が世界の製薬企業の関心を集めると予想している。
Pharmcubeのデータはこうした関心の高まりを裏付ける。今年の平均取引規模は2月中旬時点ですでに13億ドルに達している。これは25年の水準を76%上回っており、21年の6倍だ。
この急拡大は主に、1月に発表された2つの大型案件によるものだ。1つは英アストラゼネカがCSCPファーマシューティカルグループと締結した肥満症治療薬に関する最大185億ドルの提携。もう1つは、米アッヴィがレメジェンと結んだ最大56億ドルのがん治療薬に関する提携だ。
今年に入り、こうしたライセンス契約はすでに38件発表されている。昨年は年間で186件だった。
2月11日には、米マドリガル・ファーマシューティカルズが、蘇州リボライフサイエンスと肝疾患治療薬開発プログラムに関するライセンス契約を締結。蘇州リボライフサイエンスは6000万ドルの前払い金を受け取る予定で、一定のマイルストンが達成されれば最大で総額44億ドルを手にする可能性がある。同社のCFO(最高財務責任者)は1月の香港市場上場時に、成長戦略の一環として多国籍製薬企業や中国製薬企業とさまざまな交渉を行う予定だと話していた。
前払い金が高額化
マッコーリー・キャピタルのアナリストによると、中国はバイオロジーの分野では後れを取っているものの、ケミストリーの分野に強みを持っている。多国籍企業は、自社で研究開発を行うよりも低コストで中国から有望な分子のライセンスを取得できるという。
同社は最近の報告書で「多くの多国籍企業は、中国を自社の世界的な研究開発インフラの欠かすことができない一部とみなしている」と指摘。「特に、パテントクリフに直面し、コスト削減を迫られている企業でその傾向が顕著だ」としている。
コンサルティング会社ビジョン・ライフサイエンスは25年12月に発表したバイオテクノロジーライセンスの見通しの中で、中国は特殊なタイプの分子で世界をリードしており、抗体薬物複合体(ADC)では世界のライセンス活動のおよそ9割を占めているとした。
ディールの規模が大きくなるにつれ、開発権を確保するために世界の製薬企業が支払わなければならない前払い金も増加している。
一部でより開発段階が進んだ新薬候補が取引対象になっていることが理由の1つに挙げられるが、前出のレン氏によると、需要と評価の高まりを背景に中国企業側がより高い金額を要求するようになってきているという。
Pharmcubeのデータによると、前払い金の平均は今年7770万ドルとなっており、25年の3880万ドルから倍増。21年との比較では約3倍の水準になっている。
「通常、価格が上がれば需要は減少する。中国以外でのライセンスが増える可能性はあるが、新薬候補のディールでは一般的に価格は最優先事項ではない」とレン氏は話している。
(取材:Kane Wu/Andrew Silver、編集:Miyoung Kim/Kevin Buckland、翻訳:AnswersNews)






