
アステラス製薬が、研究開発の重点領域の1つとする眼科領域で、第1号の製品となる萎縮型加齢黄斑変性治療薬「アイザベイ」を日本でも発売しました。同疾患に対する治療薬は国内初で、アステラスにとっても「眼科領域への入り口となる重要な製品」(同社)。研究開発段階には細胞治療や遺伝子治療が控えており、モダリティを広げながら眼科領域のパイプラインを拡大していきます。
萎縮型加齢黄斑変性に対する初の治療薬
アイザベイが対象とする萎縮型加齢黄斑変性は、網膜の中心部で中心視力をつかさどる「黄斑」の網膜組織が薄くなったり萎縮したりする(=地図状萎縮、GA)ことで視力が低下する疾患。視力の低下は不可逆的で、進行すると失明や重度の視覚障害に至る可能性があります。国内では約10万人が罹患していると推定されています。
加齢黄斑変性の地図状萎縮の発症には免疫を構成する補体経路の調節障害が関係しており、過剰に活性化した補体が網膜に炎症を引き起こすほか、膜侵襲複合体(MAC)と呼ばれる物質を形成して網膜細胞死を引き起こします。アイザベイは、補体の1つである補体因子C5を標的とする核酸医薬。補体の活性を低下させることで炎症と細胞死を抑制し、地図状萎縮の進行を抑制します。承認の根拠となった海外臨床第3相(P3)試験では、投与12カ月時点で地図状萎縮の拡大速度を14.25%抑制しました。
「大きなアンメットニーズに対するファーストインクラスの薬剤」
加齢黄斑変性には大きく2つの種類があり、萎縮型と、網膜の下にできた異常な血管から血液などが漏れ出ることで起こる「滲出型」に分けられます。滲出型には血管新生を抑制するVEGF阻害薬が国内でも複数承認されていますが、萎縮型にはこれまで承認された薬剤はありませんでした。
日本では2025年9月に条件付き承認を取得し、同年11月に販売を開始。国内ではピーク時に薬価ベースで153億円の販売を見込んでいます。米国では23年8月に承認されました。
アステラス製薬メディカルアフェアーズジャパンヘッドの堀聡志氏は今年1月に同社が開いたメディア向け説明会で「アイザベイは大きなアンメットニーズに対するファーストインクラスの薬剤だ」と強調。販売では眼科領域に強い千寿製薬と提携しており、堀氏は「学会や患者団体も通じて認知度を高めていくとともに、早期治療の重要性を訴えていく」と話しました。

アステラス製薬メディカルアフェアーズジャパンヘッドの堀聡志氏
網膜色素上皮細胞がP1試験、前臨床に遺伝子治療
アステラスは現在、「再生と視力の維持・回復」として眼科領域を研究開発の重点領域の1つに据えています。アイザベイは23年の米アイベリック・バイオ買収で獲得した新薬で、アステラスはこの買収に過去最大となる59億ドル(当時のレートで約8000億円)を投じました。

眼科領域では、アイザベイに続く新薬として、萎縮型加齢黄斑変性を対象に網膜色素上皮細胞「ASP7317」のP1試験を実施中。さらに、前臨床段階には黄斑ジストロフィに対する同「ASP2020」と緑内障性視神経症向け遺伝子治療薬「ASP2767」が控えています。網膜色素変性に対する視細胞や遺伝性網膜疾患を対象とする遺伝子治療薬の研究も進めています。
堀氏は「アステラスの眼科領域において、アイザベイは入り口となる重要な製品」とし、「今後は細胞治療、遺伝子治療、さらには新しいモダリティへと眼科のパイプラインは広がっていく」と話しました。
アステラスはアイザベイを重点戦略製品に位置付けており、27年から始まる前立腺がん治療薬「イクスタンジ」の特許切れをカバーする製品の1つとしての期待もかかります。5つの重点戦略製品は今期、あわせて4700億円の売り上げを見込んでおり、このうちアイザベイは800億円を計画。同薬はピーク時に米国だけで2000~4000億円を売り上げると予想しています。

同社の北村淳CFO(最高財務責任者)は2月4日の25年4~12月期決算説明会で「新規患者数は着実に増加している」と米国で市場浸透が順調に進んでいることを強調。「アイザベイは非常に重要なブランドであり、成長ドライバーとして期待している。しっかり伸ばしていかなければならない」と話しました。

AnswersNews編集部が製薬企業をレポート
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