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サノフィの新CEOが直面する2つの課題―「研究開発の生産性向上」と「米政権の反ワクチン政策」

更新日

ロイター通信

(写真:ロイター)

 

[ロンドン ロイター]仏サノフィが突然のCEO(最高経営責任者)交代を発表した。約6年にわたって同社を率いたポール・ハドソン氏が解任され、独メルクCEOのベレン・ガリホ氏(65)が後任に就く。彼女は、投資家を味方につけ、停滞する新薬開発を加速させるとともに、米政権の「反ワクチン政策」に対応するという課題に直面する。

 

2021年からメルクを率いてきたガリホ氏について、彼女に近い投資家やアナリストからは「大胆かつ細部にこだわり、物事を完遂させる人物」との評価が聞かれる。一方、研究開発の実績には良し悪しがあり、在任中にメルクの株価が下落したことも指摘されている。

 

サノフィの株価はこの1年で25%下落しており、CEO交代を発表した12日も3.5%下げた。新薬不足により立て直しが停滞しているとの批判を受けてきたハドソン氏は2月17日付で退任し、ガリホ氏は4月29日の株主総会終了後にCEOに就任する。

 

サノフィに投資するユニオン・インベストメントのポートフォリオ・マネジャー、マルクス・マンズ氏は「CEO交代は、研究開発の改革が失敗した、もしくは改革の進展が遅すぎたことの表れだ。彼女の最優先事項は研究開発の生産性向上になるだろう」と見る。

 

マンズ氏は、ヘルスケアからテクノロジーまで幅広い事業を展開するメルクを統率してきた手腕や、昨年、米トランプ大統領との医薬品価格交渉をまとめ上げた実績を評価。一方、在任中にいくつか新薬開発の失敗があったことを挙げ、「彼女は研究開発の実績を向上させる必要がある」と指摘した。

 

最大の課題はデュピクセントの「次」

新薬開発はサノフィにとって最大の懸念事項となっている。主力のアトピー性皮膚炎などの治療薬「デュピクセント」は売り上げ全体の30%を占めるが、2030年代初頭に特許切れが始まる。その後の収益を支える新薬がいまでに見つかっていないことが、株価の重石となっている。

 

コンサルティング会社ローランド・ベルガーのパートナーで、2018年までサノフィで働いていたニコラス・デュマ氏は「デュピクセントのかわりを見つけることこそが、サノフィにとって重要な戦略上の課題だ」と話す。

 

売り上げの5分の1を占めるワクチン事業にも逆風が吹く。前任のハドソン氏は、米国の保健当局がワクチンに対して否定的な姿勢を強めていることが、この事業の弱体化につながっていると指摘していた。

 

サノフィは、2011年まで長年同社で勤務した経験を持つガリホ氏について、戦略の実行に「さらなる厳格さ」をもたらすと期待している。ガリホ氏はコメントの要請にすぐには応じなかった。

 

サノフィのCEOに就任するベレン・ガリホ氏(2024年4月撮影、ロイター)

 

初の女性CEO

ガリホ氏はサノフィにとって初の女性CEOとなる。英グラクソ・スミスクラインのエマ・ウォームズリー氏が今年退任したことで、大手グローバル製薬企業で唯一の女性CEOともなる。彼女はメルクのCEOに就任した際も、DAX(ドイツ株価指数)上場企業で初の女性トップとして注目を集めた。

 

彼女はメルクの製薬部門責任者としてパンデミック下のサプライチェーンを指揮し、昨年のスプリングワークス・セラピューティクス買収(買収額39億ドル)などのディールを主導した。一方、在任中にメルクは新薬開発で後退を余儀なくされ、市場に投入できた新薬は3つにとどまった。

 

ガリホ氏を知る投資家は、研究開発や事業開発といった「目に見える部分」は必ずしも順調ではなかったとしつつ、社内の構造を改善し、利益を守った点を評価している。かつてメルクのコーポレート・ベンチャー・ファンドを率いたロエル・ブルタイス氏は、彼女が「規則と階層に縛られた組織」を大胆かつ効率的な組織に変えたと指摘。「彼女は幹部に対し、自らの決断に責任を持ち、物事をやり遂げる勇気を持つよう求めた」と振り返る。

 

ガリホ氏と仕事をしたことがある別の投資家は、彼女はエネルギーにあふれ、行動力があり、物事を的確に把握できることに加え、サノフィをよく知っていると指摘。「彼女はサノフィを熟知している。その重要を過小評価してはいけない」と話した。

 

いつまでとどまる?

ガリホ氏は臨床薬理学の専門家で、スペイン・マドリードのラパス病院で医師としてキャリアをスタートさせた。

 

ガリホ氏は、実務の遂行能力と細部へのこだわりで知られる。デンマークのヘルスケア投資ファンド、グローバルヘルスインベストのクラウス・ヘンリック・ヨハンセンCEOは「彼女は科学的背景よりもオペレーションの経験が豊富だ。サノフィの研究開発部門をどう活性化させるのか、興味深い」と話す。

 

一方で、今回のCEO人事が市場にとって意外だったこともあり、ガリホ氏は新しい職に長くはとどまらないのではないかと推測する声も聞かれる。前出のデュマ氏は「彼女は移行期のCEOだと思う。彼女が得意とするのは、組織にプレッシャーをかけること。永遠にとどまるつもりはないだろう」と話している。

 

(取材:Bhanvi Satija/Maggie Fick/Patricia Weiss/Ludwig Burger、編集:Adam Jourdan/Barbara Lewis、翻訳:AnswersNews)

 

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