
茨城県の鹿嶋市と神栖市にまたがる「鹿島臨海工業地帯」。その一角をなす波崎工業団地に、沢井製薬の鹿島工場はあります。
2015年に田辺三菱から譲受
同工場は2015年、田辺三菱製薬(現・田辺ファーマ)から譲渡され、沢井の6番目の工場として稼働を始めました。現在は、抗がん剤などの高薬理活性医薬品を含め約80品目の固形剤を取り扱っており、年間約20億錠を生産しています。
もともとは1978年に三菱化成が建てた歴史の長い工場。田辺三菱は17年ごろに閉鎖することを計画していましたが、生産増強を目指す沢井が譲り受け、従業員もほとんどが沢井に移りました。田辺三菱時代は注射剤も製造していましたが、現在は固形剤に一本化。旧注射剤エリアは改修し、新たな固形剤製造設備の導入を進めています。
同工場管理部の池田篤史さんはその理由について「売り上げ拡大や昨今の供給不足に伴い、生産量アップに耐えられる設備と人員体制を整えることに力を入れている」と説明。当初は「施設を増強して、現在主流の3交代勤務を2交代にすることを考えていた」(池田さん)ものの、現在は需要増への対応を優先させています。国内の医療用医薬品の供給数量に占める沢井のシェアは8.4%。「12錠に1錠が沢井製品」となるなか、まずは生産に柔軟性を持たせることに重点を置いて設備と体制の整備に取り組んでいます。
工場の主力ラインは第2製剤棟で、製剤と包装を担当。第3、第4製剤棟では高薬理活性品や小スケール品を手掛けています。製造に携わるのは工場全体で約220人。間接部門なども含めると、鹿島工場では約350人が働いています。

【左上】案内してくれた池田さん。奥に写るのが第2製剤棟【右上】第2製剤棟の攪拌造粒機。約600リットル仕込み量のものが2台あるという(沢井製薬提供)【左下】コーティングの機械。製品の切り替え作業中。多品種生産の最適化を実現するために、効率的な切り替え作業を追求している【右下】品質管理部なども入る第4製剤棟
第4製剤棟には、生産技術部や品質管理部のほか、研究開発部門傘下の鹿島分析グループも入っており、鹿島工場や他工場からの依頼で分析業務を行っています。品質管理はこの半年で人員を大幅に増強しました。同社では23年に九州工場(福岡県飯塚市)で安定性試験の不正が発覚。これを受け、鹿島工場もクオリティカルチャーの再構築に取り組んでいます。アンケートで従業員の品質への意識を可視化するとともに、現場では設備に関する知識を深化。後発医薬品の医療費削減効果を数字で示したり、家族や友人など身近な人が服用していることを意識したりと、自分ごと化を促す取り組みも行われています。
グループ全体に広がる「改善活動」
他工場との人材交流を重ねながら、沢井の工場として10年歩んできた鹿島工場。工業団地に立地していることもあり、安全に対する意識は沢井グループでも随一だといいます。同工場で始まった「改善活動」はグループ全体に広がりました。製造部長の田谷多代子さんは「件数や気づくポイントは沢井の中でもレベルが高い」と自負します。
一例としてラインチーフの田村駿弥さんが紹介してくれたのは、ある設備の粉漏れによる生産量落ち込みの解決。消耗品の交換タイミングに気付けないのが原因だとして、1時間あたりの粉漏れ量のデータを収集し、消耗するタイミングの見極め方をチームで検討しました。その結果、処方換算でおよそ1500人分生産を増やすことができ、金額にして年間1000万円程度の効果をもたらしたといいます。「品目の切り替えがあるなかを縫い、半年かけて検討しました」(田村さん)。
田谷さんは「全員が『年に数件は課題を見つけよう』という考え方をとっています。小さなことから問題意識を持って自ら解決し、それを楽しむことが日々のやりがいにつながる」と言い、それが声を上げやすい環境づくりにもつながると話します。

【上段】包装ラインは女性も多く活躍している。旧社以前の備品も大切に使う文化がある(左上は沢井製薬提供)【左下】製造部長の田谷さん【右下】ラインチーフの田村さん(右)と安藤拓実さん(左)。安藤さんは田村さんら先輩の背を見てチーフを目指したと話す
鹿島工場では、長く働ける環境づくりに向けて、心身の健康や介護・育児にまつわる問題へのサポートを充実化。保健スタッフが幅広い相談に応じているといいます。
近年は女性の採用も増え、従来から女性が活躍する包装ラインだけでなく、製剤ラインにも女性が入れる工程を増やしています。田谷さんは「(力仕事の多い工程でも)自動化や無人化も活用してさらに推進していけたら。チーフや管理職を目指す女性も増やしていきたい」。自身は「世話好きなところや、誰かが育つのを嬉しく思う性格もあってか、マネジメントをするようになってどんどん仕事が楽しくなった」と言います。社員それぞれが自身のモチベーションでキャリアを積めるよう、キャリアについて話す機会を大切にしていると話しました。

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