1. Answers>
  2. AnswersNews>
  3. ニュース解説>
  4. 大塚のIgA腎症治療薬「Voyxact」や米クラの白血病治療薬「Komzifti」など承認―2025年11月に米FDAが承認した新薬
ニュース解説

大塚のIgA腎症治療薬「Voyxact」や米クラの白血病治療薬「Komzifti」など承認―2025年11月に米FDAが承認した新薬

更新日

亀田真由

(写真:ロイター)

 

2025年11月に米FDA(食品医薬品局)が承認した主な新薬と適応拡大を、領域別にまとめました。

 

 

【新薬】バイエルのHER2陽性非小細胞肺がん治療薬「Hyrnuo」など

【2025年11月に米FDAが承認した主な新薬】〈適応範囲/製品名(*=優先審査、★=ブレークスルーセラピー)/一般名/社名(国)/適応/日本の開発状況〉 |がん |Komzifti*★/ziftomenib/クラ(アメリカ)/感受性のNPM1変異を有する再発・難治性の急性骨髄性白血病(成人)/— |Hyrnuo*★/sevabertinib/バイエル(ドイツ)/局所進行または転移性のHER2活性化変異を有する非小細胞肺がん(成人)/申請 |代謝・腎 |Kygevvi*★/doxecitine/doxribtimine/UCB(ベルギー)/チミジンキナーゼ2欠乏症(12歳以下で発症した小児・成人)/— |Redemplo*★/plozasiran/アローヘッド(アメリカ)/成人の家族性カイロミクロン血症候群/P3 |Voyxact*★/sibeprenlimab/大塚製薬(日本)/進行リスクのある成人のIgA腎症におけるタンパク尿の減少/P3 |筋 |Itvisma/onasemnogene abeparvovec/ノバルティス(スイス)/脊髄性筋萎縮症(2歳以上、髄腔内注射)/申請 |※米FDA(食品医薬品局)や各社の発表資料をもとに作成。国内開発状況は各社のパイプライン情報などを参照。

 

がん

Komzifti|米クラ・オンコロジー

メニン阻害薬「Komzifti」(一般名・ziftomenib)は、感受性のあるNPM1変異を有する再発・難治性の急性骨髄性白血病(AML)に対する治療薬。NPM1はAMLで最も一般的なドライバー遺伝子の1つで、再発時の治療成績が悪く、予後不良である一方、治療選択肢は限られていました。承認は、112人の患者を対象に行われた臨床第1/2相(P1/2)試験のデータに基づいており、奏効率は21.4%でした。米国以外では、戦略提携を結ぶ協和キリンが開発や薬事、商業化を主導しています。

 

Hyrnuo|独バイエル

可逆的チロシンキナーゼ阻害薬「Hyrnuo」(sevabertinib)は、局所進行または転移性のHER2活性化変異を有する非小細胞肺がん治療薬として迅速承認を取得しました。対象は全身療法の前治療歴がある患者。承認の根拠となったP1/2試験での全奏効率は71%で、病勢進行までの期間は中央値で9.2カ月でした。日本と中国でも申請中です。

 

代謝・腎

Kygevvi|ベルギーUCB

「Kygevvi」(doxecitine/doxribtimine)はチミジンキナーゼ2欠乏症治療薬。12歳以下で発症した小児と成人が対象です。同疾患は進行性の筋力低下を引き起こす遺伝性ミトコンドリア疾患で、治療選択肢はこれまで支持療法に限られていました。欧州でも申請中です。

 

Redemplo|米アローヘッド

核酸医薬「Redemplo」(plozasiran)は、家族性カイロミクロン血症症候群の成人のトリグリセリド値を低下させる治療薬。食事療法の補助として使用する3カ月に1回投与の皮下投与製剤です。トリグリセリド値の上昇に関わるタンパク質・アポC-IIIの肝臓での産生を抑制するよう設計されたsiRNA医薬で、アローヘッドにとっては初のFDA承認薬となります。日本ではP3試験が進行中です。

 

Voyxact|大塚製薬

抗APRIL抗体「Voyxact」(sibeprenlimab)は、「進行リスクのある成人のIgA腎症におけるタンパク尿の減少」の適応で迅速承認を取得しました。疾患に関わるAPRILを阻害して病原性ガラクトース欠損IgA1(Gd-IgA1)の産生を抑制します。承認の根拠となったP3試験の中間解析では、投与9カ月時点でタンパク尿の改善指標であるuPCR(尿蛋白/クレアチニン比)をプラセボに比べて51.2%減少。日本や欧州も参加する同試験は進行中で、疾患の進行を抑制するかどうかをeGFRの24カ月時点での低下を指標に検証しています。

 

Itvisma|スイス・ノバルティス

脊髄性筋萎縮症に対する遺伝子治療薬「Itvisma」は、onasemnogene abeparvovecの髄腔内注射。従来の静注製剤(製品名・Zolgensma)は2歳未満の小児に使用が限られていましたが、Itvismaの承認で2歳以上の小児と成人にも治療ができるようになりました。承認の根拠となったP3試験では、治療歴に関係なく運動機能の改善と安定を示しました。日本と欧州でも申請中です。

 

【適応拡大】Darzalex FASPROのくすぶり型多発性骨髄腫など

【2025年11月に米FDAが承認した主な適応拡大】〈適応範囲/製品名(●は国内未承認、*=優先審査、★=ブレークスルーセラピー)/一般名/社名(国)/適応/日本の開発状況〉 |がん |Darzalex FASPRO/daratumumab/hyaluronidase/JNJ(アメリカ)/高リスクのくすぶり型多発性骨髄腫(成人)/承認 |[完全承認]成人での新規診断のALアミロイドーシス(cyclophosphamide+dexamethasone)/承認|●Tecentriq HYBREZA/atezolizumab/hyaluronidase)/ジェネンテック(アメリカ)/切除不能または転移性の扁平状軟部肉腫(12歳以上、体重40kg以上の小児を追加)/—|Epkinly/epcoritamab/ジェンマブ(デンマーク)/再発・難治性の濾胞性リンパ腫★(成人、[lenalidomide+rituximab])/申請|[完全承認]再発・難治性の濾胞性リンパ腫(成人、単剤療法)/承認|Koselugo/selumetinib/アストラゼネカ(イギリス)神経線維腫症1型(成人を追加)/承認|Keytruda+padcev*/pembrolizumab+enfortumab vedotin/メルク(アメリカ)、アステラス製薬(日本)/シスプラチン不適応の筋層浸潤性膀胱がんの術前後の補助療法/—|Imfinzi*/durvalumab/アストラゼネカ(イギリス)/切除可能なⅢ期または局所進行の切除不能または術後補助療法(成人)/申請|Imdeltrat/tarlatamab/アムジェン(アメリカ)/[完全承認]進展型小細胞肺がん(成人)/承認|●Opdivo QVANTIG/nivolumab/hyaluronidase/ブリストル(アメリカ)//MSI-HまたはdMMRの大腸がん(12歳以上、体重30kg以上の小児を追加)/—|消化器|Linzess/linaclotide/アッヴィ(アメリカ)/便秘を伴う過敏性腸症候群(7歳以上の小児)/—|精神|●Caplyta/lumateperone/JNJ(アメリカ)/大うつ病性障害の補助療法(成人)/—|眼|Eylea HD/aflibercept/リジェネロン(アメリカ)/網膜静脈閉塞症に伴う黄斑浮腫/申請|筋|Elevidys/delandistrogene moxeparvovec/サレプタ(アメリカ)/[添付文書改訂]デュシェンヌ型筋ジストロフィー(4歳以上の歩行可能な小児患者に限定)/承認(3歳以上8歳未満)|※米FDA(食品医薬品局)や各社の発表資料をもとに作成。国内開発状況は各社のパイプライン情報などを参照

 

がん

Darzalex FASPRO|米ジョンソン・エンド・ジョンソン

抗CD38抗体の皮下投与製剤「Darzalex FASPRO」(daratumumab/hyaluronidase)は、高リスクのくすぶり型多発性骨髄腫に適応拡大。P3試験では、経過観察群と比べて多発性骨髄腫への進行または死亡リスクを51%低下させました。欧州と日本でも承認済み。成人の新規診断のALアミロイドーシスに対するbortezomib、cyclophosphamide、dexamethasoneとの併用療法も正式承認に変更されました。

 

Epkinly|デンマーク・ジェンマブ

抗CD3/CD20二重特異性抗体「Epkinly」(epcoritamab)は、再発・難治性の濾胞性リンパ腫の2次治療を対象に、lenalidomide、rituximabとの併用療法が新たに承認されました。2剤併用療法への上乗せを検証したP3試験では、病勢進行または死亡のリスクを79%減少。日本でも申請中です。今回の承認と同時に、3次治療以降に対する単剤療法の完全承認も取得。同適応では24年6月に迅速承認を取得していました。

 

Koselugo|英アストラゼネカ

MEK阻害薬「Koselugo」(selumetinib)は、神経線維腫症1型(NF1)の適応で成人に対象を拡大しました。同薬は20年に2歳以上の小児、25年に1歳以上の小児を対象に承認。NF1は幼少期に診断され、成人期まで進行が見られる症候があることが知られています。日本でも今年8月に成人対象に承認を取得しました。

 

Keytruda/Padcev|米メルク/アステラス製薬

米メルクの抗PD-1抗体「Keytruda」(pembrolizumab)とアステラス製薬の抗ネクチン-4抗体薬物複合体(ADC)「Padcev」(enfortumab vedotin)の併用療法は、シスプラチン不適応の筋層浸潤性膀胱がんの術前術後の補助療法として承認されました。Keytrudaは、皮下投与製剤の「Keytruda QLEX」も使用できます。承認の根拠となったP3試験では、主要評価項目である無イベント生存期間について、手術単独群と比べて腫瘍の再発・病勢進行または死亡のリスクを60%低減。欧州でも同適応で申請中です。

 

Imfinzi|英アストラゼネカ

抗PD-L1抗体「Imfinzi」(durvalumab)は、切除可能な早期または局所進行の胃がん・胃食道接合部がんの術前術後補助療法に適応拡大。術前術後の化学療法併用補助療法と、その後に続く単剤療法で構成されています。P3試験では、化学療法単独と比べて進行・再発・死亡のリスクを29%減少させました。日本や欧州でも申請中です。

 

Imdelltra|米アムジェン

抗DLL3/CD3二重特異性抗体「Imdelltra」(tarlatamab)は、成人の進展型小細胞肺がんの適応で完全承認を取得しました。同薬は24年5月に迅速承認を取得。検証的P3試験で化学療法と比べて死亡リスクを40%低減することが示され、完全承認に移行しました。日本では昨年12月に承認されています。

 

精神

Caplyta|米ジョンソン・エンド・ジョンソン

非定型抗精神病薬「Caplyta」(lumateperone)は、成人の大うつ病障害に対する抗うつ薬の補助療法として新たに承認を取得。抗うつ薬への上乗せを検証した2つのP3試験で、プラセボに比べて統計的に有意かつ臨床的に意義ある改善を示しました。同薬は19年に統合失調症の適応で、21年に双極性障害を対象に承認されています。

 

Eylea HD|米リジェネロン

眼科用VEGF阻害薬「Eylea HD」(aflibercept)は、網膜静脈閉塞症に伴う黄斑浮腫に適応拡大。同疾患では従来は2mg製剤のみが承認されていましたが、高用量製剤の承認で最大8週ごとの投与が可能となりました。日本ではバイエル薬品が今年5月に申請しています。

 

Elevidys|米サレプタ

デュシェンヌ型筋ジストロフィーに対する遺伝子治療薬「Elevidys」(delandistrogene moxeparvovec)は、対象を4歳以上の歩行可能な小児患者に限定するよう添付文書を改訂しました。同薬は23年に4~5歳の歩行可能な小児を対象に承認され、翌年に歩行不能な患者も含めて4歳以上の小児に対象を拡大(歩行不能な患者は迅速承認)。その後、歩行不能な患者で急性肝不全による死亡例が確認されたことを受け、添付文書を改訂しました。

 

【バイオシミラー】ヘンリウスのpertuzumabなど

【2025年11月に米FDAが承認したバイオシミラー】〈製品名/一般名/社名(国)/適応〉 |Poherdy/pertuzumab/ヘンリウス(中国)/転移性乳がん、早期乳がん |Osvyrti/denosumab/アコード・バイオ(アメリカ)/骨折リスクの高い骨粗鬆症、内分泌療法を受ける骨折リスクの高い患者の骨量増加など |Jubereq/denosumab/アコード・バイオ(アメリカ)/多発性骨髄腫や骨転移を有する固形がんの骨関連事象予防、骨巨細胞腫、悪性腫瘍に伴う高カルシウム血症 |Armlupeg/pegfilgrastim/ルビン(インド)/抗がん剤治療による発熱性好中球減少症の発症抑制、骨髄抑制線量に相当する放射線に急性暴露された患者の生存率向上 |※米FDA(食品医薬品局)や各社の発表資料をもとに作成。

 

Poherdy|中国ヘンリウス

HER2乳がん治療薬「Poherdy」は、米国初の「Perjeta」(pertuzumab)のバイオシミラー。米国での商業化は提携先の米オルガノンが行います。

 

Osvyrti/Jubereq|米アコード・バイオ

「Osvyrti」と「Jubereq」は、米国で8番目となる抗RANKL抗体denosumabのバイオシミラー。アコードが独自に開発したバイオシミラーは初めて。Osvyrtiは骨粗鬆症治療薬「Prolia」、Jubereqは骨巨細胞腫などの治療薬「Xgeva」に対応します。

 

Armlupeg|インド・ルピン

「Armlupeg」は、持続型G-CSF製剤「Neulasta」(pegfilgrastim)のバイオシミラー。同薬のバイオシミラーは米国では7剤目となります。

 

AnswersNews編集部が製薬企業をレポート

あわせて読みたい

メールでニュースを受け取る

  • 新着記事が届く
  • 業界ニュースがコンパクトにわかる

オススメの記事

人気記事

メールでニュースを受け取る

メールでニュースを受け取る

  • 新着記事が届く
  • 業界ニュースがコンパクトにわかる