
市場拡大再算定の「共連れ」の廃止、オーソライズド・ジェネリック(AG)の薬価算定の見直し、長期収載品の薬価引き下げ強化などが柱となる2026年度薬価制度改革。中医協がまとめた見直し内容をもとに、制度改革のポイントを整理しました。
INDEX
【ポイント1】市場拡大再算定の見直し
比較的小幅な見直しが多い中、目玉となるのが市場拡大再算定の類似品への適用(いわゆる共連れ)の廃止です。市場拡大再算定は発売時の想定を上回って販売が伸びた医薬品の薬価を引き下げる制度。これまでは対象品目と薬理作用が類似した品目の薬価も同時に引き下げられてきましたが、製薬業界は従来から「外的要因による引き下げであり、予見性を著しく損なう要因となる」として廃止を求めていました。
26年度薬価制度改革に向けた中央社会保険医療協議会(中医協)の議論では存続の方向で議論が進んでいましたが、26年度予算編成に向けた厚生労働・財務両大臣の折衝で廃止が決定。ただし、再算定対象品目の類似薬については、適応追加などの有無にかかわらずレセプト情報・特定健診等情報データベース(NDB)で使用量を把握し、薬価改定以外の機会も含めて再算定が行われることになります。
![【市場拡大再算定の見直し】●類似品への適用(いわゆる共連れ)は廃止|●希少疾病や小児の効能等追加のみの場合、再算定の対象としない運用を明確化い〈内容/年間販売額/予測販売額比/引き下げ率(原価計算方式/類似薬効比較方式)〉|市場拡大再算定 |薬価改定時の再算定(年間販売額が予測販売額の一定倍率を超えた品目)/100億円超/10倍以上/10~25%/― |四半期再算定(▽効能追加がなされた品目▽収載2年度目の予測販売額が100億円*1または150億円*2以上とされた品目)/150億円超/2倍以上/10~25%/10~15%|350億円超/2倍以上/10~25%/10~15% |[見直し]四半期再算定(市場拡大再算定または持続可能性特例価格調整対象品目の類似薬)/150億円超/2倍以上/10~25%/10~15% |持続可能性特例価格調整(市場拡大再算定の特例から名称変更) |薬価改定時の再算定(年間販売額が極めて大きい品目)/1000億円超~1500億円以下/1.5倍以上/10~25%|1500億円超/1.3倍以上/10~50%|3000億円超/10倍以上/10~66.7%|四半期再算定(▽効能追加がなされた品目▽収載2年度目の予測販売額が100億円*1または150億円*2以上とされた品目)/1000億円超~1500億円以下/1.5倍以上/10~25%|1500億円超/1.3倍以上/10~50% |[見直し]市場拡大再算定または持続可能性特例価格調整対象品目の類似薬/3000億円超/10倍以上/10~66.7% |*1 原価計算方式で算定された品目、*2 原価計算方式以外の方式で算定された品目/中央社会保険医療協議会の資料をもとに作成](https://ten-navi-prd-cms-img-481565300627.s3.ap-northeast-1.amazonaws.com/wordpress/wp-content/uploads/20260116174412/2026_DrugPricingSystemReform_01_2.png)
特例拡大再算定、名称を「持続可能性特例価格調整」に変更
このほか、市場拡大再算定の見直しでは、希少疾病や小児を対象とした適応などの追加だけを行った場合は対象品目としてこなかったこれまでの運用を明確化。年間販売額1000億円超の医薬品が対象となる「市場拡大再算定の特例(特例拡大再算定)」は、名称を「持続可能性特例価格調整」に変更し、「年間販売額3000億円超かつ予測販売額の10倍以上」となった場合に引き下げの上限を66.7%に引き上げる新基準を設けます。
この基準は、新型コロナウイルス感染症治療薬「ゾコーバ」への個別の対応として設けられたルールですが、これを制度に組み込みます。
【ポイント2】新薬の評価の見直し
新薬の評価では、類似薬効比較方式による薬価算定が一部変更されるほか、各種加算や外国平均価格調整で見直しが行われます。
類似薬効比較方式では、比較薬が補正加算(有用性系加算を除く)を受けている場合、加算相当額を差し引いた額を比較薬の薬価とみなし、1日薬価を合わせた上で新薬にも補正加算を適用できるようにします。従来は比較薬の加算も含めて1日薬価合わせを行っており、新薬が加算要件に該当する場合でも加算は行われていませんでした。
各種加算の見直しでは、市場性加算Iと小児加算の併加算を可能にするほか、規格間調整のみによる薬価算定でも要件を満たす場合は市場性加算I、先駆加算、迅速導入加算を適用できるようにします。改定時の加算では、市販後にガイドラインなどで標準療法になったと評価できた医薬品に対する加算を設けます。

外国平均価格調整、ドイツは交渉後価格を参照
これらの見直しは新薬メーカーにとっておおむねプラスとなる一方、マイナスとなるのが外国平均価格調整の見直しです。外国平均価格調整は、日本の薬価が欧米主要国と乖離しすぎないよう、米国、英国、ドイツ、フランスの平均価格の1.25倍を上回る場合は引き下げ調整を、0.75倍を下回る場合は引き上げ調整を行う仕組み。26年度の制度改革では、このうちドイツの価格について、同国での交渉後の価格を参照するよう見直します。
ドイツでは、新薬の発売後6カ月間は製薬企業が自由に設定した価格で保険償還を受けられますが、その後は公的医療保険との価格交渉で合意された価格が償還価格となります。19年1月~24年12月にドイツで医療技術評価を受けた新薬の交渉後の価格は、製薬企業が設定した価格から平均して30.8%低くなっており、交渉後価格を参照するようになれば外国平均価格は下がることになります。
新薬創出・適応外薬解消等促進加算は、名称を「革新的新薬薬価維持制度」に変更。品目要件のうち、新規作用機序医薬品で革新性・有用性が認められた品目については、該当性の明確化や制度の透明性の観点から削除します。製薬業界は「乖離率が平均を超える品目も対象とすべき」と主張しましたが、これは認められず、平均乖離率を超える品目は引き続き対象外となります。
【ポイント3】長期収載品の薬価引き下げの見直し
長期収載品の薬価はさらなる適正化が行われます。
長期収載品の薬価は、後発品収載から5年経過後の5年間、後発品への置き換え率に応じた引き下げ(Z2)が行われ、その後、置き換え率80%以上の品目は6年かけて後発品と同水準に(G1)、置き換え率80%未満の品目は10年かけて後発品の1.5倍まで(G2)段階的に引き下げられる仕組みとなっています。
26年度の制度改革では、Z2とG2を廃止し、後発品収載から5年たった長期収載品は置き換え率によらずG1を適用する仕組みに変更します。G1/G2が適用されない品目の補完的引き下げとして行われてきた「C」も廃止し、G1の補完的引き下げは置き換え率に関わらず引き下げ率を2%に設定。G1適用後の薬価は、G1による引き下げ後の額と、補完的引き下げ後の額のどちらか低い方とします。
後発品と同水準まで薬価が下がった長期収載品にはG1を適用しないこととし、その後は市場実勢価格に基づく改定を受けることになります。
従来のG1/G2はバイオ医薬品は対象外でしたが、26年度以降はバイオシミラーが収載されているバイオ先行品についてもG1を適用します。

【ポイント4】後発医薬品の薬価算定・薬価改定の見直し
後発品では、オーソライズド・ジェネリック(AG)とバイオAGの扱いにメスが入ります。
AG・バイオAGはこれまで、一般的な後発品と同様に薬価算定(AGは先発品の0.5倍、バイオAGは先行品の0.7倍)されてきましたが、今回の制度改革では先発品・先行品と同額にします。改定時も先発品・先行品と薬価を加重平均し、価格帯を集約します。
AG・バイオAGはこれまで、先発品・先行品と有効成分、原薬、添加物、製法などが同一というメリットを背景に市場で圧倒的なシェアを獲得する傾向にあります。一方で中医協では「形を変えた先発品企業の長期収載品依存」との指摘があり、後発品メーカーからも予見性や生産効率の観点から対応を求める声が上がっていました。AGを事業の中心に据える企業は戦略の再考を迫られることになります。
価格帯集約、対象外の品目増加
後発品では、価格帯の集約についても一部見直しが行われます。従来は、同一成分の最高価格(基本的には先発品)を基準に3つの価格帯への集約が行われてきましたが、注射薬とバイオシミラーについては最高価格の30%を下回るものだけ価格帯を集約し、それ以外は集約の対象としないルールに変更。それ以外の後発品についても、企業指標の評価結果を活用した価格帯集約の特例の要件を満たす品目は価格帯集約の対象から除外する見直しを行います。
後発品メーカーにとっては、価格帯集約の対象とならない品目が増え、採算の改善に寄与しそうです。

後発品を中心とする医薬品の安定供給確保に向けては、最低薬価の平均3.5%の引き上げや不採算品再算定の要件緩和も行われます。
【ポイント5】27年度中間年改定は「着実に実施」
2年に1回の通常の薬価改定の間の年に行われる中間年改定をめぐっては、厚労・財務両大臣の折衝で「着実に実施する」ことが決まり、骨子にもそれが明記されました。業界側は中間年改定の廃止を主張していますが、27年度の実施は避けられそうにありません。中間年改定に向けては、今回も対象品目の範囲や適用するルールなどが焦点となります。
一方、
▽革新的新薬の評価方法(比較薬の判断基準の拡大を含む)
▽原価計算方式で薬価算定される新薬の原価開示度の向上
▽持続可能性特例価格調整(市場拡大再算定の特例)のあり方
▽再生医療等製品に対する市場拡大再算定適用のあり方
▽調整幅のあり方
▽販売包装単位適正化に向けた薬価上の対応
――については結論が先送りされ、28年度制度改革に向けて検討を続けることとされました。
影響が懸念される米国の最恵国待遇(MFN)価格をめぐっては、「機動的な対応ができるよう、革新的新薬の薬価のあり方について引き続き検討する」としています。
あわせて読みたい
オススメの記事
人気記事

【よくわかる2026年度薬価制度改革】再算定「共連れ」は廃止…AGは先発と同一価格に、長期収載品の引き下げ強化

外資企業でMRの大型採用…製造は大手新薬メーカーで増員募集|製薬業界 今月の転職求人動向レポート(2026年1月)

エンハーツ、HER2陽性乳がん1次治療に適応拡大…「Nuzolvence」「Blujepa」淋病に数十年ぶり新薬―2025年12月に米FDAが承認した新薬

【2026年の新薬#2】住友、iPS細胞由来パーキンソン病薬承認へ…中外創製の経口GLP-1製剤、武田のナルコレプシー薬など承認期待

【2025年版】国内製薬会社ランキング―トップ3は今年も武田・大塚・アステラス、海外好調で軒並み増収

