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ニュース解説

レッドオーシャンの乾癬治療薬市場、新たな経口薬が相次ぎ登場へ…ヤンセンが経口ペプチド申請、武田と科研は新規TYK2阻害薬

更新日

前田雄樹

生物学的製剤を中心に多くの新薬が発売され、レッドオーシャンとなっている乾癬治療薬の市場に、新たな経口薬が相次いで登場します。ヤンセンファーマはIL-23受容体を標的とするペプチド薬を申請中で、武田薬品工業と科研製薬は選択性を高めたTYK2阻害薬を投入予定。市場競争はさらに激化しそうです。

 

 

生物学的製剤中心に治療選択肢拡大

乾癬は、免疫の異常によって皮膚に炎症が起こる疾患。主な症状は、紅斑(皮膚が赤みを帯びる)、浸潤・肥厚(皮膚が盛り上がる)、鱗屑(盛り上がった皮膚の表面に銀白色のフケのようなものが付着)、落屑(鱗屑がポロポロとはがれ落ちる)などで、強いかゆみを伴うこともあります。

 

乾癬には大きく5つの種類があり、それぞれ症状の出方が異なります。「尋常性乾癬」は、紅斑、浸潤・肥厚、鱗屑・落屑といった皮膚症状が中心。「乾癬性関節炎」は皮膚症状に加えて関節の腫れや痛みを伴います。「膿疱性乾癬」は皮膚にプツプツとした膿疱(膿が入った水ぶくれのようなもの)が多発する疾患。「乾癬性紅皮症」は皮膚症状が全身に広がった状態で、倦怠感や発熱を伴うことも多く、「滴状乾癬」は小さな水滴状の紅斑が全身にできるのが特徴です。このうち、膿疱性乾癬は国の指定難病に指定されています。

 

乾癬の国内の患者数は約43~56万人(人口の0.3~0.4%)と推計されています。世界全体(推計患者数1億2500万人、人口の3%)と比べると頻度は低いものの、生活習慣の変化などを背景に日本でも患者数は増加傾向にあるといいます。

 

乾癬の治療は、炎症を抑えるステロイドと皮膚の異常な増殖を抑える活性型ビタミンD3による外用療法が基本。重症化に応じて光線療法(紫外線を当てることで過剰な免疫反応を抑える治療)や内服療法(免疫抑制剤やPDE4阻害薬など)が選択され、それでも効果不十分な場合は分子標的薬(生物学的製剤、JAK阻害薬、TYK2阻害薬)による治療へと進みます。

 

乾癬の治療は生物学的製剤の登場によって大きく進歩したとされます。国内では2010年に抗TNFα抗体のインフリキシマブとアダリムマブ(いずれも一般名)が承認を取得したのを皮切りに、22年までに12の生物学的製剤が承認。標的となるサイトカインも増え、治療選択の幅は広がりました。

 

【国内で承認されている主な乾癬治療薬】〈一般名/製品名/社名/承認年/BSGE(●はあり)〉|生物学的製剤|TNFα阻害薬|インフリキシマブ/レミケード/田辺ファーマ/2010年/●|アダリムマブ/ヒュミラ/アッヴィ/2010年/●|セルトリズマブ ペゴル/シムジア/ユーシービー/2019年/―|IL-12/23p40阻害薬|ウステキヌマブ/ステラーラ/ヤンセン/2011年/●|IL-17A阻害薬|セクキヌマブ/コセンティクス/ノバルティス/2014年/―|イキセキズマブ/トルツ/イーライリリー/2016年/―|IL-17受容体A阻害薬|ブロダルマブ/ルミセフ/協和キリン/2016年/―|IL-23p19阻害薬|グセルクマブ/トレムフィア/ヤンセン/2018年/―|リサンキズマブ/スキリージ/アッヴィ/2019年/―|チルドラキズマブ/イルミア/サンファーマ/2020年/―|IL-17A/F阻害薬|ビメキズマブ/ビンゼレックス/ユーシービー/2022年/―|IL-36受容体阻害薬|スペソリマブ/スペビゴ/ベーリンガーインゲルハイム/2022年/―|〈経口薬〉|PDE4阻害薬|アプレミラスト/オテズラ/アムジェン/2016年/―|JAK阻害薬|ウパダシチニブ/リンヴォック/アッヴィ/2021年/―|TYK2阻害薬|デュークラバシチニブ/ソーティクツ/ブリストル/2022年/―|※各薬剤のインタビューフォームをもとに作成

 

一方、経口の分子標的薬では、21年にJAK阻害薬「リンヴォック」(一般名・ウパダシチニブ)が、22年にTYK2阻害薬「ソーティクツ」(デュークラバシチニブ)が承認。リンヴォックは乾癬性関節炎、ソーティクツは尋常性乾癬、膿疱性乾癬、乾癬性紅皮症が対象です。

 

JAK阻害薬とTYK2阻害薬はどちらも、JAK(ヤヌスキナーゼ)ファミリーの働きを阻害し、炎症性サイトカインのシグナル伝達を遮断することで炎症を抑える薬剤。JAKファミリーにはJAK1、JAK2、JAK3、TYK2の4つの分子があり、JAK阻害薬が主にJAK1~3のいずれかまたは全部を阻害するのに対し、TYK2阻害薬はTYK2を選択的に阻害します。JAK阻害薬にはJAKを抑えることで引き起こされる副作用があり、TYK2阻害薬はそれを回避しつつシグナル伝達を遮断するのが特徴です。

 

新規経口薬、一部バイオ製剤上回る有効性

生物学的製剤と比べると経口分子標的薬の選択肢はまだ限られますが、今年以降、複数の新薬が登場する見通しとなっています。

 

ヤンセンファーマは25年11月にIL-23受容体に対する標的経口ペプチドのイコトロキンラを申請。対象は尋常性乾癬、膿疱性乾癬、乾癬性紅皮症で、順調にいけば26年中の承認が見込まれます。

 

既存治療で効果不十分な中等症から重症の尋常性乾癬を対象に行われた臨床第3相(P3)試験では、投与16週時点で50%、24週時点で65%がPASI90(乾癬の面積と重症度を表す指数が90%以上改善)を達成。52週時点のPASI90達成率は80%を超えています。別のP3試験では直接比較でソーティクツに対する優越性を示しており、生物学的製剤のウステキヌマブに対する優越性を検証する直接比較試験も進行中です。

 

TYK2阻害薬では、TYK2への選択性を高めることで有効性と安全性を向上させた次世代薬の開発が進行中。武田薬品工業は米ニンバス・セラピューティクスから買収したザソシチニブについて、26年度から世界各国で承認申請を開始する予定です。米アルミスも26年後半に米国でenvudeucitinibを申請する計画で、日本では提携先の科研製薬が申請を行います。尋常性乾癬を対象に行われたP3試験でPASI90を達成した患者の割合は、ザソシチニブが半数以上(16週時点)、envudeucitinibが約65%(24週時点)となっています。

 

【国内で開発中の経口乾癬治療薬】〈一般名/作用機序/社名/開発段階(国内/海外)〉 |イコトロキンラ/IL-23受容体阻害薬/ヤンセン/申請/申請 |ザソシチニブ/TYK2阻害薬/武田薬品工業/P3/P3 |envudeucitinib/TYK2阻害薬/科研製薬/P3/P3 |※各社のパイプラインやプレスリリースをもとに作成

 

これら新たな経口薬は、最新の生物学的製剤にはやや及ばないものの、一部のバイオ製剤を上回る有効性を示しており、注射に負担を感じる患者らにとっては有力な治療選択肢になっていきそうです。

 

さらにこれらの薬剤は、乾癬以外の自己免疫疾患でも開発が進められています。イコトロキンラは潰瘍性大腸炎を対象としたP2b試験が、ザソシチニブもクローン病や潰瘍性大腸炎のP2試験が進行中。envudeucitinibは全身性エリテマトーデスを対象としてP2b試験が行われています。科研は同薬について皮膚科領域での国内開発・製造・商業化権を持ち、膠原病と消化器の領域ではオプション権を保有しています。

 

AnswersNews編集部が製薬企業をレポート

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