
(写真:ロイター)
[ワシントン ロイター]米国のドナルド・トランプ大統領は、欧米の主要な製薬企業の幹部に対し、米国内の処方薬の価格を他国に合わせて引き下げるよう要求する書簡を送付した。ホワイトハウスが7月31日に発表した。
トランプ氏は5月、包括的な大統領令に署名し、製薬企業に対して米国での医薬品価格を海外と同一水準とするよう求めた。これに企業が応じない場合。政府は価格引き下げのための規制を制定したり、海外から安価な医薬品を購入したりといった措置を講じる可能性があるとしていた。
ホワイトハウスによると、トランプ氏は米イーライリリー、仏サノフィ、米リジェネロン、米メルク、米ジョンソン・エンド・ジョンソン、英アストラゼネカといった企業のCEO(最高経営責任者)に書簡を送った。
製薬企業の対応に強い不満
トランプ氏は書簡の写しを自身のSNS「Truth Social」に投稿した。書簡では「この重要な問題の解決に向けて私の政権が受け取った提案のほとんどは、従来と同じことの繰り返しだった。すなわち、責任を転嫁し、何十億ドルもの補助金を求めるものばかりだ」と製薬企業の対応に強い不満を示した。
31日の株式市場では、米ファイザー、イーライリリー、米ギリアド・サイエンシズがそれぞれ2%ほど下げて取引を終えた。NYSE Arca Pharmaceutical Indexは3%下落した。
トランプ氏は書簡で、メディケイドに加入するすべての患者に対して、いわゆる最恵国待遇で医薬品を提供するよう要求。新薬についてもこの価格設定を保証するよう求めた。これらは、米国の処方薬の価格をOECD(経済協力開発機構)加盟国の最低水準まで引き下げることを目指している。
トランプ氏はまた、他国での価格引き上げによる収益の増加分を、政府との合意に基づいて米国の患者と納税者に還元しなければならないと指摘。さらに、他国に米国より低い価格で医薬品を提供しないよう求め、米国で最恵国価格で販売するなら、政権は中間業者を排除して患者に直接販売する方法を提供するとしている。
トランプ氏は各社に対し、9月29日までに拘束力のあるコミットメントを回答するよう要請。「もし応じないなら、我々は米国民を不当な価格から守るためにあらゆる手段を講じる」と警告した。
「やみくもな要求に過ぎない」
専門家らは、製薬企業が価格引き下げに応じる可能性は低いと見ている。
ヴァンダービルト大の健康政策教授であるステイシー・デュセツィーナ氏は、「企業は既存製品の一部について、直接販売によって現在より低い価格で販売できるか検討するだろう」と指摘。UBSのアナリスト、トラン・フイン氏は、書簡の内容は従来の要求の繰り返しであり、業界の影響はほとんどないだろうとの見方を示した上で、「やみくもな要求に過ぎない」と評した。
トランプ氏はすでに、企業に自主的な行動変容を促しており、一部の企業は米国に新たな製造拠点を設けることなどを表明している。
米国の患者は他国に比べて処方薬に圧倒的に高い費用を支払っており、その差が3倍近くに及ぶものも珍しくない。さらに、米国は医薬品の研究開発に多額の投資を行っている。製薬業界は、大幅な価格引き下げはイノベーションを阻害すると指摘している。
ファイザー、スイス・ノバルティス、米アッヴィ、独メルクの米国部門EMDセローノといった製薬企業は、トランプ政権との協力に前向きな姿勢を示している。ファイザーの広報担当者は「我々はアクセスと価格を改善するため政権や議会と緊密に連携している。協議は実りあるものとなっている」と話した。
(取材:Jeff Mason/Nandita Bose/Patrick Wingrove/Michael Erman/Christy Santhosh、 執筆:Ahmed Aboulenein、編集:Bill Berkrot、翻訳:AnswersNews)




 
				


 
								 
								
 
											 
											 
											 
											 
											



