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MR数、24年度は6.6%減で過去最大の減少率…MR1000人以上の企業は半減、早期退職の影響大きく

更新日

穴迫励二

製薬企業のMR削減に歯止めがかかりません。MR認定センターがまとめた「2025年版MR白書」によると、24年度(25年3月末時点)の総数は前年度比3073人減の4万3646人で、減少率は6.6%と過去最大でした。24年度は内資系企業で早期退職者の募集が相次いで行われ、営業戦力の縮小傾向は鮮明です。

 

 

コロナ禍上回る減少

国内のMR数は13年度にピークに達し、その後11年連続で減少。この10年で2万1000人減りました。特に、削減が加速した18年度以降は年平均2684人減というペースで推移しており、いよいよ3万人台も現実的なものとなってきています。背景にあるのは、日本市場の低成長と、製品構成の希少疾患領域へのシフト。医師の情報収集チャネルが多様化し、MRをある程度減らしても売り上げに大きな影響はないとの判断もあるようです。

 

【MRの減少数・率の推移】〈年度/総MR数(人)/減少数(人)/減少率(%)〉2014/64,657/▲ 1,095/▲ 1.7|2015/64,135/▲ 522/▲ 0.8|2016/63,185/▲ 950/▲ 1.5|2017/62,433/▲ 752/▲ 1.2|2018/59,900/▲ 2,533/▲ 4.1|2019/57,158/▲ 2,742/▲ 4.6|2020/53,586/▲ 3,572/▲ 6.2|2021/51,848/▲ 1,738/▲ 3.2|2022/49,682/▲ 2,166/▲ 4.2|2023/46,719/▲ 2,963/▲ 6.0|2024/43,646/▲ 3,073/▲ 6.6|※MR認定センター「MR白書」をもとに作成

 

24年度の減少率6.6%は、新型コロナウイルス感染症の流行で営業活動が制限された20年度の6.2%を上回っており、減少数も20年度同様に3000人を上回りました。白書では「MRを多く雇用してきた企業での早期希望退職の影響が大きかったとみられる」と分析しています。24年度は、武田薬品工業、田辺三菱製薬、住友ファーマなどで早期退職が行われました。

 

投資ファンドに売却された田辺三菱は、今年3月末時点の従業員数が1年前から1087人減少しました(自然減含む)。職種別の減少数は明らかになっていませんが、MRを相当数含むことは想像に難くありません。住友ファーマの早期退職では604人が会社を去り、武田薬品は2度目の「フューチャー・キャリア・プログラム」により680人が退職しました。

 

協和キリンが昨年行った早期退職は主に研究部門が対象でしたが、2年連続となる今年の募集(退職日は9月末)では営業部門も含まれます。トーアエイヨーは早期退職とともに、全国の支店・営業所を全廃する組織再編も行いました。営業体制の見直しは企業規模の大小を問わず進んでいます。

 

内資は2桁減

こうした動きを背景に、MRを1000人以上抱える企業数は前年度の11社から5社減って6社となりました。17年度のピーク時には22社を数えましたが、以降は年を追って少なくなっており、21年度から4年連続の減少です。MR数1000人以上の企業に在籍するMRは8843人と前年度から一気に4割近く減り、「強いインパクトを残す結果」(白書)となりました。このセグメントに属するMR数は、17年度は3万3543人おり、これと比べると4分の1程度まで縮小しています。

 

【MR1000人以上の企業数の推移】〈年度/企業数(左軸)/在籍MR数(右軸))14/20/3.4229|15/20/3.3155|16/20/3.198|17/22/3.3543|18/17/2.7648|19/17/2.6035|20/17/2.4066|21/14/1.8976|22/12/1.6481|23/11/1.4594|24/6/0.8843|※MP認定センター「MR白書」をもとに作成

 

現在、MR数が最も多い企業は第一三共で1600人、MSD(1400人)や日本イーライリリー(同)が続きます。これにグラクソ・スミスクライン、大塚製薬、中外製薬を加えた6社が1000人以上のMRを抱える企業です。かつて多数の営業戦力を保有していたファイザー、武田薬品、アステラス製薬などは、早期退職によってここ数年でその数を大きく減らしています。

 

リストラを公表することが少ない外資系企業の実態は不明ですが、24年度のMR減少数は外資の462人(2.9%)に対して内資は2587人(10.8%)と圧倒的な差が出ました。外資の人員適正化が一定程度進んだのか、あるいは一時的なペースダウンなのか、現時点で判断するのは難しそうです。

 

【内資・外資別 MR数の推移】〈年度/内資系/外資系〉|12/3.6604/2.3662|13/3.7085/2.4047|14/3.7485/2.2960|15/3.7493/2.2552|16/3.6844/2.2217|17/3.6721/2.1973|18/3.5455/2.0763|19/3.3463/1.9711|20/3.1501/1.8101|21/3.0322/1.7512|22/2.8365/1.6831|23/2.6639/1.5707|24/2.4052/1.5245|※MR認定センター「MR白書」をもとに作成

 

中途採用は増加傾向

MR数の減少には、低調な新卒採用も関係しています。MR認定センターの調査に答えた198社のうち、3分の2に当たる130社は25年4月の新卒採用を行っておらず、特に外資は55社中45社が新卒者を採用していません。こうした傾向はここ数年続いています。

 

一方で、中途採用は全体の71.5%の企業が実施。中途採用の実施率は年々上昇傾向にあり、24年度は前年度から5ポイント以上増加しました。人材の流動性が高まる中、ハイパフォーマーへの人材ニーズは根強くあります。

 

IQVIA調べの国内医療用医薬品売上高(薬価ベース)を総MR数で割ったMR1人当たりの生産性は上昇の一途をたどっています。24年度は前年度から0.2億円伸びて2.63億円となりました。IQVIAの予測によると、29年度までの市場成長率は年平均1.2%と低調ですが、このままMRの削減が進めば2年後には3億円に到達しているかもしれません。

 

MR数の上位企業の生産性は、第一三共が24年度国内売上高4769億円に対してMR1600人で3.0億円。「エンハーツ」などがん領域の成長を見込み、早期退職の実施は考えていないと表明しています。MSDは国内売上高4433億円(24年、決算公告ベース)で生産性が3.2億円に上りますが、リリーは2282億円(同)で1.6億円にとどまっています。

 

【MR1人あたり生産性の推移】〈年度/MR数(人、左軸)/国内市場(億円、左軸)/生産性(億円、右軸))13/6.58/10.02/1.52|14/6.47/9.96/1.54|15/6.41/10.84/1.69|16/6.32/10.43/1.65|17/6.24/10.52/1.68|18/5.99/10.33/1.72|19/5.72/10.63/1.86|20/5.36/10.35/1.93|21/5.18/10.69/2.06|22/4.97/10.97/2.21|23/4.67/11.37/2.43|24/4.36/11.49/2.63|※MR数はMR認定センター、国内市場(薬価ベース)はIQVIA調べ。1人あたり生産性は編集部算出

 

AnswersNews編集部が製薬企業をレポート

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