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ベーリンガーの経口HER2阻害薬「Hernexeos」やノボの「Wegovy」MASH適応追加など承認―2025年8月に米FDAが承認した新薬

更新日

亀田真由

(写真:ロイター)

 

2025年8月に米FDA(食品医薬品局)が承認した主な新薬と適応拡大を、領域別にまとめました。

 

 

【新薬】サノフィのITP治療薬「Wayrilz」など

【2025年8月に米FDAが承認した主な新薬】*=優先審査、★=ブレークスルーセラピー〈製品名/一般名/社名/適応/開発状況〉|がん|Hernexeos*★/zongertinib/ドイツ/ベーリンガー/HER2遺伝子変異陽性の進行性非小細胞肺がん(成人)/申請|Modeyso*/dordaviprone/アイルランド/ジャズファーマ/H3/K27M変異陽性のびまん性正中グリオーマ(1歳以上の再発患者)/P3(大原薬品)|呼吸器|Brinsupri*/brensocatib/米/インスメッド/非嚢胞性線維症性気管支拡張症(12歳以上)/申請準備中|血液|Dawnzera/donidalorsen/米/アイオニス/遺伝性血管性浮腫の発作の予防(12歳以上)/―|Wayrilz/rilzabrutinib/フランス/サノフィ/持続性または慢性の免疫性血小板減少症(成人)/P3|精神・神経|Leqembi IQLIK/lecanemab/日本/エーザイ/アルツハイマー病による軽度認知障害または軽度認知症の維持療法(成人)/―|その他|Tonmya/cyclobenzaprine/米/トニックス/線維筋痛症(成人)/―|※米FDA(食品医薬品局)や各社の発表資料をもとに作成|※国内開発状況は各社のパイプライン情報などを参照

 

がん

Hernexeos|独ベーリンガーインゲルハイム

経口HER2阻害薬「Hernexeos」(一般名・zongertinib)は、HER2遺伝子変異陽性非小細胞肺がん(NSCLC)の適応で迅速承認を取得しました。対象は、治療歴のある切除不能または転移性の非扁平上皮NSCLCの成人患者。承認の根拠となった臨床第1b相(P1b)試験では客観的奏効率75%を示しました。日本でも申請中です。

 

Modeyso|アイルランド・ジャズファーマシューティカルズ

「Modeyso」(dordaviprone)は、H3 K27M変異陽性のびまん性正中グリオーマの治療薬。前治療後に進行した1歳以上の再発患者を対象に迅速承認されました。小児や若年成人に見られる悪性度の高い脳腫瘍で、同疾患に対する治療薬は米国初となります。ジャズファーマは今年4月の米キメリックス買収で同薬を取得。日本では導出先の大原薬品工業がP3試験を行っています。

 

呼吸器

Brinsupri|米インスメッド

DPP1阻害薬「Brinsupri」(brensocatib)は、非嚢胞性線維症性(非CF性)気管支拡張症治療薬。好中球炎症に関与する好中球セリンプロテアーゼの活性化を抑え、増悪を抑制すると考えられています。欧州でも申請中で、日本では年内に申請を行う見通しです。

 

血液

Dawnzera|米アイオニス

「Dawnzera」(donidalorsen)は、遺伝性血管性浮腫(HAE)の発作予防薬。血漿プレカリクレイン(PKK)の産生を抑制するよう設計された核酸医薬で、4週または8週ごとに投与します。臨床試験では、HAE発作率を有意かつ持続的に減少させました。日本とアジア、欧州では大塚製薬が権利を持っており、欧州で申請済みです。

 

Wayrilz|仏サノフィ

BTK阻害薬「Wayrilz」(rilzabrutinib)は、持続性または慢性の免疫性血小板減少症(ITP)治療薬。対象は、ステロイドなどの前治療で効果不十分な成人患者です。病原性自己抗体の産生やマクロファージによる血小板破壊を抑える作用を持ち、臨床試験では、主要評価項目である持続的な血小板反応でプラセボに対する有意性を示しました。欧州と中国でも申請中で、日本ではP3試験の段階にあります。

 

精神・神経

Leqembi IQLIK|エーザイ

「Leqembi IQLIK」は、抗アミロイドβ抗体「Leqembi」(lecanemab)の皮下注オートインジェクター製剤。アルツハイマー病による軽度認知障害または軽度認知症の維持療法の適応で承認されました。これにより、患者は静注製剤による18カ月の初期治療後、週1回皮下投与の維持治療に移行することが可能となります。初期治療からの使用についても米国で申請中です。

 

その他

Tonmya|米トニックス・ファーマシューティカルズ

「Tonmya」(cyclobenzaprine)は、米国で15年以上ぶりとなる成人の線維筋痛症治療薬。cyclobenzaprineは筋弛緩薬として知られますが、Tonmyaは就寝前に使用する舌下投与の非オピオイド鎮痛薬として承認されました。P3試験では、プラセボに比べて有意に痛みを軽減しました。

 

【適応拡大】「Wegovy」のMASHなど

【2025年8月に米FDAが承認した主な適応拡大】*=優先審査、★=ブレークスルーセラピー〈製品名/一般名/社名/適応/同適応での開発状況|循環器・代謝|Wegovy★/semaglutide/デンマーク/ノボノルディスク/非肝硬変の代謝機能障害関連脂肪肝炎(肝線維化が中等度~高度の成人)/P3|Repatha/evolocumab/米/アムジェン/LDL-Cコントロール不良による主要な心血管イベントのリスクの高い成人/―|精神・神経|Ajovy/fremanezumab/イスラエル/テバ/反復性片頭痛の予防(体重45kg以上の6~17歳の小児)/―|感染症・ワクチン|Actemra/tocilizumab/米/ジェネンテック/COVID-19(全身性コルチコステロイドを投与され、補助酸素や人工呼吸器、ECMOを必要とする2歳以上の小児)/―|※米FDA(食品医薬品局)や各社の発表資料をもとに作成|※国内開発状況は各社のパイプライン情報などを参照

 

循環器・代謝

Wegovy|デンマーク・ノボノルディスク

持続性GLP-1受容体作動薬「Wegovy」(semaglutide)は、新たに肝線維化が中等度~高度(ステージ2または3)の非肝硬変の代謝機能障害関連脂肪肝炎(MASH)の適応で迅速承認を取得。低カロリー食、運動療法の補助療法として活用します。承認の根拠となったP3試験では、「MASHの悪化を伴わない肝線維化の改善」「肝線維化の悪化を伴わないMASHの消失」についてプラセボと比べて高い達成率を示しました。欧州でも申請中で、日本ではP3試験の段階にあります。

 

Repatha|米アムジェン

抗PCSK9抗体「Repatha」(evolocumab)は、LDL-Cコントロール不良による主要な心血管イベントのリスクが高い成人への使用が承認されました。この添付文書改訂により、心血管疾患の診断の事前要件が不要となります。今回の適応拡大と同時に、ホモ接合体家族性高コレステロール血症(HoFH)患者への単剤療法も承認されました。

 

精神・神経

Ajovy|イスラエル・テバ

抗CGRP抗体「Ajovy」(fremanezumab)は、体重45kg以上の6~17歳の小児の反復性片頭痛の予防に適応拡大しました。月1回の投与で発作を予防します。成人の片頭痛予防ではには2018年に米国、19年に欧州、21年に日本で承認を取得しています。

 

【バイオシミラー】シャンハイ・ヘンリウスのdenosumab

【2025年9月に米FDAが承認したバイオシミラー】 〈製品名/一般名/社名/適応〉Bildyos|denosumab|中国|ヘンリウス|骨折リスクの高い骨粗鬆症、内分泌療法を受ける骨折リスクの高い患者の骨量増加など|Bilprevda/denosumab/中国/ヘンリウス/多発性骨髄腫や骨転移を有する固形がんの骨関連事象予防、骨巨細胞腫、悪性腫瘍に伴う高カルシウム血症|※米FDA(食品医薬品局)や各社の発表資料をもとに作成

 

Bildyos/Bilprevda|中国シャンハイ・ヘンリウス・バイオテック

「Bildyos」と「Bilprevda」は、いずれも抗RANKL抗体denosumabのバイオシミラー。Bildyosは骨粗鬆症治療薬「Prolia」、Bilprevdaはがんに伴う骨変異などの適応を持つ「Xgeva」に対応します。両剤はヘンリウスが開発。米国での販売は提携先のオルガノンが行います。

 

AnswersNews編集部が製薬企業をレポート

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