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イーライリリーのレタトルチド「体重28.7%減少」の衝撃―肥満症治療薬、最新の主な開発動向

更新日

ロイター通信

ノボノルディスクのGLP-1受容体作動薬「オゼンピック」を自己注射する患者(ロイター)

 

[ロイター]活況を呈する肥満症治療薬市場で、製薬企業がプレゼンスを確立しようと激しい開発競争を繰り広げている。現在、市場は米イーライリリーとデンマーク・ノボノルディスクが二分する構図。アナリストらは、今後10年間で市場は年間1500億ドル規模に拡大すると予測している。

 

イーライリリーは11月、製薬企業として初めて時価総額が1兆ドルに達した。需要が急増する肥満症治療薬への期待が株価を押し上げている。リリーとノボのほか、次なるブロックバスターを求めて製薬企業が開発している主な肥満症治療薬をまとめた。

 

イーライリリー

リリーは、▽経口GLP-1受容体作動薬orforglipron▽アミリン受容体作動薬eloralintide▽GIP/GLP-1/グルカゴン受容体作動薬retatrutide――などを開発している。

 

retatrutideは今月、後期段階の治験で平均28.7%の体重減少効果を示した。同社のブロックバスター薬「ゼップバウンド」(一般名・チルゼパチド)を上回り、市場での優位性を確固たるものにした。

 

eloralintideは中期段階の治験で最大20.1%の体重減少示した。リリーはこの結果を受け、今月、同薬を後期段階の治験に進めた。orforglipronはこれまで行われたすべての後期治験で主要評価項目を達成しており、年内の承認申請を目指している。

 

次世代薬への投資も活発だ。リリーは昨年、中国のバイオテクノロジー企業Laeknaと、筋肉を維持しながら減量を助ける肥満症治療薬の開発で提携。今年8月にはSuperluminal Medicinesと、AIを活用して肥満やその他の心臓・代謝性疾患向け低分子薬を開発する最大13億ドルの契約を結んだ。

 

ノボノルディスク

ノボは、次世代の注射薬であるamycretinやCagriSemaなど複数の肥満症治療薬の開発に取り組んでいる。

 

amycretinは、2型糖尿病患者を対象とした中期段階の試験で、投与36週で最大14.5%の体重減少を示した。主な副作用は軽度から中等度の胃腸障害で、同社は安全性と忍容性は高いとしている。2026年に後期段階の治験に入る計画だ。同薬は、GLP-1とアミリンの2つのホルモンを標的にしている。

 

amycretinは経口と注射の両方で開発が進められており、毎日服用の経口剤は昨年、初期段階の治験で12週間後に13.1%の体重減少をもたらすことが示された。注射剤の初期治験では36週で22%の体重減少が示されている。

 

同社の「ウゴービ」の強力な後継薬として期待されていたCagriSemaは、2つの後期治験で予想を下回る結果となった。1つの試験では過体重の患者で22.7%の体重減少を示したが、ノボが期待していた25%には届かなかった。ノボは26年第1四半期にCagriSemaの申請を計画している。

 

これらに加えてノボは、中国のUnited Laboratoriesと3つのホルモンを標的とする肥満症治療薬候補「トリプルG」のライセンス契約(最大20億ドル規模)を結ぶなど、初期段階のパイプラインの強化も進めている。

 

ファイザー

ファイザーは11月、米Metseraと買収に合意。月1回の注射薬として開発中のGLP-1受容体作動薬「MET-097i」など、初期から中期段階にあるMetseraの肥満症治療薬へのアクセスを得た。

 

MET-097iは9月、2つの中期治験で投与28週後に平均14.1%の体重減少を示した。Metseraは今年後半に後期段階の治験を開始し、併用療法や経口薬の開発も進める方針だ。同社はほかに、アミリン受容体作動薬「MET-233i」も開発している。

 

ファイザーは安全性への懸念から2つの経口GLP-1受容体作動薬の開発を中止しており、開発品がない状態にあった。12月には中国・上海復星医薬の子会社であるYaoPharmaと肥満症治療薬の開発・商業化に関する独占的ライセンス契約を締結。YaoPharmaは、前払い金として1億5,000万ドルを受け取り、マイルストンとして最大19億4000万ドルを受領する可能性がある。

 

ロシュ

ロシュは9月、23年のCarmot Therapeutics買収で獲得した肥満症治療薬「CT-388」について、後期段階の治験に進めると発表した。同薬は週1回投与の注射薬で、ゼップバウンドと同じクラスに属する。ロシュは昨年、Carmotからの2つ目の新薬候補が初期段階の治験で肯定的な結果をもたらしたと発表している。

 

ロシュはまた、3月にZealand Pharmaからpetrelintideの権利を最大53億ドルで取得した。Zealandは昨年、初期段階の治験で、高用量の投与を受けた患者が投与16週間後に平均8.6%の減量を達成したと発表している。

 

アムジェン

アムジェンの肥満症治療薬MariTideは昨年、1年間にわたる中期段階の治験で、過体重の患者の体重を最大20%減少させて注目を集めた。同社は、年内に同薬の2つの主要な中期段階の治験のデータが得られると予想している。

 

メルク

メルクは昨年、中国のバイオテクノロジー企業Hansoh Pharmaと、同社が治験中の経口肥満症治療薬「HS-10535」のライセンス契約(最大20億ドル)を結び、開発競争に参入した。同薬はウゴービやゼップバウンドと同じGLP-1受容体作動薬。

 

アストラゼネカ

アストラゼネカが開発中の経口肥満症治療薬は、1年前に中国のEccogeneから最大20億ドルでライセンスを取得したもので、初期段階の治験で安全性と忍容性を確認した。アストラゼネカは「AZD5004」と呼ぶ1日1回の経口薬を中期段階に進めたと明らかにしている。

 

バイキング・セラピューティクス

バイキング・セラピューティクスは8月、開発中の経口肥満症治療薬「VK2735」について、過体重の成人280人を対象とした中期段階の治験で、投与13週間後に体重を12.2%減少させたと発表した。ただ、ウォール街の最大期待値だった15%には届かなかった。

 

スカラー・ロック

スカラー・ロックは6月、治験中のapitegromabをリリーのゼップバウンドと併用することで、患者が除脂肪体重を維持するのに役立ったとする中期段階の治験の結果を発表した。ゼップバウンド単剤では投与24週間後に7.6ポンドの除脂肪体重が失われたが、併用群では3.4ポンド減にとどまった。

 

アルティミューン

アルティミューンが治験中の肥満症治療薬pemvidutideは、23年の中期段階の治験で平均15.6%の体重減少をもたらし、その効果が継続していることが示された。

 

ストラクチャー・セラピューティクス

ストラクチャー・セラピューティクスは今月、治験中の経口肥満症治療薬aleniglipronについて、中期段階の治験で36週間後に11.3%の体重減少を示したと発表した。より高用量を検討する別の中期段階の治験では、36週間後に最大15.3%の体重減少が示された。同社は、この結果は後期段階への開発の進展を支持するものだとしており、26年半ばまでに後期治験を開始する予定だとしている。

 

(取材:Sahil Pandey/Mariam Sunny/Siddhi Mahatole/Padmanabhan Ananthan/Kamal Choudhury/Pratik Jain/Sriparna Roy/Leroy Leo/Sneha S K/Nathan Gomes、編集:Shilpi Majumdar/Alan Barona/Anil D’Silva、翻訳:AnswersNews)

 

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