
「10年で国内売り上げ倍増」の目標を掲げるブリストル・マイヤーズスクイブ。がん免疫療法薬「オプジーボ」の販売が停滞し、主力製品の特許切れを控えるなか、CAR-T細胞療法製品など近年発売した新製品や今後承認を見込む新薬の拡大で目標達成を目指します。勝間英仁社長が3月16日の記者会見で将来展望を語りました。
停滞続く国内業績、新製品の貢献は27~28年以降本格化
売り上げ倍増を目指す「ムーンショット計画」は、2022年(売上高2066億円)を起点として32年に4000億円規模まで拡大させるもの。27年以降を「新薬ラッシュ」の期間とし、適応拡大を含む承認数も過去5年比で倍増させる計画です。
一方、足元の業績は停滞しています。売上高は22年に過去最高を記録したものの、その後は市場競争の影響などで減少。24年は前年比8%減の1902億円で、国内で事業活動を行う外資製薬企業の中では11位(決算公告ベースの集計)にとどまっています。
25年の業績は集計中ですが、勝間氏は「回復基調には至っていない」と話します。小野薬品工業と共同販促し、利益を折半しているオプジーボは、薬価引き下げや競合の影響で売り上げが停滞。抗凝固薬「エリキュース」はクラストップの「リクシアナ」(第一三共)に押されてシェアを落としています。

エリキュースに後発品、オレンシアは薬価下げ
26年も厳しい状況は続きます。エリキュースには後発医薬品の参入が想定され、関節リウマチ治療薬「オレンシア」は革新的新薬薬価維持制度(旧新薬創出加算)の累積額控除によって4月に薬価が33%引き下げられます。販売元の小野薬品は同薬の26年3月期の売上収益を前期比5.2%増の280億円と予想。来期も1桁台の成長が見込めそうな勢いでしたが、薬価引き下げで減収を余儀なくされそうです。
こうしたマイナス材料をカバーする新製品の貢献が本格化するのは27~28年ごろと見ており、売り上げ倍増の実質的なスタートはそこからとなります。目標達成に向けては、急ピッチで業績拡大を進める必要がありそうです。
22年以降5新薬投入
成長の原動力となる新薬は、22年以降に5製品を発売しています。閉塞性肥大型心筋症治療薬「カムザイオス」(25年5月発売)は、ピーク時売上高予想が219億円。グローバルでは25年に前年比77%増の10.68億ドル(約1700億円)に達しており、日本でも事業成長を支えそうです。パイプラインには後継品として開発する「BMS-986435」(開発番号)も臨床第2相試験(P2)の段階に控えています。
潰瘍性大腸炎治療薬のS1P受容体作動薬「セポジア」(25年3月発売)は、ピーク時売上高を174億円と予想。多くの生物学的製剤やJAK阻害薬が市場にひしめく競合の激しい領域で、他社が開発中の新薬も数多くあります。ただ、病態が複雑な疾患だけに選択肢の1つとなることは確かで、実臨床でのポジショニングをどう確立していけるかがカギになりそうです。

オプジーボにも成長余地
骨髄異形成症候群に伴う貧血の治療薬「レプロジル」(24年5月発売)は費用対効果評価で今年2月に薬価が8.3%引き下げられましたが、成長ポートフォリオの一角を占めることに変わりはありません。がん領域のROS1阻害薬「オータイロ」(24年11月発売)のピーク時売上高予測は21億円ですが、ROS1融合遺伝子陽性非小細胞肺がんでの発売後、NTRK融合遺伝子陽性固形がんの適応を追加しました。
オプジーボも成長の余地を残します。25年は抗CTLA-4抗体「ヤーボイ」との併用で、MSI-High結腸・直腸がんと肝細胞がんの適応追加が承認されました。勝間氏は「競合は確かに激しいが、ビジネスは順調。肺がんの適応ではシェアも伸びている」と強調。屋台骨として売り上げの維持・拡大を期待します。
30年までに適応拡大含め10以上の新薬発売
CAR-T細胞療法「ブレヤンジ」の成長にも期待します。ブリストルはCAR-T療法のリーディングカンパニーを自負し、開発から製造、制度設計まで含めたエコシステム型のビジネスとしての展開を訴えます。
現在のCAR-T細胞療法は完全な個別化医療で、製造プロセスが非常に複雑です。同社は国内でCAR-T製品を販売する製薬企業では唯一、パートナー企業と連携して前工程(患者細胞の加工)を日本国内で行い、品質や安定供給を確保。収益面だけでなく、戦略的な基盤事業としても位置付けています。
新薬開発では、30年までに適応拡大を合わせて10以上の上市を見込んでいます。特にニューロサイエンスでは、日本の高齢化も踏まえてアルツハイマー病や精神疾患などを重視する考えです。

記者会見で事業戦略を説明した勝間社長(右)。左は研究開発本部長のアンジェラ・デイビス氏
組織拡大せず新薬ラッシュに対応
こうした計画を会社内部から支えるのが組織の再構築戦略です。特にプラットフォームとしてのAIやDX(デジタルトランスフォーメーション)によって生産性を向上。規模の拡大は避け、社内プロセスを刷新します。AI環境は全社員向けに整えており、8割が日常業務に活用。価値創造に踏み込むパワーユーザーも3割に上ります。
AI活用は組織を拡大せず、新薬ラッシュに対応するためでもあります。MRの顧客対応では、医師のニーズを可視化することで会話の質とインパクトを向上させます。今後の営業体制について勝間氏は「MRは少数精鋭で他社との比較でも少なめ。削減のニーズは薄い」と説明。主力品が特許切れを迎える中で組織全体の最適化は必要で、倍増する新薬上市をにらみながら事業戦略と体制を再構築していくことが重要テーマとなっています。





