
妊娠中のアセトアミノフェン使用と自閉症の関連に関する主張を発表した米国のドナルド・トランプ大統領。メディケア・メディケイドサービスセンターのメフメット・オズ長官、ドロシー・フィンク保健次官代理、国立衛生研究所のジェイ・バッタチャリア所長、国食品医薬品局のマーティ・マカリー長官、ロバート・F・ケネディ・ジュニア保健福祉省長官とともに記者会見した(ロイター)
[ロンドン、ジュネーブ ロイター]米トランプ政権が、解熱鎮痛薬アセトアミノフェンの妊娠中の使用と子どもの自閉症の関連を主張していることに対し、EU(欧州連合)や英国の保健機関が異議を唱えている。WHO(世界保健機関)も、関連を結論付けるには相当な注意が必要だと指摘している。
ドナルド・トランプ大統領は9月22日、妊娠中のアセトアミノフェンの使用と自閉症を結び付け、科学的根拠に裏付けられていない主張を米国の医療政策の最前線に持ち出した。
EMA(欧州医薬品庁)は23日、妊娠中のアセトアミノフェンの使用について、現在のEUの推奨内容に変更を迫るような新たなエビデンスはないと指摘。EMAは声明で「入手可能なエビデンスは、妊娠中のアセトアミノフェンの使用と子どもの自閉症の間に何の関連も見出していない」とし、必要に応じて妊娠中でも使用できると強調した。英国の当局も同日、アセトアミノフェンは妊婦にも安全に使用できるとの見解を示した。
因果関係「結論付けるには相当な注意必要」
WHOのタリク・ヤシャレビッチ報道官はジュネーブで開かれた記者会見で「妊娠中のアセトアミノフェン使用と自閉症の関連に関するエビデンスには一貫性がない」と指摘。関連を示唆する研究はいくつか存在するものの、その後の研究では確認されていないとし「この再現性の欠如は、因果関係の結論を出す際に相当な注意を促す」と語った。
妊娠中のアセトアミノフェン使用と自閉症の関連性に関する最大の科学的研究論文の筆頭著者であるヴィクトル・アールクヴィスト氏は、「トランプ政権は入手可能なエビデンスを誤解しているようだ。われわれは妊娠中のアセトアミノフェン使用が自閉症を引き起こすという裏付けを見出していない」と述べた。同氏らの研究は、スウェーデンで250万件の妊娠について調べたものだ。同氏は、妊娠中のあらゆる薬剤の使用は子どもに悪影響を及ぼすが、それは通常、薬剤自体が原因ではなく、薬剤を必要とする基礎的な健康問題が原因だと語った。
22日にホワイトハウスで行われた異例の記者会見で、トランプ氏は妊娠中の女性や幼い子どもの親に対し、解熱鎮痛剤の服用を控えるよう繰り返し呼びかけるとともに、ワクチンをまとめて、あるいは幼いうちから接種しないよう求めた。
トランプ氏の主張は医学界の見解に反する。医学界は、数多くの研究データに基づき、アセトアミノフェンが妊娠中の女性の健康に安全は役割を果たすとしている。
WHOのヤシャレビッチ報道官は、ワクチンは自閉症を引き起こさないとし、生命と健康を守る上での重要性を強調。「これは科学が証明していることであり、それを疑うべきではない」と述べた。
(取材:Maggie Fick/Emma Farge/Vitalii Yalahuzian/Mariam Sunny/Adam Jourdan、編集:Alex Richardson、翻訳:AnswersNews)
欧州各国が反論
[ロイター]WHOや欧州の当局は相次いでワクチンやアセトアミノフェンの安全性に関するコメントを発表している。
WHOのタリク・ヤシャレビッチ報道官
「私たちは、ワクチンが自閉症を引き起こすことはないと知っている。ワクチンは数えきれないほどの命を救う。これは科学が証明していることであり、それを疑うべきではない」
EMA
「入手可能なエビデンスは、妊娠中のアセトアミノフェン使用と自閉症の間に何の関連性も見出していない」との声明を発表。最低限の用量と頻度であれば、必要に応じて妊娠中も使用できるとの見解を示した。
英国医薬品・医療製品規制庁のアリソン・ケイブ最高安全責任者
「アセトアミノフェンは、指示通りに使用する場合、妊婦にとって推奨される解熱鎮痛薬の選択肢であり続ける。妊婦は、既存のNHS(国民保険サービス)のガイダンスに従い、妊娠中の医薬品の使用について疑問がある場合は医療専門家に相談すべきだ」
イタリア医薬品庁
「発熱や痛みの治療に幅広く使われているアセトアミノフェンは、臨床上の必要性に応じて妊娠中に使用できる。入手可能なデータは、自閉症や胎児または新生児の奇形リスク増加との関連性を示していない」
スペインのモニカ・ガルシア保健相
「アセトアミノフェンと自閉症を結び付けることは深刻かつ無責任。トランプ氏のメッセージに合理性はなく、それが人々の健康に与える影響についての意識が欠如している。トランプ氏の主張は妊婦を不安にさせる。アセトアミノフェンという安全な治療選択肢があるにも関わらず」(Xへの投稿)
ドイツ保健省
「妊娠中のアセトアミノフェン使用と、ADHDや自閉症スペクトラム障害などの発達障害との間に科学的根拠はない。特に、妊娠中にアセトアミノフェンを服用することが子どもの自閉症を引き起こすというエビデンスはない。たとえば高熱の場合など、妊婦と胎児を危険にさらさないために投薬が必要となる」
スペイン医薬品・医療製品庁
「妊娠中のアセトアミノフェン使用と子どもの自閉症を結び付けるエビデンスはない。臨床的に適応がある場合、常に慎重な使用措置を適用した上で妊婦にアセトアミノフェンを使用することを推奨し続ける」
(取材:Sneha S K/Andreas Rinke、編集:Anil D’Silva、翻訳:AnswersNews)




 
				


 
								 
								
 
											 
											 
											 
											 
											



