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ニュース解説

アステラス、オープンイノベーション拠点「SakuLab-Tsukuba」の現在地とこれから

更新日

前田雄樹

アステラス製薬がつくば研究センター(茨城県つくば市)の敷地内に2023年10月に設立したオープンイノベーション拠点「SakuLab-Tsukuba」。これまでに創薬スタートアップを中心に10社・団体が入居し、臨床ステージに進む開発品が出るなど成果も出始めています。同社オープンイノベーションマネジメントヘッドの後藤正英氏が、SakuLab-Tsukubaの現在地とこれからを語りました。

 

 

いいサイエンスを引き付ける力を高める

アステラスでは現在、国内外で3つのインキュベーションラボを運営しています。そのうちの1つがSakuLab-Tsukubaで、残る2つは米ケンブリッジの「SakuLab-Cambridge MA」と、千葉・柏の葉の「TME iLab」。SakuLab-Cambridge MAはアステラスと共同研究を行うスタートアップのための研究施設で、国立がん研究センター東病院に隣接するTME iLabはがんに特化したオープンイノベーション拠点です。

 

一方、SakuLab-Tsukubaは疾患領域やモダリティに制限を設けておらず、アステラスとの提携も前提としていません。その理由について後藤氏は「日本はライフサイエンスのエコシステムが未成熟。1プレイヤーとしてエコシステムの発展にどう貢献できるかということを常に考えて活動している」と強調。ビジネス上の意義については次のように話します。

 

「10年先のいいソリューションを見つけるためには、目利き力を高めたり、スタートアップやアカデミアとの関係を作っていったりすることが非常に大切。SakuLab-Tsukubaをやることで会社としてレピュテーションも上がっていく。いいサイエンスを引き付ける力を高め、将来のいいサイエンスをものにすることにつながる」

 

SakuLab-Tsukubaはつくば研究センター内の4階建ての建物に入っており、現在は2フロアを入居者に提供。生物系・化学系それぞれの実験ができるシェアラボには基本的な機器・設備が一通りそろっており、細胞選別機のような高額な機器も利用できます。つくば研究センターには新日本科学の動物施設があり、別途契約を結べば動物実験を行うことも可能。このほか共用のオフィスや会議室、ラウンジスペースも備わっています。

 

SakuLab-Tsukubaのシェアラボの写真(2枚)

SakuLab-Tsukubaのシェアラボ

 

Win-Winの関係に

SakuLab-Tsukubaには現在、アカデミアや創薬スタートアップを中心に10社・団体が入居。さらに5社以上と入居に向けた協議が進行中です。後藤氏は「予想を超える入居者数。思った以上に興味を持ってもらえていると感じており、いいスタートが切れている」と手応えを語ります。

 

後藤氏はSakuLab-Tsukubaの魅力として、月額19万8000円(税抜き)という「利用料の安さ」と「アステラス社員による助言・支援」を挙げ、これらにメリットを感じて入居を決める企業・団体が多いと話します。つくば研究センターでは700~800人の研究者が働いており、個々の企業・団体が抱える課題や困りごとに応じてSakuLabの運営担当者が専門知識を持つアステラス社員を紹介。入居者からも好評だといいます。

 

SakuLab-Tsukubaでは大小さまざまなイベントが行われ、アステラス社員のみならず、アカデミア、ベンチャーキャピタル(VC)、製薬企業との協業創出に向けたコミュニケーションの機会を提供。「アステラスと入居者がWin-Winの関係にならないといけないと考えている。入居者にはアステラスの専門知識やリソースを提供することで創薬を応援したいし、アステラス社員にはスタートアップのスピードや情熱を吸収してほしい」(後藤氏)。

 

入居者には研究センター内の社員食堂を利用できるようにしていますが、交流を生む仕掛けについてはさらに工夫を重ねていく考えです。

 

SakuLab-Tsukubaの共用オフィスとラウンジの写真(2枚)

SakuLab-Tsukubaの共用オフィスとラウンジ

 

入居増加へ施設拡張

設立から2年たち、「思った以上に盛り上がってきている」というSakuLab-Tsukuba。さらなる入居者の増加を見据え、施設の拡張を進めています。拡張により、現在15社・団体としている入居可能数は27年にかけて20社・団体に拡大。入居者のニーズを反映して個室オフィスや実験個室を整備するほか、最新実験機器のデモ機を設置するスペースを設ける予定です。27年には入居者数が17~18社・団体になる見通しだといいます。

 

SakuLab-Tsukubaには海外からも入居の引き合いがあり、すでに韓国のスタートアップ2社が入居。ほかにも、米国、シンガポール、台湾、イタリアなどから関心が寄せられているといい、後藤氏は「日本の中で日本語だけでやっていても成長できない。海外のスタートアップにもどんどん入ってきてもらえたら」と話します。

 

すでに外部VCからの資金調達や大手企業との提携を実現した事例も出てきており、25年12月にはテンセグリティファーマがリードプログラムの臨床第1相(P1)試験を開始するなど、入居者のビジネスにも着実な進展が見られます。

 

SakuLabは「咲く」と「桜」に「ラボ」を組み合わせた言葉で、「花開くような研究がここから生まれていってほしいという思いを込めた」と後藤氏。「盛り上がりを持続させ、成功事例を継続的に創出し、人や技術が循環するエコシステムへと発展させていきたい。10年先を見据え、さまざまなステークホルダーを巻き込みながら、日本のエコシステムの発展に貢献できるよう活動していく」と話しました。

 

AnswersNews編集部が製薬企業をレポート

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