
早いもので今年もあと1週間余り。皆さんにとって今年はどんな1年だったでしょうか?今回は今年最後のコラムなので、私が1年間書いてきた記事を並べつつ、あらためて読み返す中で感じたことを共有できたらと思います。
1月:年始からぼやかずにはいられない「中間年改定」と「創薬支援基金」のこと
2月:本田圭佑さんの「研究者にとにかくばら撒け」で感じた「もっと知られるべき」という思い
3月:高額療養費の引き上げ、全面見送りは良かったが…モヤモヤが残る
4月:映画「はたらく細胞」が開くサイエンスの扉…興味やリテラシーを高めるために私たちにできることは
7月:市民と取り組む「医療のエコ活動」私たちが行っているアドボカシー活動の実例
9月:10年で創薬大国に変貌した中国、日本はこれから10年でどう変われるか
10月:大学病院を受診して「ちょっと安すぎない?」と心配になった話
今年は私が仕事にしているアドボカシーについて書くことが多かったと感じていますが、ほかにも医療制度、創薬や研究、科学リテラシーといった話題を取り上げてきました。1つ1つがとても大切なテーマだと思いますが、あらためて読み返してみると、これらは個別の話題ではなく、1本の線で貫かれているように思えてきました。
その線とは、制度上の課題を解消するだけでは医療も創薬も持続しない、ということです。日本が直面しているのは、単なる制度上の課題というよりも、社会全体の理解と関係性の不足によって生じている構造的な問題なのではないかと感じています。
個人的な体験から見えてきたものもありました。大学病院を受診し、「これだけの医療がこの価格で受けられるのは安すぎではないか」と感じたこと。念願だった超純水を初めて口にした感動。映画「はたらく細胞」を見た子どもたちが科学に興味を持つ姿。1つ1つは日常のワンシーンですが、医療や科学が社会でどう受け止められ、その価値がどのように伝わっていくのかを考える上で大きなヒントになったように思います。
対話と理解の大切さ
そんな中で今年、強く感じたのは、科学や医療を支えるのは「対話と理解」なのではないかということです。制度や仕組みはもちろん重要ですが、それを生かすのは企業、行政、政治、アカデミア、医療機関、そして一般社会に属する多様な個人です。それぞれが互いの立場を理解し、ともに未来像を描いていけるかにかかっていると感じます。
今年から、非営利団体「Japan Pharmaceutical & BioScience Society(Japan PBSS)」の活動に広報・アドボカシー担当として関わるようになりました。Japan PBSSは、創薬に携わるさまざまな立場の個人が集まり、日常では交わることの少ない個々の知見が混ざり合う場です。人と知が交流することで、互いの前提を理解し、新たな問いや知見が生まれる。これは、制度や仕組みだけでは生み出すことのできない価値だと思っています。本業のアドボカシーの仕事でも同じようなことを感じていて、こと現代においては非常に重要なことだと考えています。
関連記事:創薬活性化へ 個のつながり創出し知見流動化―Japan PBSSが活動開始
医療や創薬は、企業の努力だけでも、医療者や研究者の献身だけでも成り立ちません。制度改革だけで解決できるわけでもありません。必要なのは、多様なステークホルダーが同じテーブルにつき、未来を共有し、知見を交換し合う文化なのではないかと感じています。
今年も1年、コラムを読んでいただきありがとうございました。皆さん、よいお年を!
※コラムの内容は個人の見解であり、所属企業を代表するものではありません。
| 黒坂宗久(くろさか・むねひさ)Ph.D.。アステラス製薬アドボカシー部所属。免疫学の分野で博士号を取得後、約10年間研究に従事(米国立がん研究所、産業技術総合研究所、国内製薬企業)した後、 Clarivate AnalyticsとEvaluateで約10年間、主に製薬企業に対して戦略策定や事業性評価に必要なビジネス分析(マーケット情報、売上予測、NPV、成功確率、開発コストなど)を提供。2023年6月から現職でアドボカシー活動に携わる。SNSなどでも積極的に発信を行っている。 X:@munehisa_k note:https://note.com/kurosakalibrary LinkedIn:https://www.linkedin.com/in/mkurosaka/ |






