
(写真:ロイター)
[サンフランシスコ ロイター]ドナルド・トランプ大統領が進める米国の薬価引き下げで、トランプ氏からまだ直接引き下げの要請を受けていない製薬企業が、政権との独自の合意形成を模索している。
業界のロビイストや関係者によると、一部の製薬企業はホワイトハウスやメディケア・メディケイド・サービスセンター(CMS)の担当者に接触を始めている。具体的な企業名は明らかでない。
ホワイトハウス広報官のクッシュ・デサイ氏はロイターの取材に「もちろん、トランプ政権はすべての製薬企業と薬価引き下げの交渉をしたいと考えている」と答えた。ある業界関係者によると、トランプ氏から薬価引き下げを求める書簡を受け取っていない企業は、まだ政権から交渉について連絡を受けていない。
「企業規模だけで扱い変わることあってはならない」
企業側が特に懸念しているのは、メディケア(高齢者向け公的医療保険)対象薬の新たな価格設定に関する試験的プログラムだ。このプログラムでは、メディケアが支払う薬剤費について、米国内の価格が国際水準を上回る場合、メーカー側にリベート(払い戻し)を要求することになる。
これまでに欧米の大手製薬企業17社がトランプ氏から書簡を受け取り、このうち16社が政府と合意に達している。しかし、米国研究製薬工業協会(PhRMA)加盟社の半数以上の企業をはじめ、多くの企業はまだ連絡を受けていない。
バイエルの製薬部門でグローバル責任者を務めるステファン・エルリッヒ氏はロイターのインタビューに、同社のようにトランプ氏から書簡を受け取っていない企業にも、他社と同様の合意を結ぶ機会が与えられるとの見通しを示した。同氏は「そうでなければ非常に奇妙な話だ。企業の規模だけで扱いが変わるなどということはあってはならない」と話す。
一部の中小企業は、新たな価格設定制度に反対するロビー活動などを行うため、「Midsized Biotech Alliance of America」と称する独自の業界団体を設立した。この団体にはこれまでに、アルカームス、バイオマリン、インサイト、アルナイラムなど11社が加盟している。
サノフィのポール・ハドソンCEOは、1月にサンフランシスコで開かれたJ.P.モルガン・ヘルスケア・カンファレンスで記者団に対し、「合意を得られていない企業は多いが、彼らに何が残されているのだろうか」と疑問を呈した。ハドソン氏によると、一部の企業は合意によって将来的な政府の価格設定イニシアチブから除外されたが、契約の性質上、政府が中小企業にも同様の選択肢を提供するのは困難な可能性があるという。今年後半にPhRMA(米国研究製薬工業協会)の会長に就任する予定のハドソン氏は「ここから30、50、80もの個別合意を成立させるのは非常に難しい。政府は何らかの包括的な提案を行ったり、別の方法で管理しようとしたりするかしれない」と話している。
メディケア新価格制度を懸念
大手製薬企業は政権との合意で、低所得者向け公的医療保険メディケイドで使用される医薬品の価格を引き下げることを約束した。ただ、メディケイドが米国の薬剤支出全体に占める割合は10%に過ぎない上、すでに80%を超える値引きが行われているケースもあり、アナリストらは影響は限定的だと指摘している。
一方で、合意のない製薬企業は「GLOBE」や「GUARD」と呼ばれるメディケアの試験的プログラムの対象となる。これらは、メディケイドより規模の大きいメディケアに「最恵国待遇(MFN)」価格を導入するもので、米国内の価格を他国の水準に合わせる仕組みだ。
懸念されるのは、一部の小規模製薬企業が、自社製品を販売するために海外企業にライセンスの供与を行っているケースだ。海外提携先にとっては、米国の事情で自国の薬価を引き上げるインセンティブは大きくない。そうなると、メディケア価格を海外に合わせて大幅に引き下げざるを得なくなる可能性がある。
中小製薬企業にとってのもう1つの懸念は、大手に比べて製品数が少ないため、交渉材料として犠牲にできる売り上げの小さい製品を持たないことだ。
ある業界ロビイストは「多くの中小製薬企業は、大手に有利な仕組みが自分たちに押し付けられ、身動きが取れなくなることを非常におそれている」と話している。
(取材:Michael Erman、編集:Caroline Humer/Bill Berkrot、翻訳:AnswersNews)
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