
12月期決算の国内製薬企業3社の2025年1~6月期業績は、売上収益が前年同期比5.0%増と堅調でした。各社とも業績はほぼ計画通りに推移しています。営業利益は28.4%増と大きく伸びましたが、大塚ホールディングス(HD)が2倍近い増益となった一方、協和キリンは20%を超える減益となり、ばらつきが見られました。
売上収益 大塚HD6.5%増、中外4.6%増
各社とも主力のグローバル製品が業績を牽引しています。売上収益が前年同期比6.5%増の1兆1808億円となった大塚HDは、医療関連事業が8.7%増の8338億円と好調。抗精神病薬「レキサルティ」が26.5%増の1548億円まで拡大するなどし、飲料や食品が中心のニュートラシューティカルズ事業の伸び(1.6%増)を大きく上回っています。海外売上収益比率は前年同期の73%から75%へと上昇。医療関連事業の売上収益は通期で1兆6630億円を計画しています。

中外製薬は、国内外ともに主力品が貢献して4.6%増の5785億円。関節リウマチなどの治療薬「アクテムラ」のスイス・ロシュ向けの輸出が好調で、同薬の輸出売り上げの増加分254億円(41.4%)は全社の増収分(256億円)にほぼ匹敵します。海外でのバイオシミラーの浸透が想定より遅れていることもあり、ロシュ向け輸出は通期で1230億円の計画を100億円以上、上回る見通しです。
協和キリンは1%減収も北米好調
協和キリンの売上収益は1.0%減の2307億円でしたが、北米事業は好調です。低リン血症治療薬「クリースビータ」や抗がん剤「ポテリジオ」の拡大で11%増の884億円まで伸びました。一方で国内は11%減の584億円と低迷。決算発表では、5~6月に人数を定めず募集した希望退職に432人が応募したことを明らかにしました。

売上収益の通期計画に対する進捗率に大きなばらつきはなく、3社平均で49.2%とおおむね堅調です。大塚HDは業績予想を上方修正。今年4月の腎疾患治療薬「ジンアーク」の米国特許切れを他の主力品でカバーし、売上収益、営業利益ともに過去最高を更新する見込みです。
米国の関税政策の業績への影響については、まだ明確に見通せる状況にありません。現時点では、大塚HDが「仮に下半期に25%の関税がかかれば事業利益で数十億円の減少」(牧野祐子CFO)とし、協和キリンは「影響はあったとしても大きくない」(宮本昌志会長CEO)と分析。中外製薬の奥田修社長CEOは、米国への生産拠点や技術の移管について「さまざまなオプションを検討している」と言い、宮本氏も「さまざまなシナリオを検討しているが、今年の着地に向かって織り込んでいるものはない」としています。
営業利益 大塚HD91.7%増、協和キリンは20.7%減
営業利益(協和キリンはコアベースのみ開示)は3社で28.4%増の5505億円。為替がやや円高に振れ、海外での研究開発費や販管費が目減りしたことが利益の押し上げ要因となりました。

伸びが際立ったのは大塚HDで、91.7%増の2421億円を計上。前年同期に開発中止に伴う1000億円規模の減損損失があった反動が大きいものの、コア営業利益に相当する事業利益で見ても14.7%の増益となりました。事業利益の9割近くは医療関連事業によるものです。
中外は、最も大きい取引通貨のスイスフランが前年同期より円安で推移したことで、営業利益にプラス220億円の為替影響がありました。製品売り上げ構成の変化で原価率が上昇したものの、増収と販管費の低減で営業利益は2733億円と5.8%の増益です。
協和キリン 希望退職費用で純利益57%減
一方、協和キリンは20.7%の営業減益。減少額は91億円で、減収に加え、買収した英オーチャードの新規連結を含む研究開発費の増加や為替変動が影響しました。通期計画に対する進捗率も43.8%と低めですが、上期の研究開発費の増加には計上方法の変更も影響しており、全体としては計画通りの進捗だとしています。希望退職者募集の関連費用として94億円を計上したこともあり、純利益は163億円で56.8%減となりました。
営業利益率は3社で5.1%上昇の27.7%と高水準。中外が47.0%と突出しています。対通期計画の進捗率は大塚HDが53.8%と高く、50%に届かなかった中外と協和キリンも下期の追い上げを見込んでおり順調さを強調しています。
研究開発では、中外がポートフォリオの優先順位を見直した結果、初期段階にあった5つの自社開発プロジェクトを一括して中止しました。「想定以上に時間のかかるものが出た」(奥田社長CEO)ためで、こうした判断は同社にとって初めてです。協和キリンはクリースビータに続く大型品として期待するアトピー性皮膚炎治療薬ロカチンリマブ(一般名)について、臨床第3相(P3)試験の結果を9月の欧州皮膚科性病科学会議で発表する予定です。





