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ニュース解説

製薬各社、臨床試験や規制対応にAI活用…「『地味な作業』の改善が大きな違い生む」

更新日

AnswersNews編集部

(写真:ロイター)

 

[サンフランシスコ ロイター]AIは創薬において最も困難なプロセス、つまり医学の大きな進歩につながる新たな分子の発見ではまだ成果を上げていない。しかし、製薬各社の幹部によれば、新薬開発のプロセスのうち「華やかさに欠ける部分」の合理化についてはすでに成果が出始めているという。

 

先日、米サンフランシスコで開かれたJ.P.モルガン・ヘルスケア・カンファレンスでは、大手製薬企業7社とバイオテクノロジー企業6社が、臨床試験の参加者や実施施設の選定、規制当局向けの文書作成といった作業にAIを活用し、労働集約的なこれらの工程にかかる時間を数週間単位で削減していると語った。

 

各社によると、新薬を市場に出すには10年の期間と20億ドルの費用がかかる。半導体大手エヌビディアとの提携を発表したイーライリリーをはじめ、多くの企業はAIが新薬開発の成功確率向上にも寄与すると期待している。

 

ほかの業界と同様に、製薬企業もインターネットの登場以来の大きな技術革新とされるAIの可能性を解き放つべく、ツールの導入について数多くの契約を発表している。

 

コンサルティング大手のマッキンゼーは昨年、エージェンティックAI、つまり人間の介入をほとんど必要とせず自律的に動くAIが、今後5年間で臨床開発の生産性を35~45%向上させる可能性があるとの予測を発表した。

 

テバ・ファーマシューティカル・インダストリーズは、新薬を市場に送り出すという大目標に集中できるよう、多方面でAIを活用している。同社のリチャード・フランシスCEO(最高経営責任者)は「新薬開発以外のすべての要素は、可能な限り効率的かつスリムでなければならない。『地味な作業』をAIでデジタル化・近代化し、プロセスを改善することが大きな違いを生む。実はここに非常にわくわくしている」と語った。

 

数千ページに及ぶ文書作成・管理

アストラゼネカ、ロシュ、ファイザーといったグローバル製薬企業や、スパイア、ニューバレントなど新興バイオ企業の幹部らは、臨床、安全性、製造記録など規制当局向けの数千ページに及ぶ文書の作成・管理について語った。

 

アストラゼネカのアラダナ・サリンCFO(最高財務責任者)の説明によれば、これらの文書は地域間で一貫性を保ちながら編集・照合する必要があり、多額の費用を支払って外部に委託するケースも少なくないという。

 

ベンチャーキャピタル、アンドリーセン・ホロウィッツのゼネラルパートナーであるホルヘ・コンデ氏は、自身が創薬の「厄介な中間プロセス」と呼ぶ領域の課題解決に投資しており、スタートアップ企業のアルビエイト・ヘルスに430万ドルを出資した。

 

同氏は、臨床試験の参加者が途中で離脱していく様を「漏れのある漏斗」にたとえ、アルビエイトがAIを使って患者へのアウトリーチ、教育、スクリーニング、スケジューリングを支援することに期待を寄せいている。

 

TDコーウェンにアナリスト、ブレンダン・スミス氏は、マイクロソフトのCopilot(コパイロット)のような大規模言語モデルを含むAIの事務作業への活用は、製薬業界ですでに一般的になりつつあると話している。

 

ただ、投資家がAIによる創薬のスピードアップを具体的に測定できるようになるには、あと1~3年ほどかかるかもしれないと同氏は指摘する。ツールの導入場所や方法によって異なるため、節約額の数値化は現時点では困難だと言う。

 

施設選定・参加者登録に活用

ノバルティスのシュリラム・アラドイCMO(最高医学責任者)は、高コレステロール血症治療薬「レクビオ」の1万4000人を対象とした大規模心血管イベントアウトカム試験を2023年に開始した際、AIを活用したと明かした。

 

AIが高パフォーマンスの治験施設を特定したことで、通常4~6週間かかる施設選定プロセスがわすか2時間の会議で済み、参加者登録も目標値をわずか13人上回るだけで締め切ることができたという。

 

同氏は「AIは人工知能ではなく拡張知能になる」と指摘。同社の広報担当者は、AIによる時間短縮は創薬プログラム全体で数カ月単位に及ぶ可能性があるとしている。

 

グラクソ・スミスクライン(GSK)は、手作業によるデータの収集・集計や治験登録の削減のために、デジタルツールとAIを組み合わせて活用しており、これによって臨床試験を15%スピードアップさせることを目指している。

 

GSKの広報担当者によると、こうした取り組みによって昨年、喘息薬「エキシデンサー」の後期治験で約800万ポンド(約1087万ドル)のコスト削減につながったという。同薬は先月、米国で承認を取得した。

 

ジェンマブ(デンマーク)は、アンソロピックの対話型生成AI「Claude(クロード)」を搭載したエージェンティックAIを導入し、臨床開発の優先事項をサポートすることを計画している。同社のAI部門責任者、ヒシャム・ハマデ氏は、治験後の作業(データの分析、グラフや図表、臨床試験報告書への変換など)を自動化するのが目標だと語った。

 

放射性医薬品企業ITM(ドイツ)は、膨大な治験報告書を米FDA(食品医薬品局)のテンプレートに沿って変換するためにAIを活用する方法を見出したとロイターに語った。数人のスタッフが数週間かけて行う作業を削減できる可能性があるが、実際の業務に使用するには至っていない。

 

アムジェンの研究責任者ジェイ・ブラドナー氏は、AIは創薬や規制文書の作成プロセスで多方面に成果を上げていると強調。「誰もが待ち望んでいるのは『AIが作った薬』だ。『AI創薬による分子はいつ手に入るのか』と。実際には、そうした分子はすでに開発パイプラインの中に存在していると私は考えている」と話した。

 

(取材:Maggie Fick/Michael Erman/Bhanvi Satija、編集:Caroline Humer/Bill Berkrot、翻訳:AnswersNews)

 

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